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瞳孔刺激
デズモンド・モリス「マンウォッチング」は好きな本だった。その中に瞳孔に関する記述がある。
感情の変化によって瞳孔の大きさが顕著に変わるので、瞳孔の大きさの変化は気分を表す信号として役に立つ。(中略)これらの変化は、通常われわれが気づかぬうちに起こり、ほとんどコントロールできないものなので、真の感情を知るための貴重な手引きになる。
デズモンド・モリスが瞳孔について書いたとき、まさか、カラーコンタクトなんてものが使われるようになるとは思っていなかったのだと思う。しかし、カラーコンタクトの出現により、瞳孔信号に関して「顔の信号の中の容易にうそをつくことができない信号」とは言えなくなった。
もちろん、そういうものの可能性を示唆する記述もある。同じ本の下巻の「超正常刺激」の項では、つけまつ毛を「目の大きさとまばたきを誇張できる超正常物」としている。
<超正常刺激>は、対応する自然界の刺激を超える刺激である。(中略)ヒトは自分自身の身体的特徴を多くの方法で改良し、人為的に周囲の世界を"超正常化"することができる。背を高くしようと思えばハイヒールをはけばよいし、皮膚をなめらかにしたかったら化粧品を使えばよい。他人を驚かせたかったら強い攻撃の表情をした野蛮なマスクをつければよいのである。
であれば、カラーコンタクトは、つけまつげと同様、超正常刺激のギミックといえる。
視点を変えれば、人は超正常刺激を自分に纏いたいと思うのかもしれない。きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」の中で歌われているのは、そんな心の機微だ。
Zoomなどのリモート会議で仮想背景やSnap Cameraを使いたくなる気持ちも、デズモンド・モリスのいうとところの超正常刺激を、人が無意識のうちに纏い、心の角度を変えたいという願望なのかもしれない。
誰だって、変身ベルトを身につけたいのだ。
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