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「参加から参画へ」 – さまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味(Ⅱ)

「参加から参画へ」というテーマで、ヨークの"Minds & Voices"の人たちの活動を中心に、認知症の当事者も交えたさまざまな立場の人が認知症の課題に取り組む意味について考えた。

同じ英国でも、スコットランドのエジンバラでは、また別の活動が進められている。以下では、変化を少しずつ形にしながら働きかけていくことについて考えていきたいと思う。

変化を少しずつ形にしながら働きかけていく

スコットランドで認知症当事者グループを立ち上げたJames McKillopさんは、エジンバラ大学の研究会で、たとえば、スコットランド当事者グループのメンバーで作った”Core principles for involving people with dementia in research”(「認知症の人に参加してもらう研究の基本原則」)の話をしています。

認知症の研究者の卵である大学院の学生たちに、当事者であるJamesさんが大学の研究グループのイコール・パートナーとして、「認知症の研究に当事者が参加するときに配慮すべきことは何か」について話をしているのです。

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認知症当事者である本人の人たちと、大学関係者や認知症当事者の活動を支える人たちとが、イコール・パートナーの関係にあるということは、これまでの関係性とはずいぶんと枠組みが異なります。これまでの関係では、両者は、観察するものと観察されるものの関係でした。

イコール・パートナーであるということはそれとは異なります。それぞれがそれぞれを応援し、応援されるものとして存在し、両者の活動が相まって進んでいくことで、変化は少しずつ形になっていくようなそんなプロセスが動いているのです。それは、下記のようなプロセスです。

1) 自分たちが認知症の当事者として課題を話す
2)話し合ったものを形にする
3) 形にしたものを使って関係者がさらに話をする
4) 変化が少しずつ大きくなっていく

参加から参画へ。応援し、応援される関係を作っていくこと

応援し応援される関係はどちらが主ということはありません。よりよい街を作っていくために、人々が【参加】から【参画】へと動いていくようなコミュニケーションが生まれることにその本質があります。

三重県にある中高一貫校、鈴鹿享栄学園 鈴鹿中学の3年生が企画者・プロデューサーとなって行われた『SUZUKA MEETING 2017 鈴鹿から地域再生を考える:認知症から地域を考える』では、認知症の当事者である丹野智文さんが応援する側になってくれました。

このプログラムの企画者である中学3年生の問題意識は、「自分たちが持っている認知症に関する偏見を自分たち自身がどう変えていくか」でした。プログラムには、地域の大学生・高校生・中学生17人が参加しました。丹野智文さんは彼らのために応援のメッセージビデオを送ってくれました。

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彼らは、自分たちの中の「認知症」という言葉の印象を振り返り、丹野さんや日本のさまざまな場所で起こっていることを、ビデオや写真、丹野さんが国際会議で話した言葉から感じていました。そして、『旅のことば :認知症とともによりよく生きるためのヒント』のカードも参考にしながら、自分たちにとっての意味を自分ごととしてまとめていました。

そこでは誰が応援者でしょう。

地域の大学生・高校生・中学生は応援するものであり、応援されるものです。ビデオメッセージを送ってくれた丹野さんもまた、応援するものであり、応援されるものです。この企画を応援した先生方や周囲の人たちもまた応援するものであり、応援されるものなのです。

認知症にやさしい地域を作っていくことは、誰がどこから始めてもよく、その本質は、認知症当事者もそうでない人も、互いに応援し合いながら、【参加】から【参画】への一歩を踏み出すことにあるような気がするのです。

訪問していただきありがとうございます。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。