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句集紹介 今瀬剛一『甚六』
作者十一冊目の句集。平成二十五年から二十九年までの三百二十一句を収める。この五年間に親しい知人、友人を多く亡くされ、直接故人を詠まれた句だけでも十六句ある。
鈴木鷹夫「青嵐ぶつかって泣く相手なし」
古賀まり子「露草もあの歓声も永久になし」
阪本謙二「さらにつくせもういつぱいの新走り」
新川和江「冬衣ふはりと纏ひ遺されし」
松本旭「微笑みを永久に残して冬の薔薇」
鈴木豊一「茅花流し痩身吹かれ逝きしかな」
斎藤夏風「ともに肩組みたる昔桐一葉」
神藏器「身をかがめ茱萸摘みしこと逝きにけり」など。
今後何年の生を賜れるかは分からない、これが最後の句集となるかもしれないという思いは常にある、と作者はいう。そう言われると、妙に命令形の句が重みを増してくる。
「囀や句末は岩のごとく置け」
「両足に踏ん張る力梅よ咲け」
「初句会披講は歌ふ如くせよ」
「あの島へどうやつて行く泳げ泳げ」
「去年今年眠れ眠れと母の唄」
「やで切つて名詞で止めよ初句会」。
句集名の「甚六」は集中の「総領の甚六として福沸」からの命名。作者は「総領」息子であり、「甚六」に甘んじたいと願っている、という。 (岡田 耕)
(2021年 本阿弥書店)
(俳句雑誌『風友』令和三年九月号)
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