じいちゃんが納得できないこと


 学校が休校になってかれこれ2週間が経過しました。私が暮らす東京の「特別区なのにもうすぐ人口が100万人に達する」街では、◯◯保育園の保育士さんが感染したらしいという話以外は、日々の暮らしレベルではあまり感染情報は入って来ていません。
 ましてや15才以下の子供たちに感染したという話は全く聞かないし、毎年学級閉鎖がようやく収まり、カロナール飲ませて「1時間だけ頑張って幼稚園の卒園式に連れて行く」みたいな綱渡りゲームが繰り返されていた3月半ばに、インフルエンザにかかった子供の話も全く聞かないのです。

 すげぇな。手洗い。
 
 私は、職業柄モーレツ・サラリーマン(死語)ではなく、かつ地域密着の小学校のPTA会長だから、ママパパたちや学校行政関係者、そして区議会のメンバーが色々と情報を伝えてくれます。だから、忙しくオフィスで働くママパパたちよりも、ありがたいことに地域のことがよくわかるんです。

 今朝、妻の父であるじいちゃんが電話して来て、「もろもろ納得がいかないよ、憲治さん」と意見を求めてきました。あたりまえですよ。
 私とじいちゃんの知っていることと、心中のわだかまりを足し算するとこんな感じです。

・2週間学校は閉められ、4月の頭まで延長された。
・校庭も使えない。サッカークラブは活動中止。換気が大事と言うのに。
・でも学童と児童館は開けている。
・保育園は全く普通にやっている。全く普通に。
・誰も感染し重篤化した子供の例を知らない。中国でも子供の感染・死亡例は報告なしと、ネットで読んだ。
・学校を閉めたことが要因で、感染拡大がどれだけ防げたかどうかをきちんと説明してくれる機関もサイトもどこにもない。
・任意登校にすればいいと思っていた矢先に、文科省は「学童が狭いなら教室を利用するのも良い」などと言っている。
・行き場の、居場所の足りない子供たちが、近所の公園に参集して大変な密度となっている。
・テレビをつけると「緊急事態」と言ったり「特措法」とか言ったりしたり、「ついにパンデミック宣言」なんて聞いたりもしているが、昨晩の総理大臣は「緊急事態ではない」と言う。
学校を休校にしたことが本当に「世界の他国に比べて患者数を少数に抑え込めた理由」なのかについては、大いに疑問があるからそれをきちんと示す裏付けを教えて欲しい。

 孫たちの喜びと幸せのためなら命を差し出しても良いと考えるじいちゃんからすれば、「何か合理的な理由と因果関係の説明があるなら、それを根拠に孫たちを守れるから協力はする。でも、学校を閉め続け、でも保育園は閉めない、温水プールは閉鎖するが、芋洗いの学童はやる。普通に学校を再開すると判断する街もある。一体これは何なの?」という気持ちなわけです。

  特にじいちゃんが納得できないのが、「学校を休校にするという首相の英断があったから、世界の十分の一に感染者を抑え込めている」という話です。根拠がないじゃない?

 「今やっていることがどういう意味で効果的なのか?」について、もう少し合理的な説明がなされないことには、イライラがつのり、それは感染して、伝染して、子供のイライラと相乗作用となるし、現実になっています。

 人は、「未知のものだから」という閉めのことばで最後に蓋をされても、納得できない気持ちを暮らしの中でそうそう飼いならすことはできません。
 コロナが未知のウィルスであることはわかります。しかし、今やっていること、やらされていること、やらねばならないとされていることの根拠を、もう一歩だけでも「なるほどな」と思えるような言葉と裏付けを、責任ある人たちは発信してほしいという気持ちが強いのです。

 人々が手に入れたいと心底から思っているのは、トイレットペーパーでも、飲んだらすぐ治る特効薬(それはちょっと欲しいが)というよりも、「もうちょっとだけでも納得のいく言葉で安心したい」という気持ちです。

 そこを政治や行政をつかさどる人たちに、丁寧に考えてもらいたい。そしてSNSで「もっと科学的に考えよ。エビデンス云々」と説教する秀才のみなさんにはお願いします。

 人は科学と合理「を」生きているわけではないわけです。毎日「を」生きているわけです。あなた達は「科学の秀才」かもしれないけれど、「暮らしの達人」である保証はないですよね。社会を維持するために必要なのは、その両方の人達なのだと思います。

 そして、そこを調整することを我々は「政治」と呼ぶわけです。
 政治は今この国にあるのかしら?

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