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〖人口減少〗の真実を考える

 兵庫県の北西端に松葉ガニで有名な新温泉町がある。我の故郷でもある。(図1参照)
 総面積は241㎢で全国743の「町」の中で178位、兵庫県下では佐用町、香美町に次ぐ第3位の広さで他に引けを取らない。
 ところが本町で大問題になっているのが県下で香美町に次ぐ2番目の人口減少率。当然少子高齢化は異常なレベルである。具体的な人口減少率の例としては、2015年に14819人であったものが2023年には12524人と、8年で72%にまで減少し、現在も年間250人前後減少している。戦後10数年の人口ピーク時に比べれば半減である。
 また、行政では「限界集落」という言葉を頻繁に耳にするが、「65歳以上の高齢者の占める割合が50%以上の集落」という定義であり、新温泉町は総数で63の集落が存在する内、約20%にあたる13集落が限界集落に相当する。
 町議会の代表質問の中でも頻繁に超高齢化と人口減による弊害と対策について議論されているが、人口減の反転とか限界集落の解消とかの有効な議論は為されていない。
 中でもいつも気になるのは、「海・山・温泉」というキャッチフレーズで観光産業の活性化が人口減少に歯止めをかけることができるというような勘違いをしている傾向がある。観光はほとんど人口減に歯止めをかける効果を生まない。
 人口減少の原因は国政も含めて地方行政がその町で生きていく、また生活していくのに魅力のない町にしてしまったことにある。人口減少に歯止めを変えるには、もう一度「生きていく、生活していくのに魅力を感じる」という観点に立ち返って考えなおすべきである。

世に「Uターン」「Iターン」「Jターン」という言葉がある。意味は文字の形状そのもので、「Uターン」は生まれ故郷に戻ること、「Iターン」は都会生まれの人が地方に移住すること、「Jターン」は地方生まれの人が故郷以外の地方へ移住することである。私自身は現在Uターンを考えているが、単に故郷に帰るのではなく、できれば昔の活力ある故郷を復活させたいと考えている。
そうあってこそ生きる楽しみや心の価値を堪能できる。

 さて、最近新温泉町近辺の衛星地図を眺めていていろいろと興味深いことに気が付いた。
 図2は、新温泉町と周囲を取り巻く市および町との位置関係を示す衛星画像である。
 ここで注目すべき点は、新温泉町の西端の境界線は兵庫県と鳥取県の県境であるが、新温泉町の住民から見れば豊岡市より鳥取市の方が近く、しかも人口も2.4倍の規模であり食料品や消費材の買い物もはるかに便利である。
 18年前の市町村合併の際になぜ鳥取県側に編入しなかったのか悔やまれる。当然人口減少率も抑えられたはずである。その証拠に隣町である鳥取県岩美町の過去8年間の人口減少率は新温泉町の1/3と大きな差がある。
 原因は町政の状況に大きく依存するが、行政の区分けである県境の位置にも関係する。
 極端なことを言えば、兵庫県を北部と南部の2つに分割すれば北部はもっと栄えたはずである。

 図3は、新温泉町を地形の面から考察した衛星画像である。緑色の薄い部分が農地や人家があるい部分で河川沿いに生活圏が形成されているのがよく分かる。
 黄色の楕円部が町の中心部、紫色の小さな地区が湯村温泉街、赤色の楕円部が私の故郷である照来盆地である。
 ・湯村温泉は全国にも知られる歴史ある温泉であるが、紫色の円に示すように町としての広がりが無く人口に対する貢献度は全く無いに等しい。
 ・一方、赤い楕円の照来盆地は南北約2km、東西約5kmの農村地区で7つの集落で構成されており、人口減少は進んでいるが、辛うじて限界集落から逃れている。
 ・また、青色の斜線部は限界集落が多い地区である。
 このような状況から今後新温泉町が人口減少に歯止めをかけるためには、観光産業から距離を置き、北部は地方自治の中心として更なる発展に努め、南部は照来盆地を中心とした農村地区の更なる開拓に努めることにより、町民が自律的に豊かな生活を営むことができる環境にしていくことが最善の方策であると考える。
 必然的な結果として人口減少や少子化に歯止めがかかることになる。
 また、青色の地域については、現在の状況を悲観的に見るのではなく、「シルバーエコノミー」の視点から、医療や消費、社交など日常の生活面での根本的な改善に取り組んでいく必要がある。


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