見出し画像

「英語ができる」ってどういうこと? コスパから考える英語学習の「到達点」

「ぼくは英語を身につけたほうがいいのでしょうか?」

と、社会人の方からたまに聞かれます。

身につけたほうがいいに決まっています。

「自動翻訳もあるんだし別に身につけなくてもいいじゃん」という声も聞こえてきそうですが、シンプルに「できたほうがいいかどうか」だけを考えればできるほうが有利なのは言うまでもないでしょう。

英語ができることはプラスにこそなれ、マイナスになることなんてない。

ビジネスパーソンであれば英語力は全員が手に入れたほうがいい。

そこにおそらく異論はないのではないかと思います。

ただ、質問者が言いたいのは、

「英語力を身につける時間やコストを払ってでも、身につけたほうがいいでしょうか?」

ということだと思います。

ようするに「コスパ」の問題です。

これはとても重要な観点です。スキル獲得の全体戦略の話であり、リソース配分の話でもあります。

もし英語が「フリック入力」くらいすぐに身につくのであれば、全員手に入れるでしょう。

しかし、これから多くの時間を費やさなければいけないとなると、やはり「それだけのリターンがあるかどうか」を考えざるをえません。

特に30歳を過ぎていたりしたら「いまさら英語を始めてもな……」と躊躇する気持ちもわかります。

これから英語を学ぶことは、はたして「コスパ」がいいのか?

ちょっと見ていきましょう。

「単語と文法を知っているだけの状態」はコスパ最悪

いつも言っていることなのですが、戦略の基本は「分解」です。

目の前のゴールを分解して、正しく全体像をつかむ必要がある。そこでまずは「英語ができる」という状態をレベル別に分解してみましょう。

レベル0:まったく何もしらない
レベル1:単語と文法がわかる

レベル2:英語を読める、聴ける
レベル3:英語を書ける、話せる

もっと細かく分けることもできそうですが、いったんこの粒度で分けてみます。

おそらく多くのビジネスパーソンは「レベル1:単語と文法を知っている」状態、あるいはその周辺といったところではないでしょうか?

受験英語をそれなりにやってきて、英単語はある程度わかる。文法もだいたいはわかる。でも自信をもって「英語が読める」「聴ける」とは言えない。

知ってはいるけれど、使えない。

これ、「コスパ」という観点で見ると限りなく悪い状態です。

知識だけあって実用的ではないというのは、かなりもったいない。中高で勉強した投下コストが全く回収できていないのです。

「英語ペラペラ状態」になることはコスパがいいのか?

ということで、「英語を極めるぞ」と思う人がいます。

そこで「レベル3:英語を書ける、話せる」という状態を目指そうとする人が出てくるわけですが、これはコスパの観点で言うとどうでしょうか?

外資系でバリバリ働いていたり、ふだんの仕事で英語を書いたり話したりするような機会があって、それが十分な利益につながるなら、これからコストを投下したとしても「コスパはいい」といえそうです。

ただ、「英語が話せたらカッコいいから」「外国人と友だちになりたいから」くらいだと、コスパはよくない。もちろん価値観は人それぞれですが、それくらいのリターンだと挫折してしまう人がほとんどです。

多くのビジネスパーソンにとっては「英語が読める/聴ける」のコスパの良さは見落とせない

では「レベル2:英語が読める、聴ける」のステージはどうでしょうか?

実はこのレベルの価値のとらえ方に大きなヒントがあると考えています。

私はひそかに「読む/聴く」ができるだけで、ほとんどのビジネスパーソンにとっての英語習得の目的の7~8割は達成されるのではないか、と思っています。

繰り返しますが、もちろんそれ以上できたらいいこともたくさんあります。それは疑いようがありません。

でもコスパで考えたら、まずは「読む/聴く」ができる状態も悪くない到達点なのです。

「自分の直接のお客さんが日本人である。日本のマーケットである」という場合は、アウトプットは日本語で行うことがほとんどでしょう。

その場合、現段階では「英語で書ける、話せる」というのはすぐに手にしなければならない目標というわけでもありません。

というわけで、私の結論は「まず英語を読めるレベルを目指す」ことが社会人にとってはコスパのいい英語の身につけ方だということです。

そこでやめてもいいし、その先の「話す」「書く」を目指してもいいのですが、ひとまずそこまでいけば、英語ができることの果実の、まあまあ大きな部分を手に入れることができます。

もちろん将来的には上のレベルを目指すほうがいいんです。

ここで言いたいのは、「読める、聴ける」というレベルであっても実用的な価値があるということです。

最初に戻ると、こんなイメージです。

レベル0:まったく何もしらない
レベル1:単語と文法がわかる(ここにいる人が多い)
===有用性の壁===
レベル2:英語を読める、聴ける
レベル3:英語を書ける、話せる

受験勉強という「資産」に少しの「追加コスト」を払うだけで、「使える英語」に一変する

さて、ではどうすればいいのか? という話をしていきます。

ほとんどの人は学生時代、それなりに英語を勉強してきたと思います。少なくとも中高の6年間は、ある程度やってきたはずです。「かんたんな英文なら、がんばったら読めるかな」くらいの人が多いでしょう。

ここで朗報があります。

それくらいの状態からスタートして「英語のニュースが読める」レベルになるのはそんなに大変ではない、ということです。

よく社会人の人から「英語を学び直さないと」「受験英語しかやってこなかったから、実用英語をやらないと」という声を聴きます。

でも、すでに「資産」は手に入れているわけです。まったくのゼロからはじめるわけではなく、すでに英語学習の「資産」は持っている。

大学受験でがんばって、せっかくセンター試験でそれなりの点数をとっているのに、英語がまったく役に立っていない。それはもったいないことです。

受験勉強の「資産」に少しの「追加コスト」を払うだけで、「使える英語」に一変します。あと少しで、役に立つスキルになる。

そこで英語をやらないなんて「宝の持ち腐れ」というやつです。

「英語を身につけるのは大変」という誤解

みんな「英語を身につけるのは大変だ」と言います。

たしかにレベル0から始めるのは大変かもしれません。でも、世の中には早慶やMARCHを出ているのに「英語なんて読めません」という人がたくさんいます。「いやいや、ちょっとやったら読めるから」と思うのです。

「英語を身につける」というと、多くの人は外国人と熱い議論をしたり、外資系の投資銀行でバリバリ働く姿を想像するかもしれません。

たしかに、外国人なみに何不自由なく英語を使うところを思い浮かべると「いや、俺には無理だな」と思ってしまうでしょう。「それなら目の前の仕事をがんばろう」と考えてしまう。

でも、そもそもそんなレベルに到達しなくても、恩恵を受けることはできるはずです。

いまの会社で出世する。新しい情報をインストールする。ビジネスに活かすために情報をとる。そのために「英語を読める」という武器を手に入れるのは、コスパがいいし、とても強力です。

英語で情報収集できればまわりと差をつけられる

うちは英語を教えている会社です。

ほとんどの社員は英語が話せます。でも「ふだん英語の記事とか読んでる?」と聞くと「読んでないです」と言う社員も少なくありませんでした。

すごくもったいない。

あるマーケティング担当の社員もこれまで英語の記事は読んでいませんでした。マーケティングは海外の事例をたくさん知っていたほうが有利です。そこで私は「もうちょっと視座を上げて、少しでも仕事に絡みそうなことは英語でキャッチしてみたら?」と伝えました。

するとすぐに「海外ではこういう方法があるみたいです」とおもしろい情報がいろいろ上がってくるようになったんです。

英語ができればトレンドを数年先取りできる

たとえば「D2C」という言葉は、日本でも2年前ぐらいから注目されるようになりました。でも、アメリカでは5年前くらいから話題になっていました。

いま、ニューヨークでは老舗のアパレル店などと入れ替わるかたちで、D2Cのブランドがバンバン進出しているそうです。ベッドのメーカーも100年ほど続いた老舗を抜いて、D2Cのメーカーがシェア1位になっていたりします。

そういう情報をいちはやくキャッチできていた人たちが、いま日本でD2Cのビジネスをやっているのだとおもいます。英語ができれば欧米の、世界のトレンドを数年早く手に入れることができるわけです。

もちろん「D2Cとはどういうものか?」という大まかな情報や、D2Cが流行っているらしいという程度の情報は、日本語でも得ることができます。

でも細かいオペレーションに関することや「今日、こういう発表がありました」といった情報は、やっぱり英語です。アメリカのD2C企業の決算発表は日本語にならないでしょう。

そういう情報をキャッチできるだけで、まったく違います。直接D2Cをやらないにしても「いま世の中はこういうふうに動いているのだ」と知ることはもちろん有用です。

しつこいようですが、何度も言います。

この「英語の情報をとることができる」という状態は、英語が読めること「だけ」でも多くの部分、達成できるのです。

「読めれば終わり」というわけではありませんが、すくなくとも読めるだけでもアドバンテージは少なくない。

しかも、日本のビジネスパーソンの多くにとって「読めはするよ。話すのはまだ自信がないけどね」という状態を手に入れるのは、それほど時間を必要とするわけではないのです。

果実は確実にある。習得コストもそれほど高くない。

これこそが、いわゆる「コスパがいい」という状態です。

これからますます「海外に学ぶ」時代になる

英語の情報を取得する価値は、今後ますます高くなっていく。

私はそう考えています。

なぜなら、残念ながら日本がさまざまな分野で「トップの国」ではなくなってきているからです。マーケティングにしても、製造業のプロセスにしても、あらゆる分野で日本より優れた国が出てきて、学ぶべきことが増えてきた。

そして今後、ますます外国から学ぶことは増えていくでしょう。

であれば、明治時代の文明開化ではありませんが「いかに海外の情報を取得するか」に力点を置かないといけません。

そのためにも、まずは英語で情報収集できる状態を目指すべきなのです。

最初は多少読むのに時間がかかっても、まったく読めないよりははるかにいい。ビジネスで圧倒的に有利になれます。

自動翻訳を使うにしても、見出しを流し読みできる人と、そうでない人では効率に圧倒的な差が出ます。なにより抵抗感がまったく異なります。

1日15分、半年続ければ英語のニュースはそれなりに読めるようになる

まずは英語を「読む/聴く」の訓練をしましょう。

ひととおり受験勉強をしてきた人なら、そこまで大変ではないはず。1日15分、半年も続ければ、ふつうの英語のニュースはある程度読めるようになります。

英語でインプットできるだけで、世界は広がります。

英語の記事が読める。英語の動画を観ることができる。ニュースサイトを観ることができる。

すると、情報収集の幅が何倍にも広がります。日本語だけで情報収集している人にはるかに差をつけることができる。

「レベル1:文法や単語だけ知っている」人が、「レベル3:話せる、書ける」人になるのには、たしかに時間がかかります。

でも「レベル2:読める、聴ける」まであとちょっとの人が、「レベル2」になり「有用性の壁」を超えるのは、そこまでたいへんではありません。

もはや、これはお願いです。

ほんとにもったいないから、あとちょっとだけでもやってほしいのです。せっかく中高で学んだことを捨て去らないでほしい。中高のときのあなたの努力に「果実」を与えてあげてほしいのです。

……そして、「読める」ようになると、「話せるようになりたい」と思うものです。英語に対する心理的ハードルもかなり下がるはずです。

最初から目標を高く持ちすぎるのではなく「目の前の課題はなにか?」「まず何を目指すのか?」を適切に設定するのは、何かを達成するためにとても有効な手段なのです。

最後にお知らせです。

私の会社では「ENGLISH COMPANY MOBILE」というアプリを出しています。英語の「読み/聴き」のスピードを上げる練習ができるものです。このアプリで半年ほどしっかり練習してもらえれば、まずは英会話以外はできるようになるはずです。

短期間で大きな成果が得られるように、最適な学習法を、効果的な順番で行えるように設計しています。 音声のスピードを変えるなど、自分のレベルに合わせて取り組み方を変えることもできます。

しかも教材の記事は「日本経済新聞社」の英語媒体である「Nikkei Asia」など一流のものばかり。英語のインプット力を上げて、ビジネス力を上げていきましょう。

よければチェックしてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?