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本は「真逆のもの」を同時に読め

おすすめの読書法があります。

それは真逆のことを言っている本を同時に読むということです。

たとえば、コミュニケーションの分野であれば「思いやりを大切にしましょう」という主張の本と、ちょっとブラックな「心理学で人を操りましょう」という主張の本を同時に読む。

マネジメントであれば「モチベーションは必要です」という本と「そんなものはいらない」という本。生き方の本であれば「好きなモノに囲まれよう」という本と「シンプルで丁寧な暮らし」の本、といったぐあいです。

そうやって、真逆の本を同時に読むとおもしろいことに気づきます。

それはタイトルも真逆で、主張も真逆なように見えて、読んでみると同じことを言っている部分があるということです。

そして、その部分が「本質」だったりします。

逆に見えるのに、コアの部分は一緒だったりする。タイトルの見せ方や、切り口が違うだけだったりするだけで、本質の部分は同じなのです。

ものごとを多角的に理解するために本を読む

「真逆の本なんか読んでしまったら、どちらも信じられなくて意味がないのではないか?」

そう思う人もいるでしょう。

「いろんな考え方があるな〜」となるだけで、結局あまり変わらないのではないか。それでは意味がない、と思われるかもしれません。

しかし、そもそも私が読書をする目的は「その本に影響されるため」ではありません

ものごとを多角的に理解するためです。

「相手を思いやって伝え方を工夫しましょう」という本と「ブラック心理学で人を操ろう」という本。一見すると真逆のように思えますが、実はどちらの本にも「名前を呼ぶと、相手は喜んでくれる」と書いてあったりします。

前者にはそれを「思いやり」と書いてあるし、後者では「人間ってこういうものだからこうするといい」と書いてある。

でも結局「名前を呼ぶ」という結論は同じだったりするわけです。

人間はどうしても、ものごとを固定的に見てしまいがちです。でもこの読書法をすると、ものごとを柔軟に見られるようになります。

本は読み方次第で「ニュートラルな視点」を獲得することができるのです。

そもそも「思いやりの本」と「ブラック心理学の本」を両方買った時点で、わりと偏らずにいることができます。真逆の2冊を買うと「別の考え方もある」ということが嫌でも目に入るので、偏りにくいわけです。

同じような内容、同じ著者の本ばかり読んで「信者」のようになってしまうと本質からズレていってしまう可能性があります。本に書いてあるからといって無条件に信じることは、ときに危険だったりもします。

目的はあくまで「情報収集」です。ニュートラルな視点で「本質」をつかまえにいくことです。1冊の本を過信せず「この人はこういう考えなんだな」くらいに思うクールな視点も大切なのです。

読書のコツは「無理をしない」こと

他にも読書するときに気をつけているポイントがあるので、いくつかご紹介します。

本を読むときのポイントは「無理をしないこと」です。

「とにかく古典を読め」という人がいますよね。「ビジネス書のようなものを読むのではなく、風雪に耐えてきた古典を読むべきだ」と主張する人は多くいます。

でも私は無理して古典を読むことはありません。

たしかに古典の内容はすごくいいのでしょうし、本質を捉えているものは多いのでしょう。ただ、ちょっと「食べにくい」。読んだ内容を、自分で咀嚼する必要が出てきます。

書店には古典を「食べやすく」した入門書や解説書が並んでいます。『1時間でわかる孫子の兵法』とか『いちばんおもしろい論語の本』みたいなものです。

このように古典が再編集されて、現代の文脈で語られている本を読んだほうが、あたりまえですが、わかりやすいです。

私は古典の原文を悪戦苦闘して読むよりも、それこそ出口治明さんのような方たちが解説しているような本を読んだほうが飲み込むスピードが早くなります。

情報を得るのが目的なら、わかりやすくて早いほうがいい。『マンガでわかる〇〇』という本がわかりやすいなら、それでもいいでしょう。

ちなみに私は『マンガでわかる〇〇』といった本は、いろいろ省略しすぎて逆に難しくなっているものも多いのであまり読まないのですが、読書に慣れていない人なら、まずマンガから入ってみるのはいいかもしれません。

古典を読んでいればカッコよく見えます。でも、きちんと吸収することが大切です。吸収できていないのに、ただ文字を目で追っていてもあまり意味がないのです。

本には読む「タイミング」がある

名著を読むのには、人それぞれベストな「タイミング」があります。

孫子やドラッカーの『マネジメント』、ジム・コリンズの『ビジョナリーカンパニー』などのいわゆる「名著」は、たしかにいい本でしょう。

でも、読んでいて「おもしろくないな」と思う人は、いまは読まなくていいと思うのです。

「おもしろくない」ということは、その本に書いてある内容について、いまは困っていないということ。関心が薄いということです。

「名著と言われているから読まなきゃいけない」と、無理して読もうとしても頭に入ってこないので時間の無駄になってしまいます。本当に困ったら、自然と「読もうかな」と思うようになるものです。

私は、悩みがあるタイミングで、その悩みに合う本を読めばいいくらいに考えています。

本は効能に比べて価格がゆがんでいる

この世に本ほどコスパがいいものはない。

私はそう思っています。

10万文字ほどのアウトプットができる膨大なノウハウと知識を持つ著者に、プロの編集者がついてできあがったのが「本」というものです。

下手したら何年もかけて内容を磨き上げ、読みやすく整理してくれています。それが1000円とか1500円ほどで手に入る。

明らかに価格がゆがんでいます。

同じ内容を手に入れようと思ったら、著者のセミナーに通い詰めたり、著者となかよくなって会食を重ねるなどしなければいけません。そうなるとウン万円。下手したら何十万、何百万かかるでしょう。

それが1000円代というのは、お得すぎます。

本は「生きるのに役立つ道具」です。それがこんな値段で手に入るなら、それを活用しない手はありません。

孫子にコンサルタントをお願いできる

悩んだときに、すぐ知人や友だちに相談する人、いますよね。

私はそんなことをするよりも本を読んだほうがいいと思っています。

たとえば人間関係に悩んでいるのなら、友だちよりもアドラーのほうが人間関係に関しては詳しいはずです。ならばアドラーの本を読むべきです。

基本的に友だちは「悩みを解決する」という機能を持っていません。友だちは「自分の人生を楽なほうに導いてくれる存在」ではない。「楽しいな」「好きだな」という感情を共有するための存在です。

相談の目的が「ただ話を聞いてほしいだけ」なら、それでもいいでしょう。解決策を求めているわけではなく、ただ共感して慰めてほしいだけなら、友だちに相談してもいい。(共感を求めて話をすることを、厳密に「相談」と呼ぶかはおいておきます)

でも、人間関係や仕事についての悩みを本気で解決したいと思っているなら、友だちに相談するよりも本を読んだほうがいいのです。

私自身、経営に悩んだときはいつも本を読みます。

現実の世界で、孫子をコンサルタントとして会社に呼ぶことはできません。でも、孫子の本を読んで理解すれば、擬似的に孫子をコンサルタントにすることもできるわけです。ドラッカーやコトラーも、みんなコンサルタントにできる。

こんなにお得で、効果的なことはありません。

読書はコスパ最強の人生戦略

「本ばかり読んでも意味がない」「行動で学ぶべきだ」と言われます。たしかにそのとおりです。本ばかり読んで行動しなければ意味がありません。

一方で、たくさん本を読んでおくと、行動の質が上がったり、そもそもの行動が変わったりします。だから読書と行動はワンセットで考えるべきです。

読書によって情報をインプットすると、それまで見えていなかったことが見えてきます。すると「あの情報とこの情報を組み合わせたら価値が出るな」といったことが見えてきます。すると新しい事業の構想が浮かんだり、目の前の議論の解像度が上がったりします。

読書は「戦略を立てる」ことです。

戦略の「略」という字には「道」という意味があります。「戦略」というのは「戦うための道」「勝つためのルート」。読書をして、情報を仕入れると、いろんな「勝利への道」が手に入るわけです。

どうせなら、数ある道の中からベストなルートを選びたいですよね。自分が好きなルートを選べたほうがいい。悩んだとき、困ったときに、「ああ、あの道があるかも」と思えるかどうかは大きいものです。

私自身、仕事や人生に迷ったときに本を読んで、道がひらけることがこれまでたくさんありました。本を読むことで選べるルートを増やす。しかもそれが1000円ほどで手に入る。

まさに読書は「コスパ最強の人生戦略」なのです。

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