6月12日㈬~6月24日㈪ 無口で許されるのは昔のキムタクだけ。キムタクですら最近はよく喋る。

6月12日㈬
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
 フロントのSさんに「その髪型、格好良いですね~」と褒めてもらう。


6月13日㈭
・初対面の人が気を遣っていろいろ質問してくださったのだが、
「お仕事何されてるんですか?」
「家庭教師です」
とか、
「この辺よく来られるんですか?」
「初めてです」
みたいに、Youtuberが100個の質問に答えるやつをやってるみたいな1問1答方式で、相手が投げたボールを受け取ってそのまま自分のポケットに入れちゃうみたいなことしてキャッチボールが全く成立しない。
 相手は私にインタビューしてるわけじゃないんだから、ボール投げてもらったらこっちも投げ返さないと、会話にはならない。

 自分が小学生とかに話しかけるとき、一言だけ答えたきり黙られると困っちゃうのを経験してるっていうのに、自分が話しかけられた側になると同じ事しちゃうって、よくない。

 もっと言うと、自分が話しかけた時にあー助かるなー話しやすいなーっていう生徒さんの反応を思い出して自分も真似すればいいんだと気づく。 
 私が一番話しやすい生徒さんは、私が投げかけた質問に対して「それで思い出したんですけど」って質問と直接関係なくても連想したエピソードを話してくれる。
 そんな感じで、私も、「それで思い出したんですけど、」って感じでどんどん話を膨らませる作戦を今後はとっていきたい。



6月14日㈮
・大学時代のサークルの後輩と飲みに行き、後輩に多くお金を出してもらう。



6月15日㈯
・人妻の家に行ってその家に住んでいる子供に知恵を授ける仕事。
 子供曰く、お父様は毒物や武器の本やモデルガンなどを大量に保有しているらしい。


6月16日㈰
・人見知りを克服するために、ボードゲームカフェ会に参加する。
 ボードゲームをちょこっとしながらいろいろお話して交流を深める会、だと思っていたら、11時から19時まで休憩なしでひたすらボードゲームをし続けるストイックな会だった。
 ボードゲームしている時以外無口になるおじさんと、星野源にどことなく似ている青年と、彼女と思しき店員の女性にものすごくオラオラで指図しまくるDV予備軍茶髪地味顔面男性、と私の4人でボードゲームしてて、完全にボードゲーム初心者の私に皆さん優しくルールとか教えてくださってそれなりに楽しいは楽しかったけど、やっぱ私は「笑いのツボが合う人」「好みのタイプの女性」のどちらかがいる場じゃないと心の底からは楽しめない人間みたいで、なんでせっかくの休日に知らないおじさんと見つめ合いながらおじさんが持ってるカードの数字とマークを当てなければならないんだろうって気持ちにふとなってしまって、私にはボードゲームは向いてないなって思う。
 行って良かった。



6月17日㈪
・ホテルのパート。
 更衣室に500円玉が落ちていて、パクろうかとも思ったけど、朝頭に巻く三角巾を忘れたことに気付いておそらくバックレになられてもう出勤しないであろう人のロッカーを勝手に開けてその人の三角巾を勝手に拝借する、という窃盗行為をすでにしていたので、さすがに1日2件の犯行はよくない、と気休めの正義感を発揮し、「500円玉が落ちていました」とチーフに届け出る。
 そこにいた修理のOさんが「あ、俺落とした気がするな―」とボケて笑いをとってくださり、嬉しい。


6月18日㈫
・大好きな劇団さんの演劇を観に行く。
 その劇団さんの作品は本当に大好きなんだけど、社交不安障害の私にとってはしんどい客席の作りであることが多く、例えば入口側に舞台を作って開演後は出入り口が塞がれて外に出られなくなるとか、今回だと客席と客席の間に舞台があって、開演後も客席の明かりがついたままだからずっと向かい側のお客さんがお互いに見えている状態だったり役者さんからも客席がはっきり見えていたりして、途中で抜けようとしたら凄い目立っちゃうっていう、しかも間をたっぷりとるタイプの作品だから会場に静けさが張り詰めて緊張感のある空気になったりして、なおさら途中退場ができない空気で、そうなると私のような病気の人間は緊張してしまって客席で激しい動悸と吐き気に襲われてしまって倒れそうになってしまう。
 でも、そんなしんどい思いをしたうえで、観終わって本当に観て良かったと心から思える心地良い気持ちにさせてもらえて、本当に素晴らしい劇団さんだなと感動する。
 同時に、私が公演をやる際は、客席の照明を暗くしたりいつでもお客さんが途中入退場しやすい空気を作ろう、っていうことは深く心に刻んでおきたい。



6月19日㈬
・人見知り克服のために、初対面の人が5人集まるカフェ会に参加する。
 意識高い系のバリバリ仕事してる営業マンの人が、終盤で実はメンタルの病気を患って休職を繰り返したりしていたことを告白してくれて、そこから一気に話しやすくなった。
 私はついつい見栄を張って自分の弱いところを隠して自分を良く見せようとしがちだが、周りからしたら、人には弱みを晒してしまった方が圧倒的にその人を魅力的に人間的に感じることができるんだな、って学んだ。



6月20日㈭
・ホテルの部屋に人間対た痕跡を消す仕事。
 よく話しかけてくれる気さく子持ち人妻同僚Kさんに、「この仕事やってる間ってお腹すきません?僕はハッピーターンをちょこちょこ口に放り込んで凌いでるんですけど、何か食べてますか?」って聞いたら、「握りこぶし大の飴をずっと舐めている」っていう、なんか面白い答えが返ってきた。



6月21日㈮
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。 
 研修の時に指導してくださったベテランプロ熟女Tさんと一緒にエアコンの汚れをケルヒャーで流し落す作業。
 研修の時はそこそこ会話したけど、私が極度の人見知りで、Tさんも極度の人見知りだから、研修が終わって各々自立して作業するようになってから、かれこれ1年半以上ちゃんと喋っていない。
 が、今日は、トータルで2秒くらいだけど、ふわっと会話出来て、良かった。



6月22日㈯
・人見知り克服のために、大喜利カフェに行く。
 周りがみんな知り合い同士だったりして、緊張してしまい、結局誰にも話しかけることができず、18時から22時までひたすらただただ大喜利した31歳のおじさんになってしまった。
 で、緊張し過ぎてどんどん体調が悪くなってきて、キリがいいところで帰ろうと思ったら「今からリーグ戦を始めます」と大会が始まってしまい、出場者は審査員も兼ねることになるからなんか帰れない空気になってしまって、これはさっさと敗退して堂々と帰るしかない、と思ってたらそういう時に限って何故か勝ち上がっていって決勝戦までいってしまい、結局優勝してしまった。
 しかも自分よりも面白い人がたくさんいるなーと思ってた中でまさかの優勝だったので、なんか恥ずかしくなってしまう。
 実感の伴わない権威はこんなに恥ずかしいものなのかと実感する。



6月23日㈰
・同じコミュニティに所属するAさんをBさんが毛嫌いしていて、AさんとBさんは私とはそれぞれ仲良くしていて、Bさんに気を遣ってAさんをコミュニティ内の飲み会とかに誘わないのもイジメみたいになるから良くない、かといってBさんいるときにAさん呼ぶとBさんは本当に体調悪くなるレベルでAさんが苦手だから申し訳ない、ってことでBさんが来れないってわかってるときはAさんを積極的に呼ぶようにしてて、でも急遽Bさんが来れるってなっちゃって、Aさん呼んじゃってるからどうしよう、道理で言えばAさんと先に約束してたんだからBさんを断ってAさんを優先すべきだが、私はBさんとはめちゃくちゃ仲良くてAさんとはまあまあって感じでBさんが予定空いてるならBさんと遊びたいから、でもAさんの予定空けてもらったのにドタキャンするのも申し訳ないし、でもBさんはAさんと私が飲もうとしてたことを知っただけでも体調悪くなっちゃうくらいAさんを毛嫌いしていて、BさんにAさんとの会合の存在すらを知られないようにしつつAさんをただ返すのも申し訳ないから同じコミュニティ内のCさんを強引に呼び出してAさんと飲んでもらって私はBさんとの待ち合わせ場所に行く、

 みたいな、変に気を遣い過ぎた結果おそらく全員に嫌な思いをさせるという最悪な選択をしてしまった。
 誰も傷つけないようにすると、全員を傷つけてしまう。肝に銘じねば。



6月24日㈪
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
 最近入って来たものすごく若い女性Yさんが、「質問です!」っていろいろ質問してくれる。
 これまでずっと私のことを若干怖がってる感じがあって、それは私が異様に人見知りで無口すぎることと、最近ハゲ隠しで闇バイトの人みたいな両サイド刈り上げヘアになってるのもあって、近寄りがたかったんだと思う。
 で、話しかけてみたら意外とただの人見知りなおじさんだってことがわかって、いろいろ質問してくれたみたいで、おじさんはとても嬉しい。
 自分がいま思いがけずコワモテになってしまっていることを自覚し、意識的に笑顔にしたり柔らかい空気出して、接しやすいおじさんになろう。

もしお金が余っていましたら、ください。