3月9日㈯

・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
 今日はミーティング。
 予約が入っていない広めの部屋、に20人近くの熟女たちがぎゅうぎゅう詰めにされる。

 10時〜15時が勤務時間だけど着替えとか準備とかを先にしとかないと終わらないから、みんな9時半とかには来て着替えたり準備とかして、10時くらいにタイムカードを押していた。
 
 しかしこのたび、本社の上の人達がそういうグレーな時間というか時間外勤務が発生してるのはよくないね、ということで、10時前に出勤するのは禁止、10時に来てタイムカードを押してから着替えなければならないルールになった。

 それだけならありがたい話なのだが、労働量はこれまで通りで一切減らしてくれないとのことで、ただ単に時間の余裕がなくなっちゃったよ、それじゃあダメじゃん春風亭昇太です、っていう。


 で、終わるわけねえよってことで熟女達が紛糾し、20分で終わる予定だったミーティングが1時間以上になり、僕としてはたしかにその本社の人が良かれと思って作ったルールが施行されると我々の仕事がむしろ苦しくなり悪意で他人を苦しめることは意外と難しく善意こそが人を心底苦しめるのだそれが人間だ人間とはなんて愚かな生物なのだかくいう私もその愚かな人間の一人、とかそんなことはさておきこの後の家庭教師バイトの時間に間に合わないよ!

 ってことでミーティングが終わるやいなや部屋を飛び出し着替えて走って電車に飛び乗り向かう。
 間に合う。



・人妻の家に行ってその家の子供に知恵を授ける仕事。
 ゲームの話をし始めると延々止まらなくなってしまうノンストップ小学生。
 僕は子供の頃からゲームとか買ってもらえなくて、というか禁止されてたわけじゃないけどやたら親が俺の前でゲーム脳の話をしてきたりと明らかにゲームを嫌悪してたからなんとなく空気を読んでゲームを欲しがらないようにして、友達がゲームをやっている様子をずっと後ろから見てる時間がトータルで2億時間くらいあるし、そんなんだから大人になってもゲームをやりたいとか買いたいっていう発想がなかった。

 でももし数年後に農業始めたらたぶんプライベートの時間やることなくなって暇になるから、これを機にゲームとか始めてみようかな。



・母が外泊してくるので、弟と2人。
 俺が夕飯を作ることに。
 久しぶりに料理を作った。いつもは弟が作っている。
 俺が中学高校時代に完全に全人類とのコミュニケーションを遮断したことで、大学以降に出会った人とはもうリセット後だから新たに関係性を作れたものの、家族とはずっと地続きの関係だから、今さらどうやって会話すればいいのかわからず、同居しているのに未だに弟とも母ともほぼ会話をしていない。どうしても会話しなければならないときも、寝起きドッキリの「おはようございまーす」くらいの声量で、「行く」「食べる」「うん」と全部3文字以内の言葉しか発していない。
 
 母側はたくさん喋りかけてくれる。
 弟は俺以上に人見知りで、俺も人見知りがひどいから、人見知りと人見知りってことで余計に会話ができずに年間でトータル30秒も喋ってない気がするが、今日は弟が勇気を出して話しかけてくれた。

 それなのに俺は「あ、うん、」と流してしまって、本当に申し訳ない。
 一言二言だけでもいいから、毎日こちらから話しかけるようにしようか。できるのかそんなことが、俺に。

もしお金が余っていましたら、ください。