裁判の判決ばっか集めちゃいました(6月版) 傍聴小景 #78
刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。
つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴するのことができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。
という訳で、「なんで?」という疑問は残るものもありますが、判決のみ裁判特集です。
No.32 門限を設定する男
深夜、公園のベンチにて、ナンパした女性が嫌がっているのを真摯に捉えず、両胸を着衣の上や、中に手を入れるなどして強引に触った疑い。
事件後、被害者の方は男性と接することを気持ち悪く感じているとのこと。
この嫌がっているのを真摯に捉えずって人、よくいるんですよね。真摯に捉えなかったのか、そもそも捉える気すらなかったのかもわかりませんが。
今後、深夜の外出を辞めると誓約したとのことで、一応判決にもその点を踏まえ執行猶予にしたとありました。仕事で遅くなることもあるでしょうし、いったいどうやって成し遂げるつもりなのか、謎ではあります。
裁判官は最後に「あなたにはよく覚えておいて欲しいのですが」と語り始め、「軽い気持ちでやったことかもしれないが、とても重みのある判決であることを忘れないでください」と優しく語りかけていましたが、その背中からはあまり聞いている感じはしませんでした。
まぁそういう人だからこそ、裁判官も言ったのかもしれませんが。
No.33 誤解をする男
被告人はグレーのスーツを身にまとった男性。外見で判断しちゃいけないですけど、あまりこういう性的事件の実行者っぽくない、普通のおじさんです。
この被告人がしてしまったのは、保険契約のために自宅に来訪した被害女性に対して、両乳房を舐めるなどのわいせつ行為に及んだというもの。被告人は誤解していたと主張してたようですが、被害者は拒絶しており誤解の余地はないと認定されていました。
契約のためにと訪れた被告人宅で行われた犯行で、被害者は大変な恐怖感を覚えたと思います。
取調べや公判で被告人は、いったい何がどう誤解だと言ったのでしょうか。本当に誤解だと思ったのかもしれませんが、相手も仕事中ということで多少の愛想は振りまくであろうこと、あとご自身の年齢から、なんとか気付けなかったものでしょうか。
とまぁ偉そうに言ってますが、わいせつ行為には当然いたらないまでも、誤解だけなら俺もすることあるしな…と思ったり。
No.34 陰毛を燃やす男
超レア罪名、火炎瓶使用法違反。てっきり罪名からは、何か過激な方の犯行かと思ったのですが、全然違いました。
被告人は、当時交際していたAと喧嘩をし、そのことを友人に伝えるなどのことに酷く立腹したとのこと。その怒りの感情に任せて、酒瓶にガソリンを入れて火炎瓶としたものを路上からAの住むマンションの2階ベランダに次々と投げ入れたという疑い。
火炎瓶は家のガラスを割って室内に入ったようですが、中の人がいち早く気づいたようでカーテンの一部が焼損したに留まったようです。
現住建造物等放火は、死刑また無期懲役、または5年以上の懲役刑。裁判員裁判の対象でもあります。3年6月ということは未遂ということで減刑されましたが、多くの人の命に関わる可能性がある事件なので、減刑にも限界があります。
今回、犯行のためにガソリンを5.5リットルも用意し、立て続けに投げつけたとのことなので強固な犯意が認められました。被害者とのトラブルについては被告人だけの責任ではないと認定されたものの、公判態度からも反省は見えないなど判決では厳しい言葉が続きました。
ガソリンを使っての放火といえば、京アニの放火事件を想起させられ非常に辛い気分になります。火を使っての事件は一時的な感情によるものも多々ありますが、とにかく想像以上に被害が大きくなります。自暴自棄になっていたと言えばそれまでかもしれませんが、火にまつわる事件は過去に多くの悲劇を産んでいます。決して安易な発想にならないでと、ただただ願うばかりです。
なんか、真面目な文章過ぎるので変なこと書きます。
中学生か高校生くらいのころですかね。自分の部屋で陰毛を抜いて、火をつけたことがあります。驚くほど一瞬で燃えていき、とても恐い思いをしました。
はい、本来はこういう文章を書く人間ですよ、私なんて。
No.35 かわいがる男
被害者(A)の年齢、関係性が不明瞭で申し訳ないのですが、
被告人宅の部屋でAが寝ている間にわいせつ行為をしようと、手を差し入れるなどしたが、Aが体勢を変えるなどしたため未遂に終わった。そのとき、Aは物音で気付いていて、怯えつつも必死に体勢を変える抵抗をしたようです。
「準」とつくので、罪状としてそこまでと思われがちだけど、「抵抗できない状態に乗じて行われる犯行」のことなので、むしろ卑劣と思うことが多いです。
どうやら公判で被告人は「かわいがりの一貫」などと供述したようで、これらは事件に正しく向き合っていないと裁判官もお怒りでした。
私も相撲でいうところの「かわいがり」をしてやろうかと思いました。
今回、性に関するような事例を集めてみましたが、3件目の喧嘩云々はともかく、男側の偏ったというか、独りよがり犯行動機が目に付きます。女性も交際関係のいざこざで暴力的になったり、ストーカーのように執拗な態様を示すことはありますが、いわゆる性犯罪に及ぶのはどうして男ばかりなのでしょうか。
事例を知ることは、一部の抑止効果があるというのは僕の論ですが、この手の事例を発信すると嫌な顔をされてしまうことも多いです。なんとか、正しく伝わってほしいなと日々試行錯誤なのです。
そんな訳で、今月の判決特集でした。
今回の記事の内容は動画にもしていますので、こちらも併せてご覧ください。
ここから先は
傍聴小景 会員限定ページ
毎月約100件の裁判を傍聴している中から、特に印象深かったもの、読者の方に有意義と思われるもの、面白かったものを紹介します。 裁判のことを…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?