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逃げる被害者に「居場所見つけるのに探偵雇ったから、探偵代払え」あの手この手で総額2,000万円を毟り取った男 傍聴小景 #124(住居侵入)

被告人の再犯防止には、どうしてもご家族の監督への期待というのは高いものです。ましてや被告人が若年の場合、その求めは大きくなります。
しかしその一方で、成人を迎えた被告人の監督をどこまですべきかという問題などもあります。

一様に答えが出るものではないので、この点は都度検討が必要であるのですが、上記からさらに第三の意見として、「もうご家族には手に負えないから切り離してあげて」と思うような事例もあったりするもので。


はじめに ~住居に入っただけで何の罪に?~

罪名 :住居侵入
被告人:20代の男性
傍聴席:平均3人(全2回)

被告人は見た目、ややイカつい感じのお兄さん。例えるなら、芸人のみやぞんの目つきを悪くしたような感じの方。

過去にも触れたことが多分ありますが、この「住居侵入」のみという罪名は意外と要チェック。
窃盗やわいせつ行為などとセットになることが多い中で、この侵入罪のみで裁判にかけられているというのは、侵入の事情や態様に珍しさがあることが多いのです。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は、父の家の屋根に登るなどして、ベランダに降り、そこから室内に侵入した
被告人は、姉が家(①と別)に入るタイミングを見計らい、後ろについて中に入っていった

別々に住む家族の住居に侵入したという事案でした。これは珍しい、他人の家という事例しか見たことなかったので。

しかし、その入り方を見るに、招かれざる扱いをされていることは明白ですね。そうなると後は入った理由が気になるところです。わざわざ屋根づたいに家に侵入するなんて、なかなかの執念です。

上記には記載していませんが、真昼間の犯行です。僕がもし、昼間に屋根に登っている人を見たらどんなリアクションになるのか、ちょっと想像できません。


採用された証拠類 ~「探偵代を払え」~

検察官証拠

被告人は強盗などにより少年院送致の経験があり、成人後も粗暴犯の前科が複数ある。

長い期間、家族に対して金を無心し続けており、断ると家族を車に無理やり乗せ、「殺すぞ」など脅し続けるなどし、その結果として家族に対して手を挙げたのが前刑の服役前科。家族は弁護士にも相談し、もう資金援助は行わないと正式に通告した。
両親は被告人に対しこれまで1,500万円は貸しているといい、親戚も500万円は貸しているという。会社に来ることもあった。

被告人は借りた金をギャンブルで費消しており、前記の通り家族から接点を断たれているにも関わらず、なおも金の無心を企てた。母のことを唯一、自分のわがままを聞いてくれる人物だと思っており居場所をつきとめようとした。

戸籍を調べたがわからず、父の車にGPSを設置して、父の家を突き止めたが母はいなかった。タンスをあさり、姉の住所が判明したので、姉が住むマンションの非常階段で帰りを待ち、帰ってきたタイミングで、体をねじこんで家に入ろうとした。
被告人は「話をしようや」と言ったが、姉は「出て行け!」と言った。しかし、いつものことなので、特に何も思わなかった。

弁護人も取調べに同意しているので、本当にあったことなのでしょう。
家族、親戚から合計2,000万円も借りてるってすごいですね。まぁご家族にとっては貸しているつもりなのでしょうが、まず返ってこないでしょう。
そして、戸籍を調べるわ、GPSを設置するわ、タンスをあさるわと、その行動力をもっと別の方向に活かしていただきたいものです。まるで探偵です。

探偵と書いていて思い出したのですが、今回の事件以前に、父と接触したときには「探偵を雇って居場所を突き止めた。探偵代70万払え」と言ったこともあるそうです。
なお、探偵を雇った事実はなく、単に70万円をぶんどろうとした行動だそうです。

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