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裁判の判決ばっか集めちゃいました(4月版) 傍聴小景 #70

刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。

新件→一回目の裁判。事件内容などが分かる。
審理→前の回で終わらなかった裁判の続きの実施。
判決→その名の通り、判決を宣告する回。

つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴するのことができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。

という訳で、「なんで?」という疑問は残るものもありますが、判決のみ裁判特集です。

No.28  度胸を見せ方が間違っている男

罪名 :建造物侵入、窃盗未遂
被告人:20代の男性

好意を抱いた別の大学に通う女子生徒が体育の授業を受けている際に、更衣室に侵入して衣服を盗もうとした事件。しかし、周囲は同じく授業を受けている女性ものの衣服だらけで、お目当ての女性のものには到達できませんでしたという話。

たまに大学での覗きなどの事案ってあるんですよね。逆にというか、何が逆かはわかりませんが、たまにニュースなどで小学校~高校に侵入する「お変態さん」の事件を見ることがありますが、僕は裁判では遭遇したことがありません。

判決
主文 懲役1年6月、執行猶予3年

細かいところは裁判を見れていないのと、事件のしょーもなさにメモがフリーズしたので分からずじまいなのですが、どうやら忍び込んだことは認めたものの、窃盗の犯意については少し曖昧な供述をしていた模様。わざわざ別の大学の女子更衣室に忍び込んでるのに?
それにしても、好意を抱く女性に対して、後先考えない行動というとこまでは理解できなくもないですが、それで更衣室に侵入する度胸は驚くものがあります。どうやら大した面識もなかったようなので、その度胸でまずは話しかけるとか、他に手がなかったものかと思ってしまいますね。


No.29 子どものころを懐かしむ男

罪名 :道路交通法違反
被告人:20代の男性

被告人は制限速度50km/hの一般道を125km/hという狂った速度で走行した疑いにかけられています。高速走ってても、たまに爆走して抜かされることありますけど、あぁいうスピード違反の検挙ってどれくらいの割合でされるんでしょうね?

判決
主文 懲役3月、執行猶予3年

懲役3ヶ月とだけ聞くと短くも感じますが、罰金など複数の交通前科があって着実にステップアップ(?)してのこの刑になりました。スピード違反だけでも懲役刑食らうと皆さんもご注意くださいね。これも一歩間違えたら大きな事故になりえますし。

とは言え、交通違反というのは、なかなか反省がされないもの。この被告人も裁判を受けるのは初めてですが、多数の交通違反があり、反省の機会はあったのです。

そんな中で、今回の彼の更生に役に立つかもしれないのが傍聴人なのです。傍聴人といっても私のことではありません。
この裁判、たまたま社会科見学的に、小学生が10名ほど傍聴席に座っていたのです。

厳かな法廷の雰囲気を感じて静かに座っているものの「あの人が、犯人なのかなぁ?」「えぇスピード違反、恐~い」とヒソヒソ言われているのを聞いて、被告人も背を丸めて小さくなってしまいました。
法で決められているからというのは大前提として、こんな小さな子に恥ずかしい姿を見せている自分を顧みて、二度と同じことをしないでいただきたいと思います。

No.30 年齢が倍になる男女

罪名 :強盗致死(両名)、麻薬及び向精神薬取締法違反(男のみ)
被告人:20代の男性

他者と共謀して、金品強取の計画を立てる被告人たち。
事件は深夜、背後から頸部を掴んで倒して、催涙スプレーを噴射して、警棒で叩き、共犯者がナイフで刺す行為をしたことにより被害者は死亡してしまいます。

弁解できない被害者のことを触れるのはご法度ですが、被害者は薬物の売人とされていました。被告人らは、売人であれば自らに捜査が及ぶのを恐れて被害申告しないだろうという考えから、ターゲットとなる売人を探していたとのこと。
金銭を得るために、どこで努力をしているのでしょうか。それにしても、一方的に多数に囲まれた被害者はどれほどの恐怖であったことか。ナイフで刺す必要性などもどこにあったのか。とにかく、あらゆる意思決定が最悪な結果を招いてしまいました。

判決
主文 男性:懲役22年、未決勾留180日算入
   女性:懲役20年、未決勾留180日算入

いずれも20代前半の被告人ら。女性の方は執行猶予中の犯行ということで、さらに長い刑期となります。出所するころには、今の僕よりも年齢を重ねていると考えると、僕が20代から今の年齢まで重ねた経験をつい思い返したりもしてしまいます。

裁判においては、被告人両名の殺意は認定されませんでした。共犯者がナイフを持っていた認識はあったかどうか、刺すことを想定できたかという話について判決ではいろいろと言われていましたが、どちらにせよここまでの長い刑期になるとは事件計画時は想像もしていなかったのではないでしょうか。
もちろん、世の中どんな行為が大きな事故に繋がるのか、それらを全て予見するのは無理な話です。でも、今回の場合は間違いなく死亡とはいかなくても、ケガまでは予想できたはずで、それで捜査に及ばないはずだという考えは浅はかというか言葉ともまた違う次元の話な気がします。

ちなみに実際ナイフで刺してしまった共犯者はなんと20歳未満でした。そのことからも、懲役9年以上15年以下の不定期刑という判決になりました。組織内で従属的な立場であったということも考慮されています。この何年以上何年以下ってのは、教育に重きを置いた少年法によるものです。

事件が大きいから勉強になる、ならない、というのは無いとは思いますが、そうでないと気付かないものがあるのは確か。彼らにとって、この長い年数というのが何をもたらすのか、僕には想像だに出来ませんが被害者への懺悔の気持ちと、自身の行動の責任について考え続けてもらいたいと思います。


No.31 若くして社長になった男

罪名 :道路交通法違反
被告人:20代の男性

働き方も様々な中、20代で独立して社長という方も増えている気がします。私もフリーでやっている以上、学ぶことも多いのですが、僕には同じことは無理だなと思うことも多く。

この事件の被告人は20代にして会社の代表を務めている人。確かにシャツの着こなしなんかを見てると、それっぽさはあります。
過去に酒気帯び運転で免許取消になった被告人が、無免にも関わらず複数回運転をしていたという事案。またその運転もゴルフのためにしたそうで、会社経営のために取引先とのゴルフを休むわけにはいかなかったと、裁判で供述したんだとか。一生言ってろ。

判決
主文 懲役8月、執行猶予3年

まぁとにかく理由になっていないということで、当然これくらいの罪にはなります。
経営のためにというならば、ほかの手段でゴルフ場まで行けばよかろうに。その浅はかな考えのせいで、仮に会社が事業を停止し、従業員が路頭に迷ったらどうするつもりなのかという点はないのでしょうか。

裁判官からも「経営のためにと動機を述べているものの、被告人が運転しなくても普通に経営は回っている」など当たり前に痛いところを突かれていました。
この執行猶予の3年で、会社のメンバーを信じる3年としたらどうでしょうか。


そんな訳で、今月の判決特集でした。
今回の記事の内容は動画にもしていますので、こちらも併せてご覧ください。


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