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北方領土はあきらめる、これはタブーなのか

国土の突端、先端をこの足で踏みたいという願望がある。

日本の最北端は北海道稚内のノシャップ岬、最東端は同じく根室の納沙布岬だ。知床岬は立ち入り禁止、しかたなく観光船で近くまで行った。ノシャップ岬では樺太の地が遠くに座り、納沙布岬からは歯舞水晶島の真っ平な島影がすぐそこ手にとるように見え、知床からは国後島の高い山々が望める。

岬めぐりをすると、いたるところに「北方領土返還」の立て看板がある。納沙布には望郷の岬公園「北方館」があって北方領土関係の資料が展示されている。否が応でも現場隣接感が高揚してくる。

北方4島(歯舞、色丹、国後、択捉)は日本固有の領土である。第二次世界大戦末期のヤルタ会談で、対日参戦の代償として南樺太と千島をソ連が領有することをスターリンが米英に約束させた。日本が戦争に負け、領有権はソ連に移った。その後、日ソ(日ロ)平和交渉で北方領土返還が幾度となく話題にのぼるも、進展なく現在に至っているのは周知のことである。

北方領土は果たして返還されるのだろうか。

ロシア(旧ソ連)の歴史をすこし振り返ってみたい。旧ソ連は帝政ロシア以来、領土の膨張によって出来上がった国である。中国をはじめ中央アジアの地続きの国とは過去多くの領土問題をかかえてきた。領土の併合がかなわぬ場合は、旧ソ連の衛星国として政治的に牛耳ってきた国である。

ウクライナの現状をみれば、ロシア(旧ソ連)という国がよくわかる。2014年にはクリミアをウクライナから独立させ、その後ロシアに併合した。いまのロシアとウクライナとの戦争は、ウクライナ黒海沿岸地区からロシア人を守るという大義名分のもとロシアは領土拡大を図っている。

ロシアとは、そんな国なのである。

北方領土返還を日本は主張する。日本固有の領土だから返せと。わたしも間違っていないと思う。が、実現するのだろうか。

ヤルタ会談で米英に約束させ、日本との戦争に勝ち、正当化してきたロシアの北方領土の占領に対して、それを覆すだけの理由を日本はロシアに示せているのだろうか。否だろう。

戦後70年間、択捉や国後にはロシア国民が定住し既得権益がある。それが喪失する「返還」をプーチン大統領はロシア国民に説明できるのだろうか。否だろう。

北の先端、北方領土をこの足で踏みたいという願望はかなわない。「北方領土返還」をマニフェストの一文に入れる日本の政治家、彼らも心の中では難しいと思っているに違いない。しかし、彼らにとって「北方領土返還はあきらめる」と口に出すのはタブーなのだ。なぜなら、選挙があるからだ。