【古文書を読む】江戸時代のカステラレシピ
古文書を読むシリーズ
平安時代とか室町時代とかに比べて、比較的時代が近い江戸時代の書物はとてもたくさん残っているようですが、そのほとんどは読まれず、翻訳されず放置されているのだそう・・・!
まだ手付かずの古文書を読み解くことができれば、まだ知られていない何かが明らかになるかも・・・!?
ロマンたっぷりの古文書シリーズ!
江戸時代レシピのYoutube版はこちら↓↓
万宝料理秘密箱(萬寳料理秘密箱)
今回取り上げるのは、江戸時代の料理本!
「万宝料理秘密箱」まんぽうりょうりひみつばこ(1785年出版)
1巻から5巻まであるようです。
※「萬寳」の読み方は「ぼ」と濁点になっていますが、この頃は濁点半濁点の表記は揺れているので、ここでは発音しやすい「ぽ」としています。
古文書というと行政文書や学問などが思い浮かびますが、堅苦しい歴史書ではなく、料理の本!いわゆるレシピ本!江戸時代の主婦やお店屋さんが参考にしていたものでしょうか。ワクワクします。
「鳥の部」「卵の部」などと章立てされ、各料理のレシピが書かれています。卵の部だけでもなんと103種類の卵料理が収録されています。
「万宝料理秘密箱」の表記は、
・漢字の書体は楷書体~行書体
・漢字のふりがなが平仮名(変体仮名含む)
・その他平仮名(変体仮名含む)
比較的読みやすい部類に入るかと思います。
今回どの料理を取り上げようか、と迷いました。
・黄身返したまご
・茶巾たまご
・小豆餅たまご
・寄たまご
・卵そうめん
・長崎油餅たまご
などなどいろいろ興味深い料理名があります。
最初なので分かりやすい料理を!ということで、コレ↓↓に決めました。
「家主貞良たまご」=カステラたまご!!!
家・主・貞・良=カ・ス・テ・ラ
万葉仮名のような当て字。カステラは、1543年にポルトガル人が種子島に漂着し、その頃に輸入されたものと考えられています。
外来語のカタカナ表記は18世紀頃に見られるようになりますが、定着したのは外来語が急増した明治以降。この頃はまだ表記ゆれをしていて、外来語=カタカナ表記は一般的ではなかったのでしょう。
「家主貞良たまご」レシピを読んでみよう
国書データベースのP34が該当ページ。リンク先のデータはかなり拡大して見ることができます。
翻刻
上々大玉子を十八に白砂糖百六十匁うどんの粉八合入レ
右三品をよくとき合セてもじの切か布の目のあらきかに入レ一へんしぼりて
さて大和鍋か江戸鍋かの底へ油をとくと引
右のたまごをいれ下へ火をよわくして
上に行燈の火皿をのせ此中へ灰を一重引
其上に火を入レやくべし
此仕方は上々菓子の仕方に同し
現代語訳
上等の大きな卵18個、白砂糖160匁(600g)、小麦粉8合(1440cc)をよく溶き合わせる。
綟(もじ。麻で織った粗い目の布)の切れか布目の粗い布で一度こす。
大和鍋か江戸鍋の鍋底に、多めに油を引く。
鍋の中にこした卵液を入れ、下火を弱くする。
上には、行灯の火皿を乗せ、この中に灰をうすく引き、火を入れて焼く。
この方法は、上々菓子の作り方と同じである。
※作ってみた、のレポートもこちらのPDF(10ページ目)にありました。
単位が違ったり、言葉遣いも違うけれど、間違いなくレシピ!!なんか楽しい!!
歴史的背景をそれほど知らなくても、平仮名(変体仮名)をマスターすれば料理本は読んでいけるかも!
それにしても、卵18個に砂糖600グラム、小麦粉(うどん粉)1440㏄ってかなーーり大きい!カステラ屋さんの売り物レベル!?水は入れていないのに布で濾せるんだろうか。卵の水分を取る、みたいなこと??
この頃の日本にはまだオーブンなんて物はないので、鍋の上下から火を加える工夫をしていたのですね。
実はこのレシピ、クックパッドに載っている!
これまでいくつか古文書を読み解いてきましたが、当然まだまだ古文書初心者。やはり既に翻刻されたデータ、つまりは「翻刻の答え」を隣に置きながら読み進めるのが安心です。
※一字一字の平仮名の字母などは載っていないので、それは筆者が記載しました。
「万宝料理秘密箱」のレシピは全て翻刻&現代語訳され、その上、クックパッド江戸ご飯というサイトではこのうちの多くのレシピを現代に再現しています。
『万宝料理秘密箱 卵百珍』レシピ一覧
家主貞良卵(かすてらたまご)
今回は皆が知っているお菓子のカステラを取り上げましたが、よく分からない名前のレシピを取り上げて見るのも面白そうです。今はなき江戸料理が蘇るかも・・・!!
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