【漢字創成の神話】蒼頡(推定紀元前2510年~紀元前2448年)
今から約3300年前の紀元前1300年頃。中国の殷王朝で漢字の起源「甲骨文字」が生まれました。そこから篆書体⇒隷書体⇒草書体・行書体⇒楷書体と発展・発達を遂げました。現在でも使われるものとほぼ同じ楷書体も5~7世紀頃には成立していました。
ところで、一番最初の最初、漢字(甲骨文字)って誰が作ったのだろう・・・?
と思ったことがありませんか?だって古代の人間の誰かが作ったことには間違いないはず・・・。
今回は、漢字の創始者!?の伝説のお話をしてみたいと思います。
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造字聖人!蒼頡(そうけつ)
昔むかし、中国に「蒼頡」(そうけつ。「倉頡」と書く場合もある。)という人物がいました。実はこの蒼頡、漢字の素となる文字を発明したと言われる人物。「造字聖人」!
史書にある中国最後の王朝は「夏(か)」(推定紀元前2070年頃 ~)。最近の研究では、それよりも前に国家の存在があったのではないかと考えられており、時代区分として「古国時代」(推定紀元前3800年-紀元前1920年)と呼んでいるそうです。
蒼頡は古国時代の皇帝のひとり、黄帝(推定紀元前2510年~紀元前2448年)に仕える仕官であったと言われています。
どうやって文字を思いついた?四ツ目で物事を観察していた!?
では、文字という概念さえ無かった時代に、蒼頡はどのようにして文字を発想したのでしょうか。
ある日、蒼頡が野原を歩いていると、地面に鳥や羊や牛などの動物の足跡が沢山ついていました。
その足跡は、「鳥」「羊」「牛」のものであることが形で分かる。そこに「鳥」「羊」「牛」が実際にいなくとも。
蒼頡は、このことから、実際にそこにいないものでも、人は足跡だけでもそれらを想像することができる。この原理に気付いて、まず漢字の素となる文字を次々と作っていきました。この考え方だともちろん、最初は象形文字(そのものの形を文字にする)です。
今でこそ、そのものの形を文字で表すという発想は当たり前のように思えますが、文字という概念さえ無かった時代において、何気ない野原の足跡から後世の文明の肝とも言える漢字の素を生み出したのは、蒼頡に突出した能力があったと言えるでしょう。
蒼頡は観察眼が優れていた、ということから、四つの目があったという伝説が生まれ、彼を描いた絵にははっきりと四ツ目が書かれています。
文字の発明は、天変地異!
蒼頡が漢字の素を発明したとき、
天が偉大な発明に感動して
穀物を空から降らせ、
鬼神が夜に声をあげて泣いたりした
と言い伝えられています。
降るはずのない穀物が天から降り、鬼神が泣いたのは文字によって人間の知恵が開けて悪霊が飛び回る余地がなくなったから、ということ。
それほど、人類にとって文字の発明というのは大発明!大改革!天変地異!だったというわけです。
漢字の素を発明した四ツ目の男、造字聖人、蒼頡。
そう、彼は、昔むかしの中国の神話の中の人物です。実在したかどうかは定かではありません。
でも、古代中国、戦国時代(紀元前5世紀頃-紀元前221年)には、蒼頡は「造字聖人」と呼ばれ、この話は一般的になっていたのだとか。
『蒼頡篇』という漢字学習書
また、蒼頡の存在はあながち嘘とも言えない!?のが、『蒼頡篇』という書物の存在です。
秦の始皇帝は国家政策の一環として文字統一を行いましたが、『蒼頡篇』はその際に作成された漢字学習書です。現存はしませんが、いくつかの残簡は発見されています。
のちの漢(紀元前206年~西暦220年)の時代の教科書としても多大な影響を与えた『蒼頡篇』。
蒼頡本人が実在したのか、当時からその伝説が深く根強く言い伝わっていたのかは分かりませんが、『蒼頡篇』という書物自体が存在したのはどうやら事実のようです。
※参考:中国出土文献研究会
漢字という文字が誰かひとりによって作られたものとは考え難い
蒼頡の伝説は興味深いですが、現在のところ、漢字がひとりの個人によって作り出されたという説は有力ではありません。
蒼頡という人物が端を発したのかもしれないし、そうではなく別の誰かなのかもしれないけれど、あれだけ膨大な文字のシステムを開発したのは到底ひとりの偉業ではなく、自然発生的に成されていったものと考えるのが妥当だろうと言われています。
でもでも。
私たち日本人にとっても文字の先祖とも言える文字がどうやってできたのか、紀元前2500年頃とかいう大昔の言い伝えを妄想することはなかなか楽しい秋の夜長と言えるのではないでしょうか。
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