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水深800メートルのシューベルト|第613話

向いて水を吐き続けた。
「どうした! やる気がないのか? 落ちたのはお前だろ! 今すぐ除隊してここからカリフォルニア州まで歩いて帰ってもいいんだぞ。イリノイ州からは遠いだろうが」


 教官は、怒った印をこめかみに浮き上がらせ、それを僕の目にくっつきそうになるくらい近づけてきた。
「いいえ、帰りません」


 僕は、この場で軍曹が聞くにふさわしい返事をした。しかし、腕は言うことを聞かず、一回伸びただけで力尽き、僕の体は床に崩れ落ちてしまった。教官は耳元で怒鳴った。

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