水深800メートルのシューベルト|第186話
「神様って、通夜の時に教会にいた十字架の人?」(僕はオリビアさんに尋ねた)
「そうよ。神様はいつも私たちを見守って下さるから、信じてさえいれば『明日はどうやって生きていこう』とか『お金がなくなっちゃうから困った』なんて心配することは何もないの。全て神様が何とかして下さるからねえ。生きているともしかしたら、辛いことや嫌なことがあるかも知れないけれど、後で振りかえってみると、きっと神様の思し召しで、私たちが一番いいようにして下さったことなの。坊やには難しいお話かも知れないわね」
オリビアさんは少し考え込むような顔をした。
「どうして、サイモンがこんなお婆ちゃんより先に亡くなったのか、まだわからないし、受け入れることもできないけれど、きっと意味があったんだと思うの。神様の国に早く行ったことが、あの子にとってきっと幸せなんだと……そう信じることにしているの」