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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年7月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第623話

 ラスウェルさんは、軽蔑したような目をした。 「どうやって? 金はあっても住む家も無くな…

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水深800メートルのシューベルト|第622話

首のボタンを外したシャツに指を突っ込み、仰ぐようにして体に空気を入れていたナージフさんが…

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水深800メートルのシューベルト|第621話

お金は、お婆ちゃんの貯金があるはずだった。おそらく、お婆ちゃんに身内が――お婆ちゃんの娘…

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水深800メートルのシューベルト|第620話

「いいかい? 君は、ママと別れてお婆ちゃんに育てられたということだけれど、今後はどうする…

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水深800メートルのシューベルト|第619話

 あまりにも呆気なく無罪が言い渡され、僕自身はこんなに簡単でいいのかと戸惑ったくらいだっ…

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水深800メートルのシューベルト|第618話

     最初にあの警官に会った時は、僕に虫けらを見るような目を向けていた。そう、今の軍曹…

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水深800メートルのシューベルト|第617話

 横目でエウヘニオの顔を見ながら、自分の頭を空っぽにしようとした。彼の顎先から滴る汗、歯を擦り潰さんばかりに食いしばった口元を見た。 「十八、十九、二十」  しばらくすると、軍曹の靴音が遠くなった。他を見回って怒鳴りに行ったのだ。その隙に、声だけ出して、腕を少しだけ曲げるという仕草で休むことができた。 「馬鹿、ちゃんとやれ」  エウヘニオが半分息だけのかすれたような声で注意してきた。言いたい事はわかったが、腕が機械だと思い込もうとしても、それは僕の命令を聞かなくなっていた

水深800メートルのシューベルト|第616話

 ええと、あいつは同じ部屋の、確か……、僕は思い出そうとした。変な名前……、ええと南の方…

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水深800メートルのシューベルト|第615話

「仲間? ここにはそんなものはない。少なくとも腕立て伏せをやらない奴を置いていくような仲…

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水深800メートルのシューベルト|第614話

「休めとは命令していない! 帰るのか?」(と教官が言った。) 「いいえ」(そう僕は返事を…

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水深800メートルのシューベルト|第613話

向いて水を吐き続けた。 「どうした! やる気がないのか? 落ちたのはお前だろ! 今すぐ除…

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水深800メートルのシューベルト|第612話

 一斉にみんながボートから飛び降りて、プールサイドに一斉に並んだ。僕も、前の奴に続いてよ…

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水深800メートルのシューベルト|第611話

 しかし、そんな幸福も長くは続かなかった。ライフジャケットの空気が沈むことを拒否し、大量…

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水深800メートルのシューベルト|第610話

 僕も慌ててボートにしがみつこうとしたが、水鉄砲が顔に直撃してバランスを崩した。足元で踏ん張って倒れまいとしたが遅かった。ザブン! とプールに放り出されて沈んでいくと、一瞬、どうなってもいい、これで少しは休めるだろうと、投げ遣りな気持ちで水が引き寄せるままに体を預けた。耳に水が入って上の世界の音が遠くなり、解放されたような気持ちになった。鼻から水が入ってツンと頭を指すような嫌な感じがしたが、何度も同じ目に遭っているので慣れっこだった。  しばらく目を閉じて、水面より上の罵声