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よく遊び、よく遊び、よく遊べ①

癖の強い友達のお陰で濃ゆ~い日々を過ごしている。
私の友達は一言でいうと”遊びの天才”ばかりなのだが、まぁ天才となんとやらは紙一重…ともいう。
今までの数々のバカ騒ぎの中で、特に印象深かったものを残しておこうと思う。

大人になって気づけば”遊ぶ=ランチするor飲む”になってしまったあなたへ、これが遊びだ!!
※異論しか認めない。


『平安女子会』
ある日、Twitterで面白い投稿を見つけた。
”香り遊び”と言って、オリジナルの匂い袋を調合できるキットがあるのだそうだ。
なんて雅な…!!私はすかさず日本文学部出身のMに共有した。
Mとは中学の頃からのオタク仲間で、高校で出逢った新たなオタクJとともに3人でよくオタ活をしている。
平安時代はモロにMの専攻、食いつきが半端なかった。
せっかくやるなら思う存分に平安気分を味わおう!と、Mプロデュースによる”平安女子会”が開催された。
とりあえず、私たちのイメージで平安っぽいことを盛り込んだ。

ルール説明(?)
・血液が薄まりそうな質素で薄味の精進料理を食べる。
・ちりめん布を買って匂い袋を自作。
・満を持して匂い袋の中身を調合。
・お気に入りの扇子を持参し、口元を隠しながらいけ好かないオンナの悪口大会。(最低)
・百人一首で対戦。
・Mのミニ平安時代講座。

スタートは金曜の夜。泊まりがけである。
もろもろの買い出しを終えて、Mの家へ押しかけた。
さすがに精進料理を用意するまではできなかったが、当然ながらルールにより肉は食べられず、物足りないご飯となった。
かぼちゃの煮つけはいくらおいしくても肉の代わりにはなれない。
結局夜通しお菓子を食べていた。

メインの”香り遊び”は2日目のお楽しみで、その夜は百人一首大会と悪口大会が始まった。
百人一首はちらし形式で、読者は交代制。1人33枚ずつ読むこととした。
私は本気で勝ちに行ったのだが、2人が取った札を「いや、今のはそっちの方が早かったね」などと譲り合う忖度試合をするので、拍子抜けしてしまった。
その代わり、扇子でわざわざ顔を隠し、日頃溜まっている鬱憤を存分に晒す悪口大会はかなり白熱した。
(私と違って)2人は普段そんなに悪口を言ったりしないので新鮮だったし、ちゃんと性格が悪くて安心した。
途中から誰も扇子を持たなくなった。

2日目の朝。いや、もう昼。
”香り遊び”のキットを一斉に開けると、おばあちゃん家の箪笥みたいな匂い(強烈Ver.)がして、思わず窓を全開にした。
説明書を読んでもなんだかよくわからず、好きな原料を好きなだけ混ぜればいいんでしょと調子に乗ったら、飛んでもない量の匂い袋の中身ができてしまった。
とりあえずタッパーに入れて封印した。馴染むとまた香りが変わるそうだ。
鼻がイカレてしまったので、出来栄えを楽しむのは時間を置いてからとなった。
その間に、外側の袋をちまちまと手縫いした。
おのおの小学生の頃に使っていたお裁縫道具を持って来ていたのが面白かった。
不器用さを遺憾なく発揮した私は、後に隙間から詰めた中身が漏れてしまって悲惨だった。
帰る間際にそれぞれの香りを嗅いでみたところ、全然違っていてここにも個性が表れるのかと思った。
私はよかれと思ってドバっと大茴香(?)を入れたため、想像を裏切って鼻にスースーと刺激のある匂いになってしまった。
もう4、5年以上前の話だが、未だに匂いは健在で、多分虫除けもめちゃくちゃしてくれている。


『地味ハロウィン』

ある日、高校の部活のA先輩(2個上)から、グループLINEに「~ハロウィンパーティーご招待のお知らせ~」が届いた。
以下、A先輩からのLINEを要約したものだ。
”10/31、我々の代(部活の同期)でZoom仮装パーティーをする。もう期日が迫っていて大掛かりなことはできないが、絶対に負けられない闘いなのでこちらは数で勝負したい。会議室を貸し切ってOLの仮装をするつもりだ。各自スーツを着て集合。”
ツッコミどころはたくさんあるが、従順な後輩である我々は「承知!」と1つ返事でOKした。

普段スーツを着ることのない私たち。
(そもそもOLって何をするんや?)と、ガチの現役OLである友人に聞き込み調査することから始まり、我々が勤めている企業(仮)の理念・役職やキャラまで考えて当日に挑んだ。
私は美人のバリキャリ上司(1個上の先輩)から”おじウケ抜群・期待の新人”という肩書をつけられ、営業職に配属された。

日曜日にスーツで浅草に集合している人なんて我々の他にはおらず、地味ではあるが、浮いているという意味では仮装っぽい気持ちが味わえた。
”OLならオシャなカフェで季節のスイーツを食うだろう”という都合のいい解釈をして、芋が食べたいという欲望を満たした。

団子や人形焼き、思い思いに食べ歩きをした後、借りた会議室で持ち寄った小道具を机に広げて仮の職場を作り上げ、約束の時間を待った。
そしてハロウィンパーティーが始まった瞬間、画面の向こうにポツポツと化け物たちが現れた。
髪型だけそれっぽくしてなぜかつくねを食べていた大正モダンガールと、美大出身の先輩によるガチメイクの百目、泣く子も黙るロン毛のゾンビ、本人ではなくまだ赤ちゃんの娘による癒しのかぼちゃお化け…

でも個人的に優勝だったのは、スケルトンの先輩だった。
真っ黒のセーターに白いガムテープをペタペタ貼って骨に見立て、パンダのアイマスクをして、何故か真っ暗な部屋で推しの赤いペンラを振っていた。
「え?なんかやばいパンダおらん…?」って聞いたら「違うよ骨だよ!」ってかわいく頬をふくらませながら言い張っていたけど、どう見てもパンダの化け物だった。怖すぎる。
なるほど?アイディア勝ちではあるのかもしれない。
後からじわじわくるおもろさがツボに入り、勝手に金メダルを贈呈した。


『歴史的場面再現ごっこ』

突然だが、私はそこそこの歴女である。
(正直、歴女を名乗るには時代が幕末に限定されすぎているが、推しの武士がいるといった程度には)
そして土佐藩の武市瑞山(半平太)が好きだ。
半平太が率いる土佐勤王党にはあの坂本龍馬も所属していたことがあり、2人はあだ名で呼び合うほどの深い仲だったという。
そんな彼は背が高く美形、誠実で高潔、文武両道でカリスマ性があり、なんといっても愛妻家であった。最高。
なのに、下戸で音痴。かわいい。最高。推せる。(早口)
まぁ薄暗い噂もあるので、特に岡田以蔵ファンからの恨まれっぷりはすごいが、それはそれ。
これ以上は長くなるので割愛するが、いい男なのでよろしくな!!(突然の布教)

私の周りの幕末好きは、ほとんどが新選組派なので相容れないのが残念だ。
だが、”思想は違えど日本をよりよくしようと奔走した侍たちの大和魂 is 尊い”という解釈で折り合いをつけて握手をした。

ある日、マブのT (新選組派)のおじいちゃんが高知出身で、Tの親族が高知にたくさんいることを知った。
それを聞いて無免許な我々は、まだ逢ったことのないTのはとこに図々しくも案内をお願いして、高知旅行の計画を立てた。

初めて高知・龍馬空港に降り立った時の興奮は忘れられない。
『ローマの休日』ならぬ『龍馬の休日』と書かれた全面龍馬推しののぼりが立っていて、あまりのしょーもなさにテンションが上がった。

空港で待ち合わせをしていたTのはとこ、初めましてのRくんが最初に案内してくれたのが、なんと武市半平太(と奥様の冨子)の墓だった。
いやいや、いきなり推しの墓って…?!
心の準備ができないまま、現地に到着してしまった。

推しの墓に手を合わせ、しばし感慨に耽って、近くにあったこじんまりした無人の『瑞山資料館』へ。
拝観料は簡素な箱に100円を入れるスタイル。館内撮影はNG。
誰も見ていないからバレないとはいえ、ここを訪れる半平太ファンがルールを破るわけがない。無人経営が成り立つわけだ。
そこで"美人画を嗜む半平太が、結婚した後は奥様に悪いから…と美人画を一切描かなくなった"エピソードを初めて知り、あまりにも尊すぎて心のシャッターを切って心のインスタに上げた。

その後に行った『高知県立坂本龍馬記念館』には、龍馬と中岡慎太郎が最期を迎えた近江屋の中を再現した一室があり、私たちの心がうずうずした。
龍馬と慎太郎になり切って再現VTRをやってみなければ気が済まないのである。
だが、そこで刺客役が足りないことに気づく。
無謀にも初対面のはとこのRくんに頼んで、雑に切り捨ててもらった。
くだらないことに付き合わせて大変申し訳ないことをした。

この遊びは高校生の頃、東京散策で皇居に行った時まで遡る。
当時も一緒に行動していたTと、井伊直弼役を取り合って『桜田門の変ごっこ』をしたのが始まりだ。
その後も卒業旅行でTと京都へ行き、『禁門の変ごっこ』や『油小路事件ごっこ』などをやり、いつしか史跡巡りをするたびに当時起こったことをその場で再現するのが恒例となってしまった。

中でも一番恥ずかしかったのが、"武市半平太殉節地"で再現した『三文字切腹ごっこ』だった。
そこは高知駅近くのアーケード内で、比較的人通りの多いところだ。なんと現在は四国銀行の前なのである。
しかし、背に腹は変えられない。
オタク仲間のJから借りたおもちゃの刀を使って、記念撮影をした。
撮影班もガチなせいで「もっと苦しそうに!」「その角度じゃ刀見えないよ!」などと指示が飛んできた。
通りがかった人からしたら相当怪しかったに違いない。

「表情が腹痛くらいの痛さ」と一刀両断された。

高知は本当におもてなし心が溢れるよい街で、たくさんの人が話掛けてくれた。
「龍馬がお好きなんですか?」と聞かれるたびに「いえ、武市半平太です」と答えるとめずらしがられたが、それを聞いた『龍馬のうまれた町記念館』の館長が「おお!最近見つかった武市の直筆の展示、今ちょうどやってるから見てって!!」と率先して館内を案内してくれた。
展示に出てくる偉人たちを「乙女姉やん」「利通」「がっきー(板垣退助)」「小五郎」などと呼び捨てにしていたら「友達みたいに呼ぶんやねぇ~」とツッコまれて面白かった。

この夜はRくんの友達Mくんも合流し、高知の皿鉢料理をご馳走になりながら日本酒を飲んだ。
なんとそのMくんの先祖は、土佐勤王党の一員だったという。
時代を越えて間接的に半平太と会話しているということでOK?!と、めんどくさいオタク的思考回路になり、大騒ぎしてしまった。
この出逢いに感謝である。

ホテルに帰ってからは、マブとお互いにどこにも着ていけない推し武士のTシャツをパジャマにして、部屋でミレービスケットを食べた。
酔った勢いで理想の死に様について語るという、華の女子大生とは到底思えない旅行を心ゆくまで満喫した。

マブは新選組の鬼副長・土方歳三のTシャツだった。


次回に続く…??


#大人の遊び #エッセイ  


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