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ダウン症の数字を可能性の象徴に変える「Runner 321」


Summary

プラットフォーム「Impossible is Nothing」の理念のもと、スポーツが人生を変える力を持つと信じるブランドAddidasは、世界で最もアクセスしやすいスポーツであるランニングにおいて、ダウン症の参加者が少ないという課題に取り組んだ。

この課題の原因として、ダウン症の人々の「マラソンでは自分を表現し、成功する機会がない」という認識がある。これはメディアや社会がダウン症のアスリートの存在や成功がほとんど扱われないことによるものである。自分と同じ背景や特徴を持つ人々が参加していることを見る機会がないと、自分にもそのような可能性があると想像することは難しい。

しかし、この認識の奥には、「自分の能力や可能性を認識し、それを活かすきっかけが欲しい」というインサイトがある。

このインサイトに応えるため、Addidasは「マイケル・ジョーダンの23やリオネル・メッシの10のように、スポーツにはアイコンとなるアスリートと象徴的な背番号が存在する」という事実に着目。ダウン症の人々にとってアイコンとなる背番号を生み出し、それを着用したダウン症のアスリートが参加すれば、それを見たダウン症の人々が、それぞれ自分の可能性を信じる力になるのではないかと考えた。

そこで、ダウン症コミュニティにとって象徴的な数字「321」を、ダウン症アスリートの背番号として、スポンサー選手であるクリス・ニキックが着用して大会に出場。クリスの活躍により、321という背番号がメディアでハイライトされた。

このアプローチにより、ダウン症の人々の中で「321という数字は、制限の象徴ではなく、可能性の象徴である」「ランニングとは、自分に無関係なものではなく、可能性を広げるものである」という価値変容を通じて、ダウン症の人々をランニング大会の参加に促した。

この取り組みは、アディダス以外のスポーツブランドやスポンサーのマラソン大会でも採用され、大きな社会運動へと発展していった。
ダウン症の人々をエンパワーするだけでなく、一般社会のダウン症の人々への偏見や無知という課題も同時に解決したのではないだろうか。



Deconstruction

Brand
Addidas - プラットフォーム「Impossible is Nothing」の理念のもと、スポーツが人生を変える力を持つと信じるブランド。

Target
世界中のダウン症の人々。

Objective
世界で最もアクセスしやすいスポーツであるランニングにおいて、ダウン症の参加者が少ない → ダウン症の人々をランニング大会の参加に促す。

Barrier
マラソンでは自分を表現し、成功する機会がない。

Insight
自分の能力や可能性を認識し、それを活かすきっかけが欲しい。

Thought starter
「マイケル・ジョーダンの23やリオネル・メッシの10のように、スポーツにはアイコンとなるアスリートと象徴的な背番号が存在する」。ダウン症の人々にとってもアイコンとなる背番号を生み出すことで、ランニング大会へ挑戦するきっかけにする。

Execution
“Runner 321”
ダウン症コミュニティにとって象徴的な数字「321」を、ダウン症アスリートの背番号として、スポンサー選手であるクリス・ニキックが着用して大会に出場。

Transformation
321という番号の価値変容
制限の象徴 → 可能性の象徴

ダウン症の人々にとってのランニングの価値変容
自分に無関係なもの → 可能性を広げるもの

Result
アディダス以外のスポーツブランドやスポンサーのマラソン大会でも採用され、大きな社会運動へと発展した。


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