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【レポート】総額50万円!!大分県の地域課題をハックする1ヶ月 - OITA HACK MONTH 2022 デモデイ【受賞者決定】

皆さんこんにちは、おおいた県IT部の星です。

今回は、令和4年3月8日(火)に行われた「OITA HACK MONTH 2022 デモデイ」の模様をお伝えします!

デモデイの概要とプレゼンのルール

今回のデモデイは、情勢を鑑みてオンラインでの開催となりました。

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デモデイの説明をする、コラボ後藤さん

オープニングはコラボ後藤さんからデモデイの概要とプレゼンのルールについて説明がありました。

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参加者はこちらの7名のみなさん!(残念ながら健康上の理由で複数名が辞退となりました。お見舞い申し上げます。)

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参加者のみなさんは、5分の制限時間内で地域課題解決に向けた提案をプレゼンします。その後質疑応答と採点に5分ずつ、一発表あたり15分で進行していきます!

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採点の基準はご覧とおり。行政担当者、IT関連・創業支援事業者により地域課題への理解とその実現可能性、内容のクオリティと将来性などが総合的に判断されます!

さあ、いよいよプレゼンがスタートです!

1 株式会社APC 恒松さん

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トップバッターは 株式会社 APCの恒松さん!

プレゼンのテーマは「持続可能な地域の公共交通機関の実現に向けて〜位置・電波を測りMaaS〜」
※MaaS [Mobility as a Service】モビリティ・アズ・ア・サービスとは、自家用車以外の全ての交通手段による移動を「1つのサービス」と捉え展開を試みる新たな考え方。)

大分県内の公共交通機関の存続が重要な地域において、現状の位置情報などのズレを測定し今後のモビリティサービスに活用するというものでした!

「持続可能な公共交通機関」を可能にするために!社会インフラとしての電波整備、現状の精度把握を目指す

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以下、 APCの恒松さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

県内の過疎化、高齢化が進む中で、公共交通機関に頼る必要がある人々のために次世代モビリティサービスなどの拡充が重要。その上で「持続可能な公共交通機関」を可能にするには現状の通信、位置情報表示などのズレを正確に把握し訂正する必要がある。

提案

「持続可能な公共交通機関」を可能にするため、また社会インフラとしての電波整備のために、現状の位置情報の精度や電波強度を把握する「位置・電波を測りMaaS」を導入する。

位置・電波を測りMaaS 地図上に測定した情報を表示する

恒松さんへは以下のような質問がありました。


質問&回答(※一部抜粋)

質問「市民・県民の方にはどのようなメリットが?」          回答「調査段階の機能なので直接的なメリットというよりは将来的に広域で強い電波や正確なサービスを享受できること。」

自分がどこかに行きたいと思った時、その目的地と同じくらい「自分がいまどこにいるのか、どの方向を向いているのか」が正確に分かっていることって大事だよな、と説明を聞いていて感じました。こうした現状把握により最適な電波の整備が県内の各所で進めばよりMaaSの考え方に基づいた「持続可能な公共交通機関」の実現に近づくと感じました。実際に事前測定に向かわれるなど、プレゼンへの準備も熱意が感じられました!

#保育園スムーズに入園できた大分生きろ  河野さん

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続いて、「#保育園スムーズに入園できた大分生きろ」 の河野さん。少し前に話題になった「#保育園落ちた日本…」というワードをもじり、「#保育園スムーズに入園できた大分生きろ」と題し、保育園の入園をスムーズにするためのサービスが提案されました。
すでにこのネーミングで惹きつけられます・・・

「保活」をよりスムーズに!入園時に必要なオープンデータの可視化、手続きDXを目指す

下調べの時点でこれだけの検討事項が
何度も重複する申請手続き 簡略化したい!

以下、 河野さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

保育園入園の準備段階において、園の下調べ、申し込み、契約、継続、変更などの全てのフェーズにおいて都度の申請が発生し、手間がかかりすぎる。入園のハードルを下げる必要がある。

提案

保育園情報のデータベース化・申し込み手続きのDX化を行い、「保活」をよりスムーズにする。入園時に必要なオープンデータの可視化、リアルタイムでの更新を可能にし、かつ手続きDX(1回の記入でOKに)を目指す。小・中学校のデータベースも欲しい。

河野さんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

質問「情報収集はどのような点で困難ですか?」            回答「ネット上に本当に欲しい日当たりなどの写真データがなく、民間で調査しようとしても情報開示が難しい」

質問に回答し、一度登録した情報に「はい」か「いいえ」で答えるだけ仕様に!

実体験をもとにしたとても説得力のあるプレゼンテーションでした。当事者でなければ、こうした問題を実感を持って語ることは中々難しいですが、市民の中で問題を可視化し、共有し、システム化していくことはできますよね。もしかしたら通常はマジョリティの意見の中に埋もれてしまうかもしれない、けれど確かに社会に必要な声をきちんと拾うことこそが、シビックテックに求められる役割なのだと感じました。

3 ユース・インフォ 大塚さん

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続いてはユース・インフォ 大塚さん!
情報をもっと多くの人へ!と題し、大学生を始めとした若者によりリーチする活動をしたいという提案でした。

県内情報を次世代に繋ぐ「橋渡し役」に!若者の積極的な社会参画を目指す

以下、 大塚さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

次世代を担う若者、学生が必要としている情報及び情報収集手段が少ない。
少子高齢化、感染症の影響も重なり地域の不活性化につながる。

解決案

LINEを用いた大学生がメインターゲットの情報発信サービスを行う。県内の情報を次世代に繋ぐ「橋渡し役」となることで、若い世代の挑戦意欲が発揮できる環境づくりを目指す。

ユース・インフォが学生と社会をつなぐ「橋渡し」役に

大塚さんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

質問「学生がLINEアカウントをどれくらいフォローしてくれそうか、独自の媒体は考えていないか」            
回答「他のSNSよりも使用率が高いLINEを選択、コストがかからないため実現可能性が高いと判断」

私自身、学生時代に「こんな学生向けイベントがあるなら知りたかった...なんでもっと大学側に告知してくれないの?」と感じた経験が何度かあったので、大塚さんの想いには共感するところがありました。特化型の情報発信メディアの活動イメージの媒体例としておおいた県IT部の名前も出してくださっていて恐縮でした!

4 ホコロビ 宗さん

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続いては、ホコロビ 宗さん!
市民と行政をつなぎ、広く市民の声を政策実行側に届けることが狙いのいわゆる「デジタル目安箱」のようなサービスの提案でした。

市民と行政をつなぎ政策の是非や個人の要望を確実に届けるサービスを!誰もが「ほころぶ」ような社会を目指す

以下、 宗さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

県議員・職員の高年齢化が著しく、価値観やライフスタイルの違う若年層の市民の声が幅広く行政に反映されているとは言えない。
垣根なく誰もが身近な困りごとから政策に参加する必要がある。

提案

市民と行政をつなぎ政策の是非や個人の要望を確実に届けるサービス「ホコロビ」をローンチする。幅広い意見、要望を行政に届け、地域課題の可視化を促進させる。みんなの顔が「ほころぶ」ような社会を目指す。

宗さんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

質問「(同様の目的意識である)既存サービスの参加型合意形成プラットフォーム Decidimなどを知っているか」            
回答「PoliPoliなどの類似サービスについては認識している」

優しい語り口で、丁寧なプレゼンが印象的でした。
「HOCOROBI」このネーミングもとても素敵だなと思いました!
行政と市民の間を隔てている壁をちょっとずつでも壊しつなぎ直していけるサービスがシビックテックの潮流の中でどんどん誕生してくれば、地域社会はますますより良い方向に進むのではないかと感じました。

5 イダイ 池上さん、藤島さん、菊池さんチーム

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チームで参加の池上さん(左)、藤島さん(右)(※菊池さんは当日不在)お二人は現役の医大生

大分県の救急医療の発展のために!病院の受け入れ体制などのリアルデータを可視化、即時反映を目指す!

以下、 池上さん、藤島さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

最新の情報が共有できず受け入れ確認に時間がかかる状況

課題

病院選定において最新の情報共有、受け入れ確認に時間がかかる状況。救急隊が電話で一回ずつ確認をしている現状。コロナ対応、搬送困難事案の増加など救急医療現場の逼迫が著しい。

提案

マップ上でリアルタイムのデータを反映し、救急搬送先の選定を行えるシステムを導入する。搬送先病院決定までの時間短縮を図る。大分県の救急医療、県民の健康を守ることにつながる。

救急搬送の理想のプラン
デモ画面。対応可能病床数、医師数がマップ上の病院ごとに表示される

池上さん、藤島さんさんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

質問「病院側も多忙の中、リアルタイムのデータを入れてくれるには」            
回答「一学生の声では限界がある。行政の協力は不可欠。行政の医療現場への理解、病院のDXへの理解、両方が必要」

現役医学生ならではの視点、医療現場へのリスペクト、強い想いがあるからこその提案で素晴らしいなと感じました。
お二人の話から、この社会情勢の中で今まさに早急にDXが求められているフィールドであることがひしひしと伝わってきました。

6 株式会社APC 廣戸さん

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続いて株式会社APCの廣戸さん。自動合成画像サービス「Pa写」を用いた観光スポット創出や、健康増進を目的とした利用の可能性が提案されました。

自動合成画像技術を用いて観光促進を!季節や場所に囚われないSNS時代の新たな発信様式を目指す

以下、 APCの廣戸さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

県内の観光客の動向が一部地域に集中している。
高齢化で増える社会保障費対策としても、健康寿命を促進させる必要性。

提案

「Pa写」を用いた自動合成画像の生成によって、観光スポット創出。
高齢者向け施設に自動合成画像を用いたジグソーパズルなどを作成して、健康寿命の増進につなげる。

APCの廣戸さんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

審査員「健康増進につながるエビデンスは?」
回答「エビデンスの実証はこれからサービスを展開しながら」

フェイク画像など、こうした技術を巡っては正直あまりいいイメージがなかったのですが、廣戸さんのプレゼンからはとてもポジティブな可能性を感じました!一つの技術にすぎないと思うことも使い用によってはいろんな社会課題解決につながるのではないか?という問いかけにもなっていたように思います!


7 Whiplash 南さん(壱岐さん、稲積さん、三嶋さん)チーム

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ラストはWhiplash 南さん!チームを代表してのプレゼンです。

ユーザーの抽象的な要求に対する大分県の旅行旅行計画の提案システムの開発と題して提案がありました。

「大分でこんな景色観たい」に応える!写真識別によりイメージ画像に類似する県内観光地を選出、旅行プラン提案を目指す!

以下、Whiplash 南さんのプレゼンで提案された課題と解決案です。

課題

「なんとなく観光をしたい層」を取りこぼさず、確実に大分に取り込みたい

提案

「大分でこんな景色が観たい」に応える。写真識別によりイメージ画像に類似する県内観光地を選出、既存の観光地以外にも写真データの条件に合う県内スポットをピックアップ、新たな観光地化誘発に。その上で新しい旅行プラン提案を目指す。

Whiplash 南さんさんへは以下のような質問がありました。

質問&回答(※一部抜粋)

質問「有名ではない観光地に誘導できるとはどういったイメージ?千差万別な抽象的な感覚、感情をどう取り入れる?」
回答「有名でない観光地を意図的に候補地に入れ、ピックアップして提案。ピックアップは機械学習の性質上、上位5個くらいの提示になりユーザーが感覚的に選択可能」

「こんな写真を撮れるところに行きたい」という動機に起因したサービスがSNS時代の発想という気がしてとても面白いなと思いました!
大分には既存の「観光地」以外にもいいところがいっぱいありますし、そうしたところにスポットライトを当てたいという思いはとても共感しました!

審査結果発表 グレイトグランプリ賞は「#保育園スムーズに入園できた大分生きろ」の河野さん!

後日、TECHCYPHERのnote上にて、審査結果が発表されました!

グレイトグランプリ賞 - 20万円(1チーム)
《チーム名:#保育園スムーズに入園できた大分生きろ》

グッドプロトタイプ賞 - 10万円(1チーム)
《チーム名:ホコロビ》

グッドチャレンジ賞 - 5万円(2チーム)
※1チームのみ選出、1チーム該当なし
《チーム名:イダイ》

受賞された皆様、誠におめでとうございます!

受賞理由、審査員コメントについてはこちらのnote記事に詳しく記載されていますのでぜひご覧ください!

まとめ

いかがでしたでしょうか。

これから、ご参加いただきました皆さんのアイデアの事業化に向けたチャレンジが始まっていきます!その意味ではまさにこれからが本番!

行政と民間の垣根なく、みんなで豊かな地域のあり方を模索する。
そんな社会のあり方を目指してこれからも挑戦は続いていきます。

みなさんが日々それぞれのフィールドで感じている問題意識や課題だからこそ、どのプレゼンも本当に熱量と説得力に満ちたものになっていたのだと思います。みなさんのプレゼンを聞いていて、試行錯誤しながらより良い方向にともに少しずつでも歩みを進めていこうとする姿勢は確かに人々の心を動かすものがあると感じました。

今回提案され実際に活動資金が提供されたサービスが、実際に展開されたのちに大分にどのような効果・価値をもたらすのか今からとても楽しみです!

OITA HACK MONTH 2022 デモデイ。
なかなか難しい状況の中での開催となりましたが、ご参加いただいた皆さんのおかげで素晴らしい熱量のイベントなりました!

みなさん長丁場のプレゼンと質疑応答、大変お疲れ様でした!

それでは今回はこの辺で。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました!


【記事担当】

星 悠

1992年、福島県出身。2021年5月、湯けむりに引き寄せられるように大分県に移住。現在別府市鉄輪温泉の「ちくぜんや山荘」で家守業務を行う傍ら(株)コラボでディレクター業務を行う。カレーと音楽が大好き。