おおいた クリカレ2021 リポート7「クリカレ卒業生コミュニティ活動」
クリカレ・サンドボックス。
今期のクリカレには、もうひとつのミッションがあります。「クリカレ卒業生のコミュニティの構築」です。5期まで入れると、クリカレメンバーは、総勢100人超。内訳も、独立デザイナーを始め、制作会社所属デザイナーから、経営者、学生まで、さまざま属性の方々が集っています。クリカレを通じ、クリエイター同士が繋がることは有意義に違いありません。
私たちは、このコミュニティに「サンドボックス」という名前をつけました。サンドボックスとは、日本語で砂場を意味し、イノベーションを起こすために一時的に従来の規制・規約を取り払って、子供たちが自由に遊びながら学ぶように、楽しく実験を行える場所のことを指しています。
今期は、都合4回のサンドボックスを開催しました。
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◎1回目「高山活版社の工場見学&デザイン経営の取り組み」
サンドボックス、栄えある第1回目は、大分県内で率先してデザイン経営に取り組んだ高山活版社の会社見学と、デザイン経営の実践をテーマにした座談会の開催です。クリカレ5期にもご参加された高山香織さんと、高山英一郎社長が自社の実践経緯と効果について語り、受講生と意見交換を行う会となりました。以下は、座談会の抜粋。
問1「デザイン経営でクライアントと信頼を築くためにどうしたらいい?」(受講生から)
→最初はトップダウンで経営を決めていたが、外部の人が入らないと会社は変わりづらい。(デザイン経営に取り組んだPJでは)ロフトワークの人がハブになって、信頼関係を作ってくれた。(高山さん)
→最初は依頼された部分を真摯に向き合う事から始めてもいい。ただ、なぜやるか?をクライアントから掘り起こし、前提に興味を持っていることを伝えながら、気になるところを遠慮せずに指摘し、距離を縮めることが大事。(越田さん)
問2「デザイン経営の能力をどう身につけるか?」(受講生から)
→自分が関わっている製品がどう生かされるの?なぜ作るの?という深い部分を理解すると、同じ依頼が来ても、前に考えた疑問を出せるし、提案できる。(越田さん)
問3「答えはどちらから出すべきか?」
→クリエイターに解決策を出してもらうと言うより、一緒になって考えて欲しい。その延長に、お金や経営のことが見えてくる。それがデザイン経営じゃないか。欲しいのは、一緒になって考えてくれる、悩んでくれる人。(高山さん)
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◎2回目「先輩クリエイターと話す!地域との共創のコツ」
大分で活躍する先輩クリエイター(江副直樹さん、福田まやさん、たなかみのるさん)に、地域との共創事例をお話してもらうイベントを開催。先輩たちが事例の紹介をしつつ、共創において大切にしている考え方などを受講生にシェアして、共創のコツを議論しました。
○「ヤブクグリを中心としたデザインプロデュース」江副直樹さん
お話から)ヤブクグリでは、プロデュース係を担当。きこりめしが有名になった。活動の基本は林業振興だけど、楽しく進めることを優先している。つい先日、プロダクト開発の生活道具研究室が発足。おふろのフタや椅子などの開発が進行中。新たなフェーズに入った。
スタートはコンセプトワーク。いきなり造形にはいかない。デザインには必ず根拠があるべき。プログラム内のテロワールのお話には非常に共感した。地方のプロジェクトが多いが、常に宝は足元にある。ただし、それを磨けるか否か。
○「イベント耶馬渓トンネルホテル」福田まやさん
お話から)見た目だけでなく体験をデザインすることを大事にした。例えば地域の農家の野菜を使って、関わる人を増やして地域が元気になったらいいなと思った。耶馬渓はすごくいいところなので、なんとか伝えたかった。
NHK大分のロゴ制作では、大分のものだけで制作。サウンドデザイナーは糸山さんにお願いし、別府の音とか地元からを採集してもらった。
色んな仕事をするけど、俯瞰して見られるようになってきた中で、ただかっこいいものを作るではなく、つながりとかを大事にしながら制作をしている。大分は温泉だけじゃない。生産者さんに会いに行くとか。魅力の見つけ方、伝え方はいっぱいある。
○「虎の子みかんのプロモーション」たなかみのるさん
お話から)クライアントがブロックのように使えるパーツをつくること。あと売り方を一緒に考えることを心掛けている。親子企業の二代目から「ネット直販」の依頼。親からは、こんなもんに金をかけて売れるんか?と言われて板挟み。でも成果を出すと向こうから挨拶してくれるようになった。
頑張らない仕組みづくりを頑張ることで、納得して買いたい人からお問い合わせがくる。一時的に売上を上げるのは違うと思う。メールマガジンで畑の様子をこまめに伝えるとか、地道にやり続けることも大事。
きっかけは、コロナで百貨店が閉まり、直接そこから買えなくなった。ネット直販では市場に出すよりも利益が取れた。商品がダメなときは嘘をつかない。今年はありませんと正直に言う。農園さんの素直な気持ちを伝えることで結果うまくいったと思う。
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◎3回目「クリカレメンバーとやってみたいことを考えるワークショップ」
2回目までは、クリカレの受講生に興味を持ってもらうためのイベントを事務局側で企画してきましたが、サンドボックス3回目は、クリカレ受講生のクリエイターが主体となり活動を率いていただくために、まずメンバーたちが「受講生が集まるこのコミュニティで、他のクリカレメンバーといっしょにやってみたいこと」を考えるワークショップを実施しました。
○ワークショップの目的
今回のサンドボックス参加者が「本コミュニティメンバーと共に実施してみたい」と思える活動内容を策定する。
○ワークショップのゴール
策定した活動内容に対して、多くの参加者が共感し、かつその実施へのモチベーションが高まっていること。
○結果
大きく分けて、3つの活動テーマが上った。
テーマ1:「交流の中で知見を深める」活動
テーマ2:「新しいつながりやモノを創造する」活動
テーマ3:「クリエイティブができることを考える」活動
越田さんから:面白い。いかに頻繁に一緒にやっていくかですね。この3つのテーマもいいし、サイクルを回していくという活動は、大分にまだないと思う。この後どうなってくか楽しみ。
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◎4回目「クリカレお疲れさまでした! 1〜5期 振り返り&フィードバック会」
第3回目で検討した企画を、クリカレのクリエイターが主体で実行。Advancedコース(県外企業最終提案)がちょうど終わったタイミングだったため、クリカレお疲れさま会も兼ねて、「1〜5期 みんなのアイデア振り返り&フィードバック会」を実施しました。それぞれのクリカレプログラムや提案アイデアを題材に、お互いに交流を深めることができ、クリカレの振り返りになりました。以下は、そこで出た意見の抜き書きです。
羽山さん(5期):クリカレでは、企業の参画が決まったらすぐに、直接クリエイターと繋がったら、よりスムーズにマッチングができるかも。
杉本さん(3期):5期の実践のあとフィードバックを挟めるのはいいな。社会人としていい経験ができる。
佐藤さん(4期):外と繋がる機会を得られた。考える時間ができて楽しかった。座学からもたくさんのエッセンスを得られて、普段の仕事に活用してきた。
越田さん(1〜5期):1〜4期は、コンセプトメイキングの話を丁寧に教えてもらったのと、アイデアの出し方のルールも、講師の成功事例をいろんな角度から紹介してもらい、たくさんのルールを知ることで自分の仕事に反映することができた。5期は実践実践で、クライアントとも距離が近くてまさに併走だった。
米村さん(3期):参加者の幅が広かった。講師からそれぞれのテーマで、論理的な分析を教えてもらった上で、個人的な課題に取り組みながらグループの議論を作ることができた。特に3期の時の飲み会で繋がりができてよかった。
今永さん(1期):もし可能であれば企業さんから予算もらって、結果が出るまでサポートしたいですね。
豊住さん(5期):受講生と企業とのマッチングでできた提案を実際に事業化していくための補助?出口支援?があったらうれしい。
サンドボックスの明日。
サンドボックスはまだまだ始動したばかりですが、個人で活動しているクリエイターから「コミュニティで他と交流することで、新しいアイデアを得ていきたい」というコメントをもらうなど、メンバー同士の交流は必ず有意義なものになっていくと強く感じます。
今後、クリカレでの出会いが重なっていくことで、大分県のクリエイター、そして企業が、相互刺激や情報交換を日常的に行える、「自走するクリエイティブエコシステム」の生成を期待したいと思います。
執筆:Bunbo江副
おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021 主催:大分県
おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021 企画運営:株式会社ロフトワーク
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