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おおいたクリカレ2021 リポート8「Advanced受講生インタビュー」

6ヵ月を振り返る。Advanced受講生インタビュー
今年度のクリカレレポートを締めくくるテーマは、Advanced受講生のインタビュー。

Basicが終わり、息つく間もなくAdvancedプログラムに挑んだ受講生4名。約半年クリカレに向き合ってもらった面々に、クリカレ全体を通じて、難しかったこと、学びになったことなどを語っていただきました。


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福田まやさんの場合
○クリカレ、ほんとにお疲れさまでした。これまでの自分を脱皮するような局面はありましたか?
ずっと一人でやっているので、4〜5人でチームを組んでプロジェクトに取り組むことが少ないので、最初はドキドキしていました(笑)。でも上手く行ったので良かったです。
同じ職種の人がいたのも反対によかった。グラフィックを提案するプロジェクトではなく、考え方、新しいことを生み出すための提案だったので。それぞれの得意なことが上手く活かせたと思います。

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地方にいると、今自分がどういう仕事をしているか見えにくい。近くの人にいいねって言ってもらっても、本当にそうなのかな?って思ってしまう。しっかりいいものを地方から出していくためにも、自分たちがどれくらいの地点にいるのかっていうのを知ることが大事だと思うから、評価・講評してもらうのはすごく面白かったです。特に、田子さんのベストリビング案件の講評は、ちゃんとこれは全国に通じることなんだと、クライアントのいる前でそれを言ってもらえて、とってもうれしかった。

○デザインに刺激を受けた人っていますか?
実は茶道の先生です。16歳からお茶を習っています。移住してからなかなかできていないのですが…お茶の先生が大胆な方で、いろんな茶会に出席させてもらって、数年したら茶会の水屋(裏方)を任せていただいていました。1日で100人くらい来られる茶会も一人で全部点てる。美術館にあるような茶道具が出てくるような茶会も裏方に入らせていただきました。お茶を点てさせてもらう茶碗が何百万…、それはそれは刺激を受けました。
デザイン以外のところにじつはいろんなものがあると思ってます。茶道も総合芸術で、何をどう見立てるのかというデザインの根本になると思っています。現代アートも、社会をどう見てどう考えるのかってことだと思っています。直島の全体を設計された福武さんも気になるし、大地の芸術祭の北川フラムさんも気になります。新潟県の清津峡にこないだ行ったのですが、何億もかけて現代アートでトンネルをリニューアルしていて驚きました。総合的な体験というのがいつも気になっています。

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○ライフスタイルとクリエイティブの関係は?
耶馬渓という山奥で暮らすことが私の根幹にあります。誰もいない森の中に日中いるんだけど、自然の中にいることが自分にとってはとても大事。ここに住んでいるからこそこの仕事ができていると思うし、インスピレーションを受けています。
また、町と行き来することも刺激的。町の色んな面白い取り組みも好きで、1時間半かけて大分市に行きますが、行き帰りの車中でインスピレーションを自覚したり。
いいとこ取りかもしれないですね。いまも地方でデザイナーやってる人は結構いると思うけど、僻地でやっている人はまだ少ない。違った価値観の人が増えてきたら、地方はもっと変わりそうです。


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渡辺恭輔さんの場合
○クリカレにどういう成果を期待されてましたか?
自分のグラフィックの能力は、自己評価的にもあまり高くない。他のデザイナーに比べて突出したものはない。色んな仕事させてもらうとき、目に見えるデザインの力よりも、もっと企業にとって、どういう物を提供すべきか。チラシを求められたけど別の媒体のほうがいいんじゃないかということを提案することもあったので、その能力を高めていく必要性を感じていました。
デザイン経営の根幹のところだと思いますが、課題分析という内容をちゃんと捉えて、真の課題を見つけること。企画力とかプレゼン力みたいなことですね。

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○Advancedまで受けられて、実際どうでした?
すごくためになったとは思ってますが、あまりうまく出来なかったと自分では評価しています。Advancedでは質量共に求められていました。課題を捉える力、リサーチと課題を見極めるのが難しかった。勉強にはなりましたが、身についたとはとても言えないです(笑)。
あと、クリカレに参加して良かったと思うのは、他のクリエイターとの繋がりができたことですね。Basicでは同じ企業の課題に取り組みましたが、課題の本質の捉え方が、自分と他の人とは違ったり。解決方法が違ったりしていたのが新鮮な発見でした。

○渡辺さんの案件は難しそうな印象でした。
精神的にも余裕がなかった。色んなことが重なって思うように出来なかった。企業とのコミュニケーションではあまりよく作用していなかったかも知れません。
クライアントとのコミュニケーションという意味では、対面打ち合わせが少ないもどかしさはありました。お酒を飲みながら話すと、かなり本音が聞けたりすることがあるので、それが出来ないもどかしさはありました。
ただポスターを作るってことなら既定のフレームワークの中でやればいいけど、聞くことも確認すべきことも多かったし、正直大変でした。

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○これから、ご自身のクリエイティブはどう変わるでしょう?
今後、どういう場面で自分が活かせるかはわからないが、これまで以上に積極的に関わりたいなと思っています。大分に戻ってきて感じたのは、デザインされたものに溢れているし、さまざまな取り組みも大分で始まっているんだということ。
クリカレで生まれたコミュニティにも積極的に参加したいと思いつつ、なかなか自分に余裕がなくて。でもやりたいと思っています。
クリカレに参加して、課題分析でのステークホルダーマップ、ポジショニングマップ、などの手法を具体的に学べ、実戦で経験できたことは大きかったです。すでに自分の仕事にも一部取り入れて、活用させていただいています。


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豊住大輔さんの場合
○Advancedコースはどうでしたか?
素直に難しかったです。今回僕が担当した企業は印刷業、製造業、文化財と、どちらかと言うと昭和からの仕組みで続いているところ。自分はIT畑なので、まだその仕組みで動いているんですねという印象もあって。久しぶりに相手がクラウドサービスに苦手意識を持っていることを感じました。前提が違うところからスタートするのはハードルが高かったですね。会話の土台になるところを探るのが難しく、時間がかかりました。
南條工房などは関西の企業なので、コロナがなければ実際に遊びに行きたかったけれど、コロナが加速したので、直接話を聞いて現場を見ることが今回できないまま進んでしまいました。そこが出来ないまま、ズルズル進んでしまったことは残念だなと思ってます。Advancedに関しては、最初からまずい、ヤバいという雰囲気のままスタートしました(笑)。

○本質の見極めについては、一般のデザイナーよりも慣れてらしたように見えます。
そうですね。(自分の運営している)ファブラボ大分に来る人は、作りたいモノのゴールだけ漠然と持っていて、途中どうすればいいかがあやふやな状態でいらっしゃるので、作ろうとしているものが何に使うものであるのか、どういう状態でつかいたいものかをヒアリングすることは、日常的に作業の一環でやっています。
今回の南條工房についても、何を広めたいのかを深堀りしていったら、お輪という文化を広げたいということに行き着いた。パズルを紐解く感覚は、考えてみると普段の業務の中に確かに入っています。

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○ご自身の仕事上の変化はありそうでしょうか?
Basicでは、今まで自分が直感的にしていたことに対して、理論があった、実はこういう意図があったということを知識として学べたことが収穫でした。自分の感覚でやっていたことに、明確な理論が伴ってきた感じ。
ファブラボで一つのプロダクトをピンポイントごとに制作することが多かった中で、今回始めて企業体に対して提案を考えました。企業の今後5〜10年のことを考えるのは、正直向いていないなと思ったのも事実です。
大きな根本のことは自分で決めようぜと思っている中で、よその組織に対して、こっちからああだこうだ口を出すってことは得意じゃないというか。今回の提案も、僕はこう思ってるけど、向こうとしてはそう思わないってことはあるんじゃないかと。最終的にやってみようと判断するのかどうかは、僕が決めることじゃないと思っているので、その意味では、ゴリゴリ押すスタイルは僕にはできないかも、ということも、自分の中で発見でしたね。

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羽山仁史さんの場合
○Advanced受講後の感想を。
独立して直接クライアントと繋がると、きっかけはチラシだけの依頼だけど、「こないだのポスターの反響が良かったけどこの後どうしていったらいいかわからない」といったことを言われることが多くて、それがデザイン経営的だったかなと思います。プログラムでは、そうしたことが体系化されていて、それを改めて学べたというのは収穫でしたね。

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○Advancedでの気付きはありましたか?
会社の経営的なリテラシーはいろいろ違うんだなと思いました。(株)SALTさまは自分たちのお考えをまとめられて、何をどうしたいかの軸を持たれていた。けれど一次産業の(有)かぼす本家さまや、(株)みやじ豚さまは、社員規模で見れば(株)SALTさまよりも多いけど、経営的な考えが整っていない。常々対話して知ることを日々一番意識してますが、今回はそれが生きたと思います。
宮治社長はNPO活動もしたり、フレキシブルなんですが、計画的なアクションが出せていない方。(有)かぼす本家さまは、外部的な活動が苦手な方。でも2社の経営に関する行動力は似たような戦略に収まっているのを見ると、結局は経営者の個人に委ねられていると感じました。

○ご自身の仕事の仕方に変化は起こりそうですか?
クリカレを通して、経営に関して疎い部分があると気づきました。いちグラフィックデザイナーでしかないので、経営への知識を身につけて、何でも相談できる人になりたいなと思っている。アドバイスをすぐに出せるようになりたいですね。
当たり前ですが、自分も社長なわけで、税務署に書類を出せば、誰でも社長になれます(笑)。なので、経営者がすごいんじゃなく、事業を続けられる経営者がすごい。そう意識できるようになって、関わる経営者の方を肩書で判断せずに、何が足りてないのか?というのをフラットに見られるようになりました。いまは相手の肩書にとらわれずに、素直にコミュニケーション取るので、恐れ多さは消えましたね。

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○今後、仕事でめざしたいことは?
僕は大分のクリエイティブを元気にしたいという思いがあります。Basicで繋がったみなさんは、自宅で仕事しているという方も多かった。自分もそういう感じなんですが、クリエイターの存在が見えにくい状態ですよね。
もっとクリエイターが大分の中で目立つような形で活動できるようになって欲しい。クリエイターの活躍を加速させていきたい。ただそのためには、自分がまずそのポジションにならなければいけません。年齢を重ねてからでいいので、そういう状況にできればと思います。



インタビューを終えて
みなさん、お答えはそれぞれでしたが、今回のテーマである「デザイン経営」について、理論にとどまらず、実際に多様な企業への提案を通じて、造型に至る前段が深く耕された印象を受けました。クリエイティブが目的ではなく、良質の経営を実現するための有効な手段として、クリエイターも企業も認識が進んだのではないでしょうか。

今後のクリエイターと企業のさらなる良好な関係を期待したいと思います。皆さん、お疲れさまでした。



執筆:Bunbo江副

おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021 主催:大分県
おおいたクリエイティブ実践カレッジ2021 企画運営:株式会社ロフトワーク


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