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日本が誇る歩留

・歩留まりについて

皆さんは、歩留まりという言葉をご存じでしょうか。製品製造(特に食品業界)でしばしば出てくる言葉です。商売をする上で避けては通れない言葉です。普段聞きなじみのある方でもいざ「歩留まりとは何ですか?」と聞かれても、うまく答えられない人がもしかしたらいらっしゃるかもしれません。

歩留まりとは食品の原形物に対する食用可能な部分の比率を指します。

完成製品重量÷投入原料重量×100=歩留まり率


例えば、、、
サンドウィッチを作る際、パンの耳は切り落とされてパンが使われます。元々仕入れたパンの重さはもちろん切り落としたので減っています。
200gのステーキ肉を加熱すると水分等が出て当然焼き上がりは200g以下のステーキになります。

つまり、製品製造の過程、原料から完成品になる中で100%が完成品ということは考えにくく、必ず品物が姿や形を変える過程でロス(失うこと)が発生するという理解になります。

食肉業界の特徴として、一般の生活者がよく見るステーキやスライス肉にたどり着くまでに多くの人が関わっています。それは姿、形を変えるタイミングが多くあるということ。つまりその分、歩留まりが発生し、製品の価値は工程が踏まれる毎に上がっていくということになります。

車業界では沢山の部品が足されてそのモノの価値は上がっていきます。製品製造業においてはこのようなプラス産業とも言えよう形の方がイメージは沸きやすいと思います。しかし、食品業界のような製品製造業では元々あったモノが削られてそのモノの価値が上がっていくいわばマイナス産業ともいえるよう形になるわけです。少し特殊な感じです。

・日本のものづくりについて

日本経済を支えてきた日本のものづくり。海外では自動車をはじめとした工業製品。家電製品など、信頼のMADE IN JAPANとして、その伝統的な技術は世界から見ても、評価されています。
食肉業界においても世界に誇る和牛ブランドを確立したりしています。しかし、肉用牛飼養頭数をNZと比較してみると、、

●日本 261万4000頭(2022年2月1日時点)※国土面積377973㎢
●NZ 398万頭(2021年6月末時点)
※国土面積268021㎢

圧倒的に日本の飼養頭数は少なく、畜産資源が乏しいこともわかります。それでも諸外国は日本の畜産物への確かな関心があります。それは先人たちが築き上げてきた、ものづくりの精神が今の日本産という文字を支えていると感じます。


・歩留に対する考え方比較


私が現在働いているのが、生き物からお肉に変わるいわば食肉業界の川上部分になります。
枝肉から骨を除くカット過程。もちろんここでも歩留というのは発生してきます。

日本の牛のカットは1日当たり40頭から50頭していたら非常に多い工場の認識です。
放牧が主体であるNZでは日本ではあまりない、出荷時期に季節性があります。(冬場は牧草が育たなかったりするため)そのため1日当たりのカットは非常に流動的です。しかし先程書いたように飼養頭数からみても日本より圧倒的な量をカットしなくてはいけません。

カットしていく中でそれぞれの国で求められているコト(重要視されているコト)は違うということ。
ここからはあくまで現場に入っての肌感覚での話になります。賛否両論あるかもしれません!


【日本】
・歩留(骨に肉をつけない‼︎)
・深メス(お肉へ傷をつけない‼︎)
・技術者育成(かなりの年月をかける‼︎)

【NZ】
・squareであること(お肉の形)
・スピード(多少の傷は許容範囲)
・持ち場固定(カットは6ヶ月あれば習得)

これに伴い、もちろんカットの仕方が大きく変わります。日本は台の上でまな板を使いカットする方法(テーブルボーニング)一方でNZをはじめとした諸外国では肉が吊るされた状態でカットする方法(ハンガーボーニング、グラビティーボーニング、レールボーニングなど多数呼び方)が一般的です。

畜産資源が少ない日本においてはできる限り無駄のないよう、骨に肉を付けないようカットしていきます。そのためカット歩留まりはかなりざっくりですが75%くらい。(200kgの枝肉からお肉が150kg)
これも肌感覚での話になりますが、諸外国は−10%くらいかなと感じています。(もちろん、差はあります) 
なぜ、ここまで差がでるのかそれは、海外のカットにおいて、重要視されているのがsquare(正方形・整った形)であるということ。
日本のように骨に肉を残さないようにカットすると、もちろん工業製品ではないため形はsquareにはなりません。
私自身、現場で歩留まりを考えてカットしていると綺麗だと褒められた後、せっかく綺麗にカットしたはずがテーブルで真四角に切り落とされました。衝撃映像です笑
やはり尋ねると…

The most important thing is to be square.
実際に現場で説明されました。

squareであることは使いやすさという面で見れば、もちろん間違いではありません!
しみじみ、食肉加工に正解はないと実感させられます。
※squareについてはまた別でnoteに書こうと思います。

とはいえ冒頭で書いた通り、歩留は商売と直結する大切なものです。日本の歩留に関する考え方は世界No.1だと感じます。実際に日本でよく聞くA5などといった牛肉の格付けのA〜Cに相当する部分は歩留基準値から格付けされていきます。諸外国でも格付け(グレーディング)はありますが、そこに歩留を考慮されたものは入っていないことからも、日本がいかに重要視しているかが伝わってきます。

・もったいない精神‼

歩留を向上させようという伝統的な日本の職人さんの考えは、いわば、大切に取り扱う、もったいない精神‼︎ということです。
もったいないという言葉自体が日本発祥みたいです。つくづく日本の文化すごい!と実感させられます。外に出ると当たり前なことが当たり前ではなくなるため、色々考えさせられます。
もったいない!この気持ちは残りの時間を有意義に過ごすためにも必要です。

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