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おいしくいただきました。

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日々の食べた、飲んだ、話した記録を フィクションとエッセイを織り交ぜながら 書いていきたいと思います。
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記事一覧

9. ロング缶一本分の逢瀬。

外出自粛明けの土曜日。 元通りにはほど遠く、 今まで通りよりかは少しだけ柔らかい。 そんな土曜日の過ごし方の最適解をぼんやりと探しつつ、 気が付けば手癖でNetflixを開き、 昨日観たドラマの続きを再生していた。 この自粛期間で、 すっかりだらだらすることを覚えてしまった。 どちらかと言えば、アクティブに動き回るのが好きだったはずなのに。 休日なんかは、もりもり予定を入れるのが好きだったはずなのに。 部屋で過ごすことにも、予定がないことにも、 すっかり心身が順

8. 秘密の二次会。

昨晩、オンライン飲み会をした。 気ごころ知れた友人たちと、4人でだいたい3時間くらい。 不安だとか寂しさだとかストレスだとか、 日々感じているアレコレを、言い合って笑い合って、 時間はあっという間に過ぎていった。 「12時過ぎたし、そろそろ終わりにする?」というひと言が号令となり、 その会はお開きにする流れに。 バイバーイ、またねー、と ひとりまたひとり、回線が切れていく。 ひらひらと手を振り続けていたら、 お開き宣言をした子とふたり、画面上にぽつんと取り残されていた

7. 目標のB面。

いつだったか、新年会をしたときに 「今年の目標は?」と尋ねたら、 今年は恋愛をしない、と答えた友人がいた。 なにそれ、と重ねて尋ねると、 彼女はその年、大殺界のようなものなのだという。 大殺界のようなもの、って大殺界じゃないの?とさらに追及すると、 彼女の信じている占いにおける不運で、 大殺界、のような呼び名が特にないらしかった。 何をしてもダメだって端から分かっているのなら、 この歳でもう不要な痛手を負いたくない、というのが彼女の言い分。 確かに近年、彼女はこと恋愛

6. へこたれる夜、ありがたい夜。

ひととごはんを食べる時間が好きでnoteをはじめるに至ったのだけれど、 基本的に誰かとごはんを食べたって特別なことは起きないし、 毎度楽しいわけじゃない。 最近はひとと会うこともままならず、 回顧ばかりになってしまうのもあれだなあと思いつつ、 更新しないほうがもっとあれだよなあと思うので、 食べものの写真を見ながら、思い出したことを更新している。 (はじめるタイミングの悪さよ…!) 今回は、楽しくなかったときの話。 久しぶりに、学生時代の友人と三人で集まった。 学生当時

5. 第一次いいひと論争。

「いいひとってどんなひと?」 私は「いいひと」と称されて、 嬉しいと思ったことは、あまりない。 そういうひとって案外多いのではと思っているのだけれど、どうだろう。 言われるたびに小さな引っかかりをずっと感じていたので、 最近お気に入りの池尻にある焼き鳥屋さんに行ったときに 友人にふと尋ねてみた。 彼女も私のことを「いいひと」と称するうちの一人だ。 たとえば、 あまり親しくない人の彼氏・旦那の写真を見せられた時に多くの女性が使う、 「わぁ!いいひとそう!」は、 なかんず

4. 未熟な魅力。

THE YELLOW MONKEYの『カナリヤ』という大名曲をご存知だろうか。 初めて聞いたのはそれこそ十九歳とか、 二十歳に届かないくらいの年齢だったように思うのだけれど、 大人になってから聴くと、 『19にもなったのに 悲しみが欲しいのは なぜ?』 という歌詞の未熟さに痺れる。 未熟さは魅力だ。 鍛錬では得られない魅力が、そこにはあると思う。 ちょうど一年くらい前に二十歳の男の子と飲む機会があって、 その子の魅力もまさにそれだった。 ワイン片手に自分がいかに大人か

3. 怒れる女。

彼女は怒っていた。 乾杯をして互いの労をねぎらって、 さて何かすぐに出そうなものでも頼むかあというタイミングから、 すでに絶好調に怒っていた。 聞いてほしい話がある時、 彼女は良い話でも悪い話でも「ちょっと聞いてもらってもいいですか?」と話し出しが敬語になる。 良い話のときは口もとを緩ませながら(とても可愛い)、 悪い話のときは頬をぷくぷくさせながら(これまた可愛い)、敬語になる。 この日は言わずもがな後者だった。 これは長くなるぞと思い、 とりあえず沢庵納豆とブツマ

2. 好きの呪いを甘く解く。

学生の頃に好きだった男の結婚式。 呼ばれた女は過去に彼が好きだった女とわたしだけだった。 彼にとって、わたしは一体なんだったんだろう。 たらふくご馳走を食べて、 おなかはもうはちきれる寸前だったけど、 わたしはわたしを甘やかしたくて寄り道をする。 意味もなく高円寺で途中下車をして、 見たこともない、ぶあついマカロン。 トゥンカロンと言うらしい。 体には悪そうだけど、 今のわたしにはこれが絶対必要な気がした。 引き出物の紙袋の中に投げ込んだ席札がふと目に留まる。 「これ

1. たとえ美味しくなくても。

「おすすめのお店は?」 と聞かれると、困る。 つい、ひとからおすすめされて行ったお店を紹介してしまったりする。 わたしはそこまでグルメではないし、 料理だって出来る方ではないので、 隠し味だとか細かいことになれば、もうさっぱり分からない。 ただただ、楽しく食べることが好き。 だから楽しいと、美味しさに補正がかかってしまう。 何なら美味しくなくても、楽しかったら許せてしまう。 「まずっ!」と笑い合えることが嬉しい。 幸い、「まずっ!」の経験は殆どなく、 「おいしいねぇ、た

0. 「おいしくいただきました。」はじめました。

はじめまして、kieです。 日々の食べた、飲んだ、話した記録を フィクションとエッセイを織り交ぜながら 書いていきたいと思います。 お気に召したら光栄です。 いまいちnoteの使い方が分かっていないので、 ヘンテコなところがあれば、どうかどうか教えてください。 それでは。