古本の書き込みを読んで妄想することが面白い件について、とそのランキング



ぐぐぐですー。

 引きこもりがちな最近のライフスタイル。ストレス発散もかねて、ついついAmazonをぽちってしまう今日この頃です。

 みなさんは中古品てどう思いますかね?メルカリとかが定着してきてそんなに違和感がないと思う人もいれば、私の友達みたいに「どこの誰がゲロ吐いたか分からないものいやだっ」と思う人もいるでしょう。

 私は中古品にそこまで違和感とか不快感とかないです。古着とかも好きです。メンズの服って程よい価格のブランドってそんなないから、人と違う服を買おうとなったら必然的に古着に手が伸びるんですよね。

 古着もそうなのですが、僕は古本をよく買います。新品の本って高いんですよね。服なら新品と古着で劣化があると思うのですが、本は新品と古本の間で、見栄えは良し悪しはあるかもしれませんが、特に内容が変わることはないので古本は買いがちです。Amazonで本を見ていると一番安いものを表示してくれるのでそれをぽちらせていただいております…

 Amazonで本の価格比較をするとき、値段の他に本の状態を表示してくれますよね。シミあり、折れている、カバーはついていないなど。綺麗な本を手に入れたい人にとってはありがたいですね。

 逆に、僕はその中に「書き込みあり」という一文を探してしまいます。書き込みがある本が好きなんですよね。読んでいるとその本の前の読者、私の中で勝手にその本の「前任者」と呼んでいるのですが、書き込みを読んでいると、その前任者の人となりが浮かび上がって来て、前任者はどんな人でこの本をどう読んだのかと思いが馳せられるので楽しみがあります。

 本の書き込みもする人しない人に分かれると思います。綺麗な本に保っておきたい人は付箋を貼るでしょう。読んでいるうちにテンションが上がり、ぴっ、と線を引いてしまう人もいるでしょう。私も後者です。笑 なので、書き込みをしている本に抵抗はなく、むしろ一緒にテンションが上がります。

 本の書き込みを見ると、おっ、この人はここでテンションが上がったんだ、とか、気づかないところにぴしっと線が引いてあると、あ、なるほどそういう着眼点もあるんだな、と思います。同時に、要らないところに線が引いてあると、そこに目が行ってしまい、読書に集中できないこともあります。そこじゃないっ、ちがう、線邪魔っ!うるさい!と思うこともあります。ブックオフとか古本屋なら事前に立ち読みをしてどのような書き込みがしてあるのか分かるのでしょうが、Amazonで書き込みありの古本購入だとどちらに転ぶかは博打ですね。そこもまたワクワクします。

 ということで思い出に残る古本の前任者ランキングぅー。

3位は『状況に埋め込まれた学習 正統的周辺参加』です。

有名な本ですねー。最近読み直しで買いました。一番安くても2000円超しました。学術書たっかい…

 新卒で入社初日からテレワークだと、何か違和感を覚えるんですよね。ずっとメンターから降ってくる仕事をこなしてて、あれ、私今なにしてるんだろ、これって働いてるのかなって。その違和感が無駄にストレスになったりしてる今日この頃、そうだ!これは、テレワークゆえに社内を観察することができず、人間関係も構築されてない状態…共同体内にあるはずの学習資源にテレワーク化ではアクセス出来ていないのだ…会社の実践的共同体に参加できていないのだっ…とくればあの本を読まねばと思い、最近購入しました。いやぁ~ふぁっきん学校教育ばんざい徒弟制ですねぇ。やっぱり出社して学べることって大きいんだろうな、早く出社したいな、と読みながら思い募らせていました。こんな思いを持つのは、この100年でこの年に入社する世代くらいじゃないでしょうか。貴重な体験をさせてもらっているんですかね。

 で、この前任者の方は、最初は控えめなのですが、徐々に徐々にテンションが上がり、線が引かれていきます。そしてとってもきれいな文字で、「(徒弟制の学習者は)全体を見ている!」などメモが増えていき、遂には「アンビバレント」とはどういう意味なのかについてのメモの付箋紙まで登場しました!こういうの古本屋さんは剥がさないんですね…

 徐々に熱が入ってきたのか、あるページでは筆記体の英文が散見されます。どうやら英語の原著ではどう書かれているかを参照し、それをメモしているようです。

 原著に当たるというアカデミックな読みをしている一方で、そこで線引いちゃうの?というところに線が引かれています。受験生みたいに具体名詞ばっかに線が引かれて、それのメカニズムの解説に線が引かれてないんですよね…これは前任者が分かっていないのか、私が分かっていないのかどっちだ…汗 でもアンビバレントの意味の付箋貼る人だもんなあ…英語に明るくないのかな…でも、原著の英文がメモとして書いてあるんだから、英語はできるのかな…

 以上から、私は以下のパターンで妄想しました。①社会人大学生、院生がゼミで本書を読んだ、原著のメモは教授がここが大事というので、それをメモった、②人事系の人が勉強会で読んだ、原著のメモは講師が大事というのでそれをメモった、③実はこの本は2人の手を渡っており、最初は原著と照らして読了した大学院生が所持していた。しかしお金に困り、それが古本屋に流れ、それをこの本の評判を聞いた人事系の社会人の人が購入した。そしてなんだろう、難しいなあと思いながらいっぱい線を引いて読んだ、です。どれなのかは検証しようがないですが、③だとドラマがあってでいいですね。③だといいですね。なぜ大学院生が金に困窮したのかとうどらままで考えるとにやにやしてしまいます。

 2位はいとうせいこうと金子兜太の対談本『他流試合』です。

絶版になっていたので、必然的に古本をAmazonでぽちりました。書き込みありで1400円くらいしました。文芸書も発行数少ないのは値段挙がりますね…お財布きつい…

 この本で驚いたのは蛍光ペンむっちゃひくっ!というところです。前任者の興奮が伝わってきます。黄色の蛍光色のペンで、するすると全部の文に線が引かれていきます。これを見ていると、受験生時代の私の歴史の教科書を思い出します…。結局全文重要じゃんっということで全部に色を塗りたくってましたね。

画像4

 この蛍光ペンの熱量...対談本なんて普通するすると読めるはずですが、蛍光ペンの轢かれた文一つ一つから「大事だぞっっ」と前任者の訴えが聞こえてきます。いや、ちょっとすみません静かにしてください、と思いつつも、そのコミュニケーションもまた書き込み古本の楽しさです。

 また金子兜太が季語に言及している部分に関しての蛍光ペンの塗りたくりがすごいので、きっと前任者はアンチ季語派で、兜太の発言にすごいテンションが上がっていたのでしょう。その思いがひしひしと伝わり、こちらも読むのに熱が入りました。だけどいとうせいこうの発言に線があまり引かれてないのはなんかいとうせいこう好きとして悲しいですね…笑

画像3

 乗るしかないでしょ。この蛍光ペンのビックウェーブに。ということで赤の蛍光ペンを筆箱から探し、前任者とコラボレーションしました。兜太がどこまで考えて「物象感」という言葉を使っているのかよくわかりませんが(むちゃくちゃマルクスが頭によぎるのですが…)、赤線いかせていただきました。

 この圧倒される蛍光ペンの量から察するに、無季俳句を作りたい前任者(勝手におっちゃんを想定)が、そうだっ、そうだよ兜太っ!俺が言いたいことを全部言語化してくれる、さすが兜太だっ!と思いつつ、この本を読んでいったんだろうなあ、と思います。きっとこの前任者は読破した熱量をそのままに俳句の創作活動に勤しんだことでしょう。その後の句会でいい成績を修められたことを願わずにはいられません。


 1位、財テクの本。

これはいわゆる1円本で、送料がその250倍かかるというやつですね。著者が村上龍の『希望の国のエクソダス』のあとがきに言葉を寄せていたので気になって買いました。

 この本には著者のサインが入ってます。時たまあるパターンですが、それ以上に驚いたのは著者と前任者のチェキが同封されていたことでした。これをそのまま売った古本屋さんも古本屋さんですし、チェキを入れたまま売りに出した前任者も前任者ですね…笑 なにがどうなったらチェキ入りの本が売りに出されるのでしょうか…

画像2

 この古本に挟まってたチェキの権利は誰にあるんですかね…。私は、このチェキも一緒に購入したということになるんでしょうか…。プライバシーのことを考え、チェキ画像は伏せますが、いらすとやで再現したらこんな感じです。

キャプチャ

 シュールです…(笑) 

 なぜサンタ?どこで撮ってるの?謎が絶えません…(笑)

 著者のサインには日付と名前に加えて「ゆめ」という文字。この本の購入の際、どのような言葉が著者と前任者の間で交わされたのでしょうか。前任者はどのような「ゆめ」を持ってこの財テク本に関心を持ち、著者のサイン会に臨んだのでしょうか。そしてどのような気持ちでチェキ撮影に挑んだのでしょうか。

 しかもサインの日付は2008年の12月です。リーマンショック後の日付…。そしてリーマンショック後の不安定な経済下での財テクへの船出。前任者が今どこで何をしているのかに思いを馳せずにはいられません。大変素敵な一冊でした。


 以上、個人的に思い出に残る古本の前任者ランキングでした。ここまで読まれた皆様もこういう古本の前任者との出会いあるんじゃないでしょうか。チェキが入っていることはまずないと思うのですが、こうした偶発的な出会いには妄想を掻き立てられます。

 人から聞いた話で一番すてきだなあと思った話があります。ある院生の方が、ある小さな大学附属図書館のニッチなジャンルの昔の本を読んでいると、突如やたら詳細で高度な書き込みと出会ったそうです。読み進めていくと、前任者の書き込みがヒートアップし、遂には、その本の誤っている点をつらつらと列挙するにまで至りました。その学問分野のニッチさ、附属図書館の利用層、その知識量からその方は、ひょっとしたら自身の指導教授が自身と同じ若い院生だった頃に書き込んだものではないかと推察しました。教授に問い合わせてみると、そんなの覚えていない、と言われたものの、その書き込みの筆跡はどこか教授の筆跡と似ているところがあったそうで、その院生は若かりし自分と同年代くらいであったときの教授との邂逅を果たしたような、何とも言えない不思議な感慨があったそうです。

 私もそんな出会いがあったらいいなぁと思います。財テクの1円本をあさっていけばまたあのチェキの方と会えるのでしょうか。もしかしたら、実はもう名を挙げていて、自ら財テクの本を出版しているのかもしれません。そんな妄想をしながら、今回はここでペンを置きたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。