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花を通じて、つながり、つなげる。「旅と花束」 相徳夏輝さん

人の想いに触れることが好きな筆者が、出会った素敵な人たちにインタビューをしていく「oimo」。
読んだあとにほくほくするような記事をお届けしていきます。

今回は、店舗を持たず、旅をしながらそこで出会った人たちと花屋をする「旅と花束」主催の相徳夏輝さんにインタビューしました。

これまで花とは全く関係のないキャリアを歩んできた彼が、花屋を立ち上げた経緯、その想いにせまります。


相徳夏輝
1997年6月25日生まれ。福岡県出身。 大学時代は俳優活動に励み、多くのMVに出演。新卒では宮城県石巻市の水産系の団体に就職し、コンサルタント業に転職。その後、花農家や花屋、葬儀の花飾の仕事を経て、今年2月に「旅と花束」を立ち上げた。

ブックカフェで見つけた自分の「クリエイティブ」

ー本日はよろしくお願いいたします!
相徳さんはこれまで「花」には関係ないキャリアを歩んでいるように見えますが、花業界に興味を持ったきっかけはどのようなものだったのですか?

僕は様々な所で働きましたが、大学時代の俳優活動や母親の仕事の影響もあって、自分で手足を動かして何かの形にする「クリエイティブ」なことがしたいということはずっと考えていました。そこで、まずはクリエイティブなことをしている人たちに会いに行こうと思い、瀬戸内国際芸術祭が行われていた香川県を訪れることにしました。香川県ではダンサーや画家、藍染職人、カメラマンなど本当に多くの職種の人たちに出会うことができました。

ーそこでは花を扱っている人とも出会ったのですか?

いや、花を扱う人と出会ってはいないんですよね。クリエイティブなことをしている人に会うのは楽しかったのですが、同時に自分にはやりたいことが決まっていないという焦り、劣等感を感じました。そこで自分の琴線に触れるものを探すべく、近くのブックカフェに行き、様々なクリエイティブなジャンルが載っている雑誌「BRUTUS」を5年分読み漁りました。

その中で1番ピンときたのが「花」。

花の特集をしているはずなのに、服屋さんやカフェとのコラボ、映画の花屋のシーンなど色んなジャンルの人が出てくる。花を起点に、なにかできるのではないかと可能性を感じました。

ーなぜ色んな人とコラボができるという点に魅力を感じたのですか?

自分は色んな人とコミュニケーションを取りながら、一つのことを作り上げていく過程がすごく好きなんですよね。大学時代にやっていた俳優は、自分ではない他の人になりたいというネガティブな理由で始めたものでしたが、監督やカメラマン、照明など作品に関わる制作者の想いを形にできることにやりがいを感じていました。なので仕事でも様々な人と関わりながら、一緒に作り上げたいと考えていました。

一次産業から三次産業、日本から世界。様々な角度から花業界を見る

ー香川で花に興味を持ってからは、どのような動きをされたのですか?

まずは生産の現場を見てみようと、2ヶ月半くらい宮崎県のカーネーション農家で働きました。毎日慎重に水や肥料をあげたり、枯葉をとったりと、花屋で働いてはなかなか感じることができないことも経験できましたね。

ー花屋ではなく、農家で働くことを選んだことに驚きました。なぜそのような選択をしたのですか?

僕は、一次産業から世界を見るということが重要だと感じています。就活時代、最初は周りと同じように、誰もが知っているような大企業を中心に受けていました。しかし思うようにいかず、気分転換をするための旅で見たのが、秋田の田園風景でした。そのときにふと「社会は一次産業から回っている、一次産業のことを知らないと社会のことを知ったとは言えないのでは」と思ったんですよね(笑)そこで、農家や漁師を訪ね、結果的に水産業に関わる団体に就職しました。一次産業から世界を見るというのは面白かったですし、自分の中で重要なものとなりました。なので、花の世界に入りたいとなったときには、まずは花が育つ現場から見てみようと農家で働くことを決めました。

ー農家で働いた後はどうしたのですか?

東京に戻って、今度は二次産業である市場、三次産業である花屋を1ヶ月ほどかけて巡りました。最初は泥臭い現場仕事から始まる花ですが、最後は育てられた花をいかに美しく彩るかという芸術的な仕事になっている。同じ花でも関わるフェーズによって全然違うのが、とても面白かったです。

また日本で花業界を一通り見たことで、日本だけでなく世界を見てみたいと思うようになりました。そこで思い切って、花文化が盛んなフランス・パリへ行くことを決めました。

ーパリではどのようなことを経験しましたか?

東京にいた時と同じように、色んな方の繋がりをもとに市場や花屋を訪れました。パリはやはり日本よりも花のマーケットが大きいです。市場の規模も、花屋で売っている花の量も全く違いましたね。

また、オランダやドイツといった他のヨーロッパの国の花屋も見て周りました。その中で感じたのは花は世界共通言語であるということ。生活を彩り、大切な人に気持ちを伝えるために花を使うということには国や地域の差がないということです。

ーフランスから帰国した後は、花屋で働かれたのですよね?

ちょうど花の市場で知り合った方が花屋の開業をされるとのことで、そこの立ち上げに携わりました。花屋の立ち上げを経験できたというのは非常に大きかったですね。最初は壁の色塗りもやっていました(笑)

花束を通して自分を表現する

ーそこからなぜ独立されたのでしょうか。

花屋の立ち上げ自体は非常に楽しかったのですが、自分の中で、もっと花に触れたい、自分の感性で花を選びたいという思いが強くなっていることに気づきました。その時、やはり自分がやりたいことを実現するには、独立するしかないかなと思ったんです。

ーそして「旅と花束」の活動がスタートしたのですね。ではここからは、その活動についてお聞きしたいと思います。まずは、旅と花束の概要、実現したいことを教えてください。

「旅と花束」は旅をする中で出会った人と一緒につくる、店舗を持たない花屋です。旅の先々で出会った人と、その場所で感じたことを花束を通して表現していきます。

旅と花束を通して実現したいことは、3つあります。1つ目は壁を壊すこと。地方と都会、日本と海外、現実とデジタルなど、世の中には色んな壁がありますが、自分が動くことで少しでもその壁を壊したいと考えています。その場所、その環境にはそれぞれの良さがありますよね。でもみんなその良さというものはその場所でしか感じられないと無意識に「壁」を作っていると思うんです。なので僕は自分が動き、様々な人とコラボすることによってその壁を壊したい。これは日本、世界を色々回ったからこそ生まれた想いだと思います。

2つ目はコラボをすること。スタイルもその時々で変えながら、出会った人と一緒に「花屋をしていく」ことで、色んな人、仕事、場所の可能性を引き出したいです。

3つ目は表現をすること。今までは自分のやりたいことや想いを発したいとは思いつつも、他人の目を気にしてできないということがありました。しかし25歳になって、ある種余計なプライドが取れてきて、それが遠慮なくできるようになってきたように感じます。これからは花束を通して、自分のやりたいことや想いを存分に表現していきたいと考えています。

ー屋号は「旅と花束」。これはどのように決めたのでしょうか?

最初は「旅する花屋 相徳夏輝」にしようと思っていたんです。しかし、イベントの主催者の方に「長いな。」と言われてしまって、、(笑)そこで原点に帰ろうと、再びBRUTUS「花と花束」を手に取りました。そのときにイヤホンから流れてきたのは、キノコ帝国の「海と花束」。この二つに引っ張られて、「旅と花束」にすることを決めました。今ではとても気に入っています。

ー「旅と花束」を始めて、既にイベントに出展しているそうですね。実際にやられてみてどうですか?

オペレーションなどの課題はありつつも、「自分がやりたかったのはこういうこと!」という確信を得ることができています。「花があるだけでイベントが彩るね」と言ってもらえたり、実際にお客さんに買ってもらえたり、イベントを通じてまた新しい人と繋がれたり。これから旅に出て色んな土地でやっていくことが楽しみで仕方ないです。

ー最後にお客さんへのメッセージをお願いします!

「旅と花束」は文字通り主催の私が旅をしながら、行く先々で出会う人とコラボをして作り上げていく花屋です。皆さんの大事な時間や空間を少しでも彩ることができればと考えていますので、お客さんとして花を見に来てくれるのはもちろん、共に花屋を作り上げてくれる人も大歓迎です!
ちなみに、「ここに来て欲しい!」「このイベント出て欲しい!」というご要望があればSNSを通してご連絡いただけると嬉しいです。
私はどこへでも会いに行きます!!!

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