相徳 夏輝【フローリスト/現在闘病中(悪性リンパ腫)】

27歳の♂ ※7月より悪性リンパ腫が発覚。 主に闘病中の記録を記しています。

相徳 夏輝【フローリスト/現在闘病中(悪性リンパ腫)】

27歳の♂ ※7月より悪性リンパ腫が発覚。 主に闘病中の記録を記しています。

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最近の記事

いつか、誰かのために”残す”こと。

27歳で癌が発覚したとき、最も不安を感じたのは、情報の少なさであった。 病名に関する文献や記事は溢れているが、そもそも癌になる割合は高齢者が多いため、症例が若者に合致しないケースも多い。また、実際に体験した人の声も少なく、だからこそと言うべきか、いつか、誰かが残してくれた闘病体験との出会いが、心を救ってくれることがあった。どのような治療をしたのか、抗がん剤の副作用について、社会復帰後の生活は?などなど。熱を帯びた同世代の叫びが、私に病気に対する覚悟を抱かせてくれた。 先日

    • 【悪性リンパ腫・闘病記⑩】飽き、の話

      朝起きると陰毛が全て抜け落ちていました。 あ、そこから抜ける感じ?? と、驚きを隠せません。でも、デリケートゾーンが蒸れなくなって爽快な気分です。髪の毛は若干抜け始めていますが、まだ気になるほどではないです。ニキビを一つ潰しました。今日は2024年9月15日。朝は鮭のおにぎりを食べました。 「飽き」と言うものは時に残酷で、時に慈悲に溢れています。色々なことに飽きました。元来飽きっぽい性分ですが、何か今後の人生に通ずるような体験だと思ったので語りたいと思います。 まず、

      • 【悪性リンパ腫・闘病記⑨】抗がん剤スタート

        -前回の記事はこちら- ・・・ 入院から2週間が経過したが、同世代らしき年齢の患者の姿を見たことがない。若くても癌になる人はいるが、それがとても珍しいことだと痛感させられる。当たり前だが、高齢者の割合が圧倒的に多い。 だからこそ、と言うべきか、高齢者の方々の苦しい姿を見ることはとても辛い。夜中に吐き気を催してトイレに行くと、隣に寝ているおじいちゃんが、痩せた身体を全力でさらに絞るように嘔吐をしていた。別の日には、掠れた呻き声が静かな病室に響いた。長く生きていればそれだけ

        • 海が好きな話

          時刻は18時。1日の中で、最も好きな時間だ。ベッドから起き上がり、病室を出て、面会所まで歩く。おっと、紙コップを忘れずに。面会所では無料で温かいお茶が飲めるから。 11階建ての病院の最上階。大きな窓の外には、博多湾が広がっている。どこか温もりを感じる優しく光る夕陽が波打つ海面に反射する様子は、まるで絵の具が溶け出しているよう。キラキラ光っている。海の先には故郷の街が見える。お茶を飲みながらほっと一息。私は、海が好きだ。 小学2年生のとき、海がとても近い街に引っ越した。この

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        • 悪性リンパ腫・闘病記
          8本
        • 花農家での修行記
          2本
        • 花農家で研修をした話
          39本

        記事

          【悪性リンパ腫・闘病記⑧】骨髄生検-結果にコミットする-

          -前回の記事はこちら- ・・・ 約1か月前に発見されたときよりも、腫瘍は1.5倍ほどの大きさに成長していた。CT検査で撮影した腫瘍の現状を確認したが、形も三角形から楕円に変わっていた。そして、気管支の形が少し潰れていることも。素人でも状況の悪さが理解できた。 また、生検手術の結果「悪性リンパ腫」と診断がついた。血液中のリンパ球が癌化する病気で、若者で罹患する人もそれなりに多いらしい。これで紛れもなく癌に罹っていることが確定した。不安と恐怖を改めて感じた。 「まずステロ

          【悪性リンパ腫・闘病記⑧】骨髄生検-結果にコミットする-

          【悪性リンパ腫・闘病記⑦】嫉妬に狂った愛犬 VS 恐竜になった私

          -前回の記事はこちら- ・・・ 「うゔぉぉぉぉぉぉぉん!!!!」 「ゔぇっふぇっふぇふぇ!!!!」 「ぐぎゃあああああああ!!!!」 なんて、とても言葉で表現できない呻き声を発している。咳をすればその勢いの強さに身体中が緊張し、咳を我慢すれば私の身体は最大出力の音量で、制御することなく叫び声をあげる。苦しい、息をすることができない。 腫瘍の検査のために全身麻酔手術を終えた私は、1週間の入院を経て退院。検査結果が出るまでの10日間は自宅療養となった。術後の後遺症で空咳

          【悪性リンパ腫・闘病記⑦】嫉妬に狂った愛犬 VS 恐竜になった私

          【悪性リンパ腫・闘病記⑥】ただシャワーが気持ちいいって話

          ・・・ 食欲・性欲・睡眠欲 人間の三代欲求にもう1つ足すとするならば? 私は迷わず「衛生欲」と答えるだろう。 身体から管が抜かれ、まずできるようになったのは着替えとシーツの交換。温かいタオルで身体のベタつきを拭いた時、皮膚の全細胞が温泉に使ったような感嘆の声を上げ、あまりの気持ちよさに昇天しそうになった。汚れたパジャマとシーツを交換してもらい、悪臭とおさらば。そして、コップの入った水を一杯。2日ぶりに水分が喉を通過した。あまりに勢いをつけて飲んだので咽せた。咳をするた

          【悪性リンパ腫・闘病記⑥】ただシャワーが気持ちいいって話

          【悪性リンパ腫・闘病記⑤】痛みと異臭とイビキがうるさいおじいちゃん-時の流れの話-

          -前回の記事はこちら- ・・・ 「Dr.STONE」という漫画が好きだ。ある日、謎の現象により世界中の全人類が石化してしまう。それから約3700年後、奇跡的に石化を解かれた天才高校生・石神千空が、文明が無くなってしまった世界で、科学の力を用いて石化の謎を解き明かす物語。千空は頭にたたき込んできた科学の知識を総動員し、火薬や鉄、ラーメン、発電機などを次々に発明していく。読むだけで科学の知識が深まる、知的好奇心を存分に満たしてくれる作品だ。 全身麻酔が解けた私は身体中を管で

          【悪性リンパ腫・闘病記⑤】痛みと異臭とイビキがうるさいおじいちゃん-時の流れの話-

          【悪性リンパ腫・闘病記④】部分麻酔で胸を貫くか、全身麻酔で脇を貫くか。

          -前回の記事はこちら- ・・・ 「胸部に部分麻酔を当てて、針を刺します。約1mmくらい腫瘍が取れます。全身麻酔に比べて身体への負担が少ないのがメリットです。リスクとしては、取れる腫瘍の量が少ないので鑑別がつかない可能性があること、あと、万が一刺す位置がズレて心臓に刺さったら…ヤバいことですかね」 いやいやいやいや、怖い怖い怖い怖い。 腫瘍の正体を確かめるために実際に腫瘍を少しだけ摘出する「生検手術」。てっきり全身麻酔で行われると思っていた私はまさかの提案に驚きを隠せず

          【悪性リンパ腫・闘病記④】部分麻酔で胸を貫くか、全身麻酔で脇を貫くか。

          【悪性リンパ腫・闘病記③】なんでもメンタルのせいにするのはよくないよ。

          -前回の記事はこちら- ・・・ MRI検査とPET検査の結果、腫瘍が転移してる可能性を示唆され、さらに2つの病気を疑われた。「悪性リンパ腫」と「胚細胞腫瘍」である。悪性リンパ腫は血液中のリンパ球が癌化する病気で、胚細胞腫瘍は生殖細胞が癌化する病気。両者は全く別の病気なため、治療法が異なる。故に、実際に腫瘍を摘出して検査する必要があると言われた。 全身麻酔の手術に付随する入院に加え、いずれにしろ癌なので長期の治療が必要となる。それを長野で行うのか、地元の福岡で行うのか、判

          【悪性リンパ腫・闘病記③】なんでもメンタルのせいにするのはよくないよ。

          【悪性リンパ腫・闘病記②】期待なんてするもんじゃないね。

          -前回の記事はこちら- ・・・ 「腫瘍(しゅよう)」 聞くのも読むのも気分が悪くなる単語である。まず音の響き。「しゅ」って発音がもう嫌だ。なんかムニっとしてて、熱くて、ドロドロしてそうな雰囲気を感じる。漢字を見ても絶望感しか無い。事実を伝えられたとき、「なるほど…これが全身の血の気が引くってことか。」なんて、一周回って自分の体の変化に冷静になった。自我と身体の乖離ってやつかな。  「結構、状況はヤバい感じですか?(キリッ)」 いかにもスマートを装って先生に問いた。そ

          【悪性リンパ腫・闘病記②】期待なんてするもんじゃないね。

          【悪性リンパ腫・闘病記①】偶然の腫瘍発覚

          悪性リンパ腫という血液癌が発覚した私は、地元の大学病院で治療を行っている。親戚に癌に罹った人はいないので、癌保険を勧められたときも「まだ罹らないだろうから入りません!」と威勢よく断った。26歳の夏。私はまだまだ若いのよ!! あれから一年後、27歳になった私の胸に約8センチの腫瘍が発覚したのは、必然のようで偶然のような出来事からだった。あまり重い雰囲気な文章にしたくないので、皮肉的、ときにチャーミングに闘病記を綴ろうと思う。あまり肩肘張らずに読んで欲しい。そして、同じ病気に罹

          【悪性リンパ腫・闘病記①】偶然の腫瘍発覚

          福岡が元気な話。

          ・・・ 検査が続いて病院通いに早くも辟易しながらも、幸いにも食欲はある。だから、福岡に帰ってからは沢山ご飯を食べている。2年ぶりの帰省、前に来たのは祖父の葬式で、全然ゆっくりできなかったから記憶があまり無い。 空港に着いて最初に思ったのは「ラーメンが食べたい」であった。無添加食品にハマっている母からすれば忌むべき食べ物かもしれないが、ラーメンを食べることで害される健康よりも食後の多幸感の方が身体に良いはずと言って説き伏せた。麺の硬さはバリカタ一択。もちろん替え玉も忘れない。

          【Vol.02】見える景色が全く違う

          花屋とは見える景色が全く変わりました。 花屋は、どちらかというと矢印が常にお客様に向いてます。「どんな色が好きなんだろう?」「贈る人はどんな気持ちなのかな?」と、人の心を常に読み、考える仕事だなと思います。 同じ花を扱う仕事で、本質的には同じなのかもしれませんが、花農家は矢印は常に「花」に向いています。この花を育てるためにはどんな土壌で、どんな世話が必要なのか。毎回成長の経過を一株ずつ観察しては、異常がないかを調べたり。あと、「花屋」にも矢印が向いている仕事だとも感じまし

          【Vol.01】ディープな花屋にならないかい?

          「究極な花束を作る」 それは、物語と時間が込められている。 受け取った瞬間、自然とのつながりや自らの生を感じられる。 その答えを探す旅が始まったな、と思う。 ・・・ 「花と向き合うために、花を育てよう。だってここは長野県だから!」 馬酔木の大群集を見た私は、さっそく花農家さんを探すことにした。市役所の農林課を訪れ、「新規就農がしたいです!」「花農家さんはいらっしゃいますか?」と単刀直入に聞き、担当者と話をした。とても盛り上がったが、私が住む街には専任の花農家さんは残念

          【Vol.01】ディープな花屋にならないかい?

          【Vol.0】 思ったより花が好きみたいです。

          2年前、人や社会とのつながり方がわからなくなった。何もかもが怖くて、何に対しても過敏な時期を過ごしていた時、とあるブックカフェで開いた雑誌で花が特集されていた。色鮮やかで、自由で、ふわふわしていて、それは人間と自然の境界線を超えた作品のように思えた。私の心を確かに揺さぶったそれは、もう一度社会と接続するための助けになった。食べられないし、絶対にいつか枯れる。生存に絶対的に必要ではないに関わらず、世界中で生産され、流通し、そしてそのほとんどが誰かに想いを伝えたり、人を癒すために

          【Vol.0】 思ったより花が好きみたいです。