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流産後、夫との関係性の変化

こちらは前回からの続きです。

流産後、悲しみ続ける私と日常に戻っていく夫。その温度差が苦しく、私は夫にそっけない態度を取り続けてしまいました。

結局、私から夫に話し合いを持ち掛け、腹を割って話せたのは、冷戦状態に陥って10日ほど経った後のことでした。

夫の気持ちを聞くのが怖かった

話し合いの口火を切った私が最初に尋ねたのが、「赤ちゃんがいなくなっちゃったこと、あなたは悲しかった?」という問いです。

この一言を尋ねる勇気を出すのに、何日も何日もかけてしまいました。この問いに対する夫の答えを聞くことが、当時の私はとても怖かったのです。

何故か。

私は流産後、夫がすぐに気持ちを切り替えて過ごしていることに対し、「二人の間に来てくれた命なのになぜ」という気持ちを募らせていました。

夫の気持ちを聞くことで、その返答次第では、(あぁやっぱり夫の悲しみはその程度だったんだ…)と、自分が夫に対して絶望することを恐れていました

一方で、この質問に対する夫の本音を聞かない限り、夫に対するわだかまりは消えないだろうとも感じていました。

夫の真意とようやく話せた本音

私の問いに対する夫の返答は、

「もちろん悲しかった。でも、初期の流産は結構な確率で起こり得ると聞いていたから、心づもりがあった分、ショックは少なかったのかもしれない。」
というものでした。

そして、
「そうなってしまったからには、いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないし、楽しい予定を立てようと思った。スノボやクリスマスの話を頻繁に出したのは、励まそうとしていた」
と続けました。

正直、それを聞いてすぐに「そっか…それなのに怒ってごめん」などと言えた訳ではありません。(もっと悲しんでよ…)という気持ちは変わらずありました。

ただ、夫の真意を聞いたことで、私の方も、ようやく自分の本音を打ち明けることができました。

自分がまだ悲しみを乗り換えられずにいること、今もまだ毎日泣いていること、仕事で平静を装うのが辛いこと、一人ぼっちで苦しんでいる感じがすること、何事もなく妊娠出産がうまくいった人に対してどす黒い感情を抱いてしまうこと…。

こうしたぐちゃぐちゃな感情を抱え続けていて、どう乗り越えれば良いのか自分でも分からない状況にあることを話しました。

すると、それを夫に伝えた途端、自分の気持ちがふっと楽になったのです。

それは(やっと話せた…!)という安堵に近いものでした。

自分の本音を話すことが怖かった


話し合う前、私は「夫の本音を聞くこと」が怖いのだと思っていました。

しかし実際は、「自分の本音を話すこと」も同じくらい怖かったのだと気付きました。

自分の苦しい胸の内を話したときに、夫が同じ気持ちではなかったら、(なんで私だけ…)という感情がさらに膨らむことを恐れていたのだと思います。

ただ、話しているうちに、自分と同じように悲しんで欲しい、苦しんで欲しいと思うのは、自分のエゴなのかなと思うようにもなりました。

体の違和感や不調を通じ、お腹に宿った命を実際に感じていた私と、エコー写真を見ただけの夫では、「赤ちゃんができた」という事実に対する認識や感じ方は違って当然です。

また、流産手術後の「赤ちゃんがいなくなってしまった」事実も、私は体調の変化や痛みで実感していましたが、夫は私からその様子を聞くだけです。

私の気持ちや苦しさを、夫に全く同じように感じてもらうことなど不可能でしょう。そして、私自身も、夫に対して本当に求めていたことはそれではなかったように思います。

それよりも、私が一番求めていたのは、自分の苦しさを聞いてもらうことでした。他の誰にも言えない、どう乗り越えれば良いのか自分でも分からないことだからこそ、夫に聞いて欲しく、その辛さに寄り添って欲しかったのです。

それを自分が話せていないことで、「私はこんなに苦しいのに分かってもらえていない」と、と怒りを増幅させてしまっていたように思います。

夫との関係性の変化

私が夫に対してすべきだったのは、自分と同じように感じてもらうことを期待することではなく、自分の感情や気持ちを言葉で伝えることでした。

考えてみると、私はその時まで、悩みや愚痴を夫に話す習慣がありませんでした。そういったことは友人や家族(親や妹)に聞いてもらえば良いや、と思っていた節もあります。

しかし今回の流産に関する苦しさは、友人や家族には話せませんでした。誰にも話せず一人で苦しんでいた訳ですが、本来は、その苦しさを真っ先に話すべき相手は夫だったのです。

抱えていた苦しさを夫に話せたことで、ようやく私は夫に対して再び心を開けるようになりました。そして、この話し合いが私にとっては流産後の苦しみから抜け出すターニングポイントにもなりました。この日を境に、徐々に涙することが減り、夫婦二人の時間をもっと楽しもう、と前を向けるようになったのです。

流産の経験で得たものがあるとすれば、期せずして夫との関係性が深化した点です。恋人気分の延長のまま結婚生活を送っていた私でしたが、流産を機に勃発した夫婦間のすれ違いと話し合いを経て、夫が他の誰にも話せない心の内を話せる相手となりました。

今回は私が夫に支えてもらう、寄り添ってもらう側でしたが、夫婦になるというのは、何かあればこうして二人で一緒に乗り越えていく、ということなのかな…と感じています。

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