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"研究者・スタートアップ起業家"名古屋大学 宇治原徹教授が見据える未来 :OICXnights#8 開催レポート

こんにちは!こちらはOICXイベント企画チームの中西です。今回は2024年6月25(火)に開催された「OICXnights#8」のイベントレポートをお届けします!


OICXnightsとは?

大学発学生ベンチャーで100億の時価総額を生み出した伝説のスタートアップ拠点OICXとそのOB達は、次なるステージ「東海発グローバルベンチャー」へ挑戦を続けています。これを応援するために、世界を舞台に活躍する著名な起業家・投資家・経営者・科学者をお招きして、OICXメンバーと交流を行う、OICX nights を開催しています。

6月25日に開催された第8回では、名古屋大学 ディープテック・シリアルイノベーションセンター ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長の宇治原徹先生にご登壇いただきました。

宇治原先生が取り組んでいること

研究者やスタートアップ経営者など、多くの肩書きを持つ宇治原先生。改めて、ご自身が今取り組まれていることについてご説明いただきました。

①研究活動

2000年に京都大学で博士号を取得されたのち、2004年に名古屋大学大学院工学研究科結晶材料工学専攻の助教授を経て、2010年に名古屋大学大学院工学研究科マテリアル理工学専攻の教授に就任されました。

材料工学(マテリアルサイエンス)の研究者で専門は結晶成長。名古屋大学では未来材料研究所でノーベル賞を取った天野先生らと一緒に、省エネとか半導体に関する研究を行っています。実は『予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」』(登録者115万人)というYouTuberの動画に出演したこともあります。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=bcOz7R6o6Gw  

②スタートアップ経営

株式会社U-MAPアイクリスタル株式会社株式会社UJ-Crystalの3社を経営をされている宇治原先生。それぞれの創業背景と事業内容をご紹介いただきました。

1. 株式会社U-MAP

1社目、2016年12月に創業。やっていることは「セラミックス」の開発。いろんな電化製品から効率よく熱を取る素材を作っています。例えばコンピュータサーバーの電気代の半分は、発熱を抑えるためのクーラーに使われている。そういった電子機器の熱問題の解決に取り組んでいます。

2. アイクリスタル株式会社

半導体はものすごくたくさんの工程を経て作られます。完成までに要する時間は2ヶ月ぐらい。それを人間が試行錯誤して作っていくと、とんでもない時間がかかってしまう。そこで、コンピューターを使って開発・量産プロセスを最適化するサービスを提供しています。

3. 株式会社UJ-Crystal

SiC(シリコンカーバイド)の開発を行っています。たとえばSiCは、電気自動車の電池の使用効率をよくすることができる。ただ、SiCは全世界で大競争が起きていて、安く高品質なものを作る企業も出てきている。そんな中、我々はP型のSiCに注目しています。P型のSiCは送電を変えることができる。たとえば洋上変電所、一棟で1,500億円かかります。我々のP型の材料を使えば費用を1/10に抑えることができる。

③アントレプレナーシップ教育

名古屋大学が2023年に設立したディープテック・シリアルイノベーションセンター(*以下Dセンター)。そのセンター長を務める宇治原先生に、Dセンターが行うアントレプレナーシップ教育についてご説明いただきました。

従来のアントレプレナーシップ教育との違いは、「起業したいかどうかもわからない人に向けたもの」という点。必ずしもビジネスにつながるわけではないが、何かやりたいこと・何か興味があることを見つけられるようにしたい。

トークセッション

トークセッションの様子

トークセッションでは、以下3つのトークテーマについて宇治原先生のお考えを伺いました。

①研究者のスタートアップ経営について

Q. 宇治原先生はスタートアップの経営に深く関わっている。中には、研究者はサポーティブな立場で関わった方が良いという意見もあると思いますが、その点についてどう考えていますか?

本当はサポーティブでいいと思う。ただ魔の川・死の谷・ダーウィンの海(*1)を誰かに託して乗り越えられるかわからないし、自分でやっても乗り越えられるかわからない。それなら自分がどこまで行けるかギリギリまでやってみようと思っています。

*1:魔の川=研究〜製品開発における難所、死の谷=製品開発〜事業化における難所、ダーウィンの海=事業化〜市場化における難所

②テクノロジー・スタートアップを大きく成功させるためには?

Q. 研究開発型のスタートアップが取るべき出口戦略についてどう考えているか?日本の場合、100億円を超えるような大型のVC資金調達が難しい。ゆえに大企業と共に一気に成長する選択肢(M&A)を取ることで技術の社会実装をより早く、大きな規模でできるのではないかという意見もある。その点についてどう考えていますか?

出口戦略なんてもんはおかしな話で、個人的には最後まで成功するにはどうすれば良いかしか考えていないです。それがM&Aだろうと資金調達であろうとIPOだろうとなんでもいい。目指すべきゴールに対して課題があって、課題を乗り越えるためにどうすれば良いか日々考えてやってるだけですね。

③大学生・大学院生が自身の研究領域で起業する人を増やすには?

Q. 宇治原先生はまさに自身の研究領域でスタートアップを立ち上げられてる。大学生や大学院生が同じように自分が研究していることで起業するにはどうすれば良いと思いますか?

自分の研究に価値があることに気づくチャンスが必要だと思います。うちの研究室にいる学生もそうだと思うけど、自分の研究領域で勝てるとみんな思ってない。U-MAP(1社目)を創業した時もそうでした。最初は実験が失敗して、ごみのようなものばかりが出来てしまった。しかし、とある企業の人との意見交換の中で初めてそれが"価値あるもの"だと気づきました。

トークセッションは、宇治原先生の研究や経営に関する考え方を知ることができる貴重な機会になりました。

その後のQ&Aセッションでは、宇治原先生が取り組んでいることやトークテーマに関して、参加者の方からたくさんの質問が出ました。

Q&Aセッション

Q&Aセッションの様子

Q. 宇治原先生にとっての成功とは?

大成功は自分たちが作ったSiCで、世の中の電力が下げられること。プチ成功は少なくとも誰かに価値があると思って使ってもらえることです。

Q. アントレプレナーシップ教育の何が重要なのか?

どうやってモチベーションを持って生きていくか、自分のやりたいことをどうやって見つけるかということを教えています。名古屋大学の学生が、みんな夢があって希望に満ち溢れている状態が理想です。

上記以外にも質問が飛び交い、大盛り上がりのイベントとなりました。ご登壇いただいた宇治原先生、イベントにご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

宇治原先生と参加者の皆様


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