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ある男

ある男がいた。

がむしゃらに働き、財を成した。

誰からも尊敬される、いい男だった。

ある男がいた。

守ってきたはずの家族に裏切られた。

今でも長男は許さない。

男は唱えている。

南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経

ああなったらおしまいだ、と白い目を向けられながら。

ああまでなって、生きたくない、と。

耳のある者は聞きなさい、と言った人がいた。

彼には耳があるだろうか。

男は呻いている。

何もかも、わからないのだと。

わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。

わたしの言葉は届かない。

彼の言葉は届くのだろうか。


男は、死んだ。

さて、彼は今、どこにいるのでしょうか。


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