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「妻恋こみ坂の景」−桜の風で臭いを吹き飛ばしてくれ!–『江戸名所道戯尽』

今日は綺麗な虹を見ることが出来ました。
家の目と鼻の先にある大きなマンションを跨ぐように何も遮るものもなく綺麗な半円を描いていました。

突然雨が降り出して、終わったら日が出て、太陽に向き合うように虹が出ていたので色も濃く、曇り空を背景に非常に非現実的な光景でした。

いつもTwitterやインスタで「にじ!」という写真が回ってくることがあった時にそれに対して「あー、確かにー」と感情は何も生まれないのですが、実物を見ると非常に感動します。
写真いっぱい撮りましたもん。
それをあげたくなる気持ちもよくわかりました。

(不謹慎だけど)雷が鳴っているのも好きなのですが、雨上がりの光景も空を見るのも好きかもしれません。

そんな純粋に嬉しくなった今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』「二十八 妻恋こみ坂の景」です。

◼️ファーストインプレッション

結構急な角度の階段の踊り場で3人の男性が鼻を摘んでくすくす笑っています。
奥の小屋の中にいる人は真剣な面持ちですので、この男性に対して笑っているのかもしれません。
張り紙に「あけばなし たれかけ無用」と書かれていて、意味はちゃんとわかりませんが、多分お手洗い、、?
おそらく大の方をしているからこうして付き人たちは鼻を摘んでいるのでしょうね。

その光景を見ている階段を登っている途中の女性もちょっと笑っています。「主人に気づかれないようにね、、笑」みたいな笑いでしょう。

桜が咲いて、花びらが散っている光景がとても美しい状況ですが、それと反比例するくらい描くに値しない光景を重ねている、広景はこういう光景を描くのが好きですね、、。笑

こうして主人がいぬ間に憂さ晴らしをしているあたり、結構主従関係のバランスは勝手に取れているんだなと思えますね。
主人のプライドのためにも、この花びらを散らせている風が汚物臭を吹き飛ばしてくれることを祈ります、、笑

◼️浮世絵×トイレ

実は今回の絵は種本がるみたいで、参考にしている日野原健司さんの『ヘンな浮世絵 歌川広景のお笑い江戸名所』でも指摘がされています。

それがこちら。

葛飾北斎『北斎漫画』の「十二編 屎別所」です。
人の顔も持ち物も、姿勢もほとんど同じですね。
張り紙も同じです。

しかし少しだけ違う点は、付き人たちの顔が困り果てていること。広景の絵には無い緊張感が漂っています。
本当に臭いんだなと感じます。
広景の絵では全員目尻が下がっているし、口も広角が上がっている。
そこでちょっと個性を出してきましたね。


何度かお世話になっている「江戸ガイド」というサイトに江戸のトイレ事情について詳しく書かれています。
当時の糞尿は売り物として非常に大事な資源だったのですね。
以前見に行ったミュージカルの『衛生』という古田新太さん、尾上右近さん主演のものも、彼ら二人の役が下肥の汲み取り業者だったという設定でした。

下肥を回収してそれを肥料にするという江戸時代の循環型社会は踏襲するべきものであると考える一方で、現代には適応しないだろうなと感じます。

引用したい『滑稽臍栗毛』という作品にある汲み取り業者の絵があったのですが、国立国会図書館でも著作権の関係で見られないので「江戸ガイド」さんのサイトに行ってみてくだい。


とはいえ調べてみてもトイレが描かれた絵というのが流石に無いですね、、。
唯一見つけられたのが日本国語大辞典の挿絵。

雪隠〈守貞漫稿〉
二つの部屋になっていて、大小で分かれているのかな?それとも男女でなのか?
ヒバコというのが感じで当てはめると、肥箱かな。
ここに排出物を入れて、という感じだと思うので、その下から汲み取ることができるようになっているのかな。

このようなおトイレが用意されるまでは道端にどこかも構わずおトイレをしていたみたいです。
こうして整備されて、それが商売になって、道も綺麗になる。
とても良い循環が生まれていることがわかります。

デメリットとしたら、そこに排泄物が溜まるので感染症など、細菌の繁殖は著しかったことは想像できます。

雨の日とか最悪ですね。

ジムで、トイレ清掃もするのでよくわかりますが、一日清掃しないだけで不特定多数の人が使うトイレは一気に汚くなる。
コンビニトイレとか想像すると簡単かもしれません。

不特定多数の人が使うトイレは現代の綺麗な陶器でも汚れが顕著なのに、江戸時代の雪隠は相当不衛生だったんだろうな考えられます。

今回の広景の絵に描かれる主人はしっかりと整った服装で、刀を日本も携えていて、何か大事な用事があったのかと思われますが、緊急だったのでしょう。

不衛生なところに足を踏み入れないといけないほど、どうしようもなかったことがよくわかり、非常に同情してしまいます、、。

彼のプライドがズタズタになる前にここで今日は終わり!

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