見出し画像

地域で楽しく過ごすためのゼミ 11月 2/2

前回の記事につづき二人目の要約です。

〈以下要約(渡辺分)〉

〈本の選定理由〉

特になし

〈本の紹介〉

本書の主なテーマは、タイトルの通り「人が集まる場所をつくる」ことである。街づくりにおける最重要課題を人集めと設定し、いかにしてそれを可能ならしめるかを議論する。筆者がこの議論において重視するのが、「地域の魅力」と、その魅力を発揮できる場所としての「サードプレイス」である。本書ではこの2つを援用しつつ、作者の考える人集めの方法を提示する。(160文字)

〈論旨の展開〉

第1章─問題提起とその解決に必要なモノ(中長期ビジョン)の提示
第2章─中長期ビジョンを考えるためのヒント(地域の魅力と生活感バランス)の提示
第3章─中長期ビジョンの参考となりうる、サードプレイスという考え方の提示
第4章─サードプレイスが街づくりに及ぼす効用の提示
第5章─筆者がこれまでにサードプレイス的街づくりを念頭に手掛けた実例
第6章─これまでの議論から外れた内容─主に観光立国と街づくりの関係性について

本の主要な議論は1~4章に集約されている。5章では自論を強化する材料として実例を提示。6章は議論の本筋からは漏れたものの、筆者として主張したい事をまとめている。

〈第1章 気仙沼の「壁」はなぜつくられたのか?〉

東日本大震災で大被害を受けた気仙沼。その復興には街づくりに関する問題が潜んでいた。その問題とは、行政による復興活動が、近視眼的かつ住民の意向を無視していた事である。それは、政治が短期的な成果を求めがちな事、そして関係者が増えるほど、責任回避のために計画が低リスクで無難になるため起こる。この問題の解決に必要なのは、街づくりの恩恵を受ける当事者たちが、明確かつ持続性のあるビジョンを持つことである。(198文字)

〈第2章 文化や景観を無視した街づくり〉

地域は人が来ることで栄えるため、街づくりにおいて人集めは重要である。街特有の文化や風土、景観等は、人集めのきっかけとして重要だが、余りに固執すると、街の生活感を奪い、逆に人を遠ざけてしまう。街特有の魅力と、地元の人に愛されるような生活感とのバランスが重要である。行政と住民とが、街のどのような魅力に焦点を当て、育んでいくべきか、という認識を共有し、バランスの取れた街づくりを進めていく必要がある。(198文字)

〈第3章 いつまでも捨てきれない、東京化という幻想〉

東京を真似る様な街づくりは、街の個性を失わせ、結果、外部の人が訪れる理由や、地元民の愛着を失わせる。街の個性を生かした開発こそが、街の持続的な発展をもたらす。街の個性は、景観や風習など様々だが、その最たるものが、その地域の人であり、彼らの日常的な暮らしにこそ、街の個性が現れる。彼らが他者との交流を求め、自由に集まれる場所=サードプレイス(※1)は、これからの街づくりに重要な役割を果たすと考えられる。(200文字)

※1:サードプレイス
社会学者レイ・オルデンバーグの提唱した概念。第一の場所=家、第二の場所=職場とも異なる場所の事を指し、具体例として居酒屋、カフェ、本屋、図書館などが挙げられている。

〈第4章 サードプレイスとは何か?〉

サードプレイスで生まれる交流は、街の個性そのものであり、地元民にも外部の人にも魅力的である。そして、そこにはコミュニティーが生まれるため、持続的な人集めが可能である。街づくりにおいては、サードプレイスの没個性化を避けるため、地域の風土を組み合わせるべきである。そして、ここで生まれるコミュニティーは、街をより良くする原動
力となる点も重要である。また、自然環境への配慮も今後欠かせない要素であろう。(198文字) 

〈第5章 サードプレイス的街づくりの実例〉

要約内容なし。
筆者がこれまでに携わってきた事例を通じて、読者にサードプレイス的街づくりについて具体的にイメージしてもらうことを意図している。以下事例名。
・スペシャリティマート HAPIO(北海道帯広市)
・シエスタハコダテ(北海道函館市)
・八戸屋台村 みろく横丁(青森県八戸市)
・ウミカジテラス(沖縄県豊美城市)
・かごっま ふるさと屋台村(鹿児島県鹿児島市)
・国際通り屋台村(沖縄県那覇市)
・石垣島ビレッジ(沖縄県石垣市)
・大通BISSE(北海道札幌市)
・海鮮工房と羅臼町(北海道目梨郡)
・北海道マルシェ(シンガポール)
・ワイキキ横丁(ハワイ)

〈第6章 サードプレイスにみる街づくりの未来〉

※あくまで、これまでの議論から漏れた事項を述べたものなので、全体として要約することは難しいですが、その中でも、重要そうな部分をまとめてみました。

今後、訪日外国人観光客数を増やすためには、日本各地の文化を継承し、そこだけの魅力を作る必要がある。異文化体験こそ世界から人を集められる旅の醍醐味だからである。つまり、街の魅力を引き出せば、人が集まり、街の経済が潤う。それが続けば、そこにはコミュニティーが育ち、より街を魅力的にする。良い街づくりは、地域を活性化させ、その街の住人を幸せにするものである。より細部までこだわった街づくりを続けたい。(197文字)

〈感想・批判〉

本書は、サードプレイスを一つのキーワードに、筆者がこれまでに取り組んだ事例を交えつつ、筆者の考えを述べるものである。

総論としては、特におかしな事を言っているとは思わないが、論旨の骨格が不明瞭であり、また雑多な情報が多いため、文章の論理的な構造がわかりにくい。

本書に書かれている内容を、理論的につながる様に整理すると以下のようになる(はず)。

①街づくりは持続性が必要
②街が栄えるとは、人が集まることである
③人を集めるには、他所と差別化されたその街ならではの魅力が必要


④サードプレイスはその地域の人が交流を求めて集まる場所である
⑤その街ならではの魅力の最たるものがその場所に暮らす人である
④⑤より ⑥サードプレイスはその街ならではの魅力を備える

⑦サードプレイスはその場にコミュニティーを生み出す
⑧そのコミュニティーは継続的に人を集めることが出来る
⑦⑧より ⑨サードプレイスは継続的に人を集めることが出来る

⑩サードプレイスは上記①~③の街づくりの条件を満たすものである
(①②⇔⑨、③⇔⑥)


∴サードプレイス的な街づくりは、地方創生の起爆剤となる

異論はあるだろうが、これを筆者の論旨として認めた場合に、いくつか批判点を挙げたい。

まず挙げたいのは、論旨の骨格の不明瞭さである。論旨の不明瞭さは、そのまま主張の説得力の無さにつながるので、もう少し明瞭に書いて欲しい。無論、筆者が論理的に書くことを目指していないとすれば、この批判は見当違いなので、その場合は僕の愚痴程度に思っておいて欲しい。

次に「街が栄える=人が集まる」という仮定が安直すぎるという事を指摘したい。まちおこしが、単なる人集めではないことは、これまでの課題図書でも幾度か出てきた話である。

無論、6章P.205に書かれているように、人が集まる、経済的に潤う、継続性がある、コミュニティーが出来る、といった要素は独立しておらず、それぞれが相互に繋がって成立することが述べられているので、筆者も街が栄えることを単に人が集まると考えているわけではない事はうかがえる。ただ、議論の流れ的に、この仮定が議論の発端の一つとなっている以上、一応指摘はしておきたい。

また先に取り上げた(P.205)通り、この仮定が便宜的なモノであったとしても、便宜的なままで議論を進めていたということは、それぞれの要素の関係性や因果関係の整理が出来ていないという事であり、それがこの本の議論の不明瞭さに繋がっている点は指摘したい。

次に、筆者が本書で上げる方法が、何処の地域にでも適用できるのかという点も指摘したい。

書いてある内容に基づけば、地域には地域ならではの魅力があるので、どの地域でもそれを見つけられれば、人を集めることは可能という様な事が書いてあったが、それが本当にそうなのかは怪しい。無い事を立証することは難しいが、そういったものが無い地域もありうるかもしれない。
また、仮にそういった魅力がすべての地区にあったとしても、観光だけがその地域の産業という事もあり得ないので、そんなものを探すくらいなら、他の道を探った方がはるかにマシという事もあるだろう。今後まちづくりに何等かの関わるのであれば、この点は留意しておきたい。

さて、本書のタイトルにもなっている、サードプレイスという言葉は、アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが1989年に提唱した概念である。自分自身すべてを読んだわけではなく何章かパラパラ読んだ程度ではあるが、今回の課題図書を批判するにあたっては、このネタ元の本を読んでおくのが本筋であろう(自戒を込めて)。

レイの問題意識は、本書で取り上げているような観光にはなく、孤立した人々を生み出す社会の仕組みに向けられている。各国の事例を取り上げながら、500ページにわたって議論が進められている。であるからして、今回その様な文脈で作られた概念を、観光の文脈に利用するというのであれば、もう少し慎重な議論が必要であるように思う。現在の日本の状況が、レイが当時問題にしていたアメリカの状況に似ているというだけで、議論に取り入れるのは少々安易に過ぎるように思う。サードプレイスはあくまで地域のコミュニティの問題に対して作られた概念であり、外部の人の観光のために作られた概念ではないのである。

本書は全体として理屈の点で弱く、筆者のアイデアを全面的に取り入れるには、読者の側で十分に検証する必要があるだろう。ただ、それぞれに書かれている事例自体は参考にしうるものも多い。自分の考え方と照らし合わせて、使えそうなものは使うという態度で読むくらいが妥当な本という印象である。正確に議論の流れを追って、丁寧に検証するという行為は、別の本に取っておきたい。

〈以下要約(渡辺分)〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?