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地域で楽しく過ごすためのゼミ 11月 1/2

2020年11月30日、地域で楽しく過ごすためのゼミが開かれました。

今回の課題図書は『人が集まる場所をつくる サードプレイスと街の再生』(著:国分裕正 2019年 白夜書房)です。担当は守岡・渡辺です。
この文章では、実際にゼミで使った要約文章を掲載します。

〈以下要約(守岡分)〉

【本の選定理由】

図書館で偶然目にして、単純に「サードプレイスってなんだろう?」と思った。また、これまで何冊か地域おこし(地方創生)についての本を読んできたが(?)、イマイチ腑に落ちないというか、これと思う本に出会えていないので、さらに新しい知識を得たいと思った。

【本の主題】

いま、ポリシーがない安易な街づくりによって日本の各地で歴史や風土が壊されつつある。そこで地域ならではの魅力に着目し、人々が自然と集まるような街づくりの拠点を「サードプレイス(第3の場所)」と定義し、地方創生の起爆剤となるものとして提案している。それは決してその地域に根付いてきた文化や景観を無視するスクラップ・アンド・ビルド型の街づくりではなく、地域の人々にとって、あるべき街の姿をともに見極め、地域の遺伝子が脈々と受け継がれていく「心のふるさと」をつくり続けるための拠点としている。それが本来的な意味での地方創生につながるはずである。

【章立て】

この本は目次を読むだけで全体の流れが掴みやすいのであえて全部転記する。

第1章 気仙沼の「壁」はなぜつくられたのか?
    ・気仙沼の現状-東日本大震災を経て-
    ・地元住民の声を無視した“壁”の建設
    ・景観を破壊する防潮堤ができるまで
    ・わたしたちが目指す気仙沼の未来とは
    ・必要なのは100年後を見据えた街づくり
    ・補助金による街づくりの功罪
    ・気仙沼の明るい未来
    ・気仙沼の恩人

第2章 文化や景観を無視した街づくり

    ・駅ビルがもたらす商店街の衰退
    ・文化が失われた地域とテーマパーク化する古都
    ・スクラップ・アンド・ビルドの果てにあるもの
    ・建築資材が破壊する街の景観
    ・街づくりを阻害する行政と民間の確執

第3章 いつまでも捨てきれない、東京化という幻想

    ・ミニ東京化する地方都市
    ・スクラップ・アンド・ビルド型の街づくり
    ・機能していたかつての商店街
    ・その街らしさをアピールする
    ・街づくりのテーマは“街の中”にある
    ・日本の街づくりに必要なもの

第4章 サードプレイスとは何か?

    ・サードプレイスとは
    ・サードプレイスの原点
    ・サードプレイス的な場づくりを行う企業たち
    ・コミュニティーの創出が発展のカギを握る
    ・風土・コミュニティー・自然
    ・本来的な意味におけるコミュニティーとは
    ・人が集まる屋台村の仕組み

第5章 サードプレイス的街づくりの実例

    ・スペシャリティマート「HAPIO(ハピオ)」
    ・シエスタハコダテ
    ・八戸屋台村みろく横丁
    ・ウミカジテラス
    ・かごっまふるさと屋台村
    ・国際通り屋台村
    ・石垣村ヴィレッジ
    ・大通BISSE(ビッセ)
    ・海鮮工房と羅臼町
    ・北海道マルシェ(シンガポール)
    ・ワイキキ横丁(ハワイ)

第6章 サードプレイスにみる街づくりの未来

    ・空き家を活用したイタリアの地域振興
    ・”観光立国ニッポン”の未来
    ・確度の高いチャレンジに必要なこと
    ・地方創生を救う「6次産業化」
    ・新しいリゾートのカタチ
    ・細部までこだわりぬいた街づくりへ

おわりに サードプレイスから「心のふるさと」へ

まず第1章は全体の導入として東日本大震災後の宮城県気仙沼市について触れている。震災によってそれまでの街づくりの方針を転換せざるを得なくなり、それによりみえてきた問題点、展望にについて述べている。第2章から4章でさらに具体的に展開し、くりかえし地域の持つ魅力を活かした街づくりについて述べている。第5章ではより具体的にサードプレイス的街づくりをイメージできるように著者が実際に取り組んできた街づくり・施設づくりの実例を紹介。第6章では少し視点を変えた街づくりについての考察をのべ、地に足のついた「本当に地域のためになる街づくり」=地域文化の継承の重要性について、著者自身の決意表明を含めつつ説いている。

【各章の要約】

第1章 気仙沼の「壁」はなぜつくられたのか?

東日本大震災の復興過程において、住民の主張がほとんど無視された防潮堤が築かれ気仙沼のすばらしい景観が失われてしまった。「住民の命を守ること」を最優先事項とするとしながらも、東日本大震災レベルの津波を防ぐことができない、ただ自然に抗おうとする苦肉の策としての「壁」を建設してしまった。政治側の都合を優先した結果である。しかし、これからの日本には短期的な体裁を整えることではなく100年後を見据えた街づくりが欠かせない。街づくりにおいては強力なリーダーの存在が必要である。復興についても、もちろん1日も一日でも早く復興を形にしていくことは復興行政の使命だが、行政が主導すること(補助金を活用すること)で復興のスピード感が損なわれる側面もある。しかも関係者が増えることで議論がたらい回しになり、間違った判断が醸成されやすい。将来を考えたうえで導き出した正しい街の未来像を目指すべきである。強い気持ちを持って取り組んでいる気仙沼では良い街づくりがなされていくと著者は確信している。

第2章 文化や景観を無視した街づくり

 街づくりには歴史や文化、風土、さらには地域特有の景観などに配慮することは不可欠だが、駅ビルや郊外型商業施設に代表されるような利便性を追求した施設をつくった結果、昔ながらの商店街をゆっくりと、しかし確実に疲弊させている。また、その逆に厳格に歴史的な風景を残そうとした結果、生活感が失われ、まるでテーマパークのようになってしまったところもある。街づくりには正しいバランス感覚が必要だ。

第3章 いつまでも捨てきれない、東京化という幻想

陥りがちなのが「東京」に寄せた街づくりである。あくまでも東京は東京、地元は地元である。地元の良さを活かした地域ならではの発展こそを誇りとするべきだ。地元への深い愛着が魅力の創出につながる。スクラップ・アンド・ビルド型に代表される高度経済成長期のような旧態依然とした発想を根本から変えるべき。東京も諸外国の近代都市を真似してきた。サードプレイスこそ、これからの街づくりにおいて重要な位置を占めると著者は考えている。

第4章 サードプレイスとは何か?

アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグが著書『サードプレイス―コミュニティーの核になる「とびきり居心地よい場所」』(みすず書房)で提唱した。第一の場所「家」、第二の場所「職場」とともに個人の生活を支える場所、としている。具体例として居酒屋、カフェ、本屋、図書館など情報や意見の交換、さらには地域活動としての機能を有している場所が挙げられている。

サードプレイスの定義

①中立性:経済的、政治的、法律的に中立であること
②社会的平等性の担保:経済的、社会的地位に重きをおかないこと
③会話が中心に存在する:活動のメインとして楽しい会話があること
④利便性がある:オープンであり、かつアクセスしやすいこと
⑤常連の存在:新たな訪問者を惹きつけ、受け入れる常連がいること
⑥目立たない:日常的・家庭的な空間で、あらゆる階層の人を排除しないこと
⑦遊び心がある:明るくウイットに富んだ遊び場的な雰囲気があること
⑧感情の共有:「第2の家」としてあたたかい感情を共有できること

これらの条件をすべて満たすのは至難の業。全体としては、誰でも訪れることができ、楽しいコミュニケーションが行われている家でも職場でもない場所、といったことがメインとなるとしている。

第5章 サードプレイス的街づくりの実例

・スペシャリティマート「HAPIO(ハピオ)」
「縁の回帰と馴染みの伝承」がコンセプト。あえてスーパーに人と人との縁をつくった。

・シエスタハコダテ
かつての商店街のように住まいと住居を密接させている。GRAYのミュージアムや市の施設なども入居し、あらゆる年代の人が集まるスポットとなっている

・八戸屋台村みろく横丁
「八戸文化の継承=八戸文化のアイデンティティーの保護」がコンセプト

・ウミカジテラス
「~人と風を紡ぐ海の集落~」がコンセプト。一般社団法人を作って運営。それぞれが納得できるコンセプトをつくり、しっかり共有している。

・かごっまふるさと屋台村
すでに栄えている繁華街はあったがあえて開発。地産地消をコンセプトに鹿児島の食文化・焼酎・方言文化の発信をし、既存の場所と共存共栄できている。

・国際通り屋台村
採算性に不安があり、補助金を利用。コンセプトは「生まれ島のクニ」離島と沖縄各地の魅力を発信するため、各地域の食材や料理を楽しめ、接客は方言を使い、特別なおもてなしをしている。移住者が経営するケースが多い。(ニュアンス的に発展途上?)

・石垣村ヴィレッジ
 石垣島への移住者を増やすことを目的に「美崎町街なかコミュニティー-ISHIGAKI GATE-」をコンセプトにしている。来場者が必ず立ち寄るとともに地域の魅力を発信する「石垣のゲート」をイメージし、レストランをメインとした施設。

・大通BISSE(ビッセ)
 「Northern Fine Life-上質な北の生活」をコンセプト。北海道の食だけでなく、技にも注目したショップが多い。

・海鮮工房と羅臼町
 地元漁協が道の駅内で運営している。「羅臼昆布のブランディング」からはじめ、街のコンテンツの活用に広げている。
(海外の例は割愛します。総じて屋台村と商業施設が多い。コロナ禍の今、どのような状況なのだろうか・・・。)

第6章 サードプレイスにみる街づくりの未来

 これまでとは違った街づくりについて述べている。まずはイタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」。
空き家を活用した分散型ホテルで、空き家問題を抱える日本でも「空き家の活用」というコンセプトは取り入れやすい。また、「観光立国」についても触れている。観光としての魅力という部分でも、問われるのはやはり地域ならではの文化を継承することあり、風土が失われた地域に魅力はない。異文化に触れることが旅の醍醐味なので、風土観光が主力になっていくのではないか。もとからある「日本らしさ」に考えをすべきである。すでにあるもの、生活そのものに魅力が隠されているからだ。合わせて地元の魅力については熟知しておくべきだ。最後に「細部に神が宿る」というように、見る人は必ずみているという意識をもち、そこから本当の評価が行われているのだと思うようにして細かいところまでこだわった街づくりを行うことが重要である。
それにより、訪れる人を魅了する力を得ることができる。そこにある大切な何かを、多くの人と共有するためにこれからも”仕事”を続けていくという決意で締められている。

【感想・批判】

一つ一つの章が短いので読みやすかったのだが、よく言えば首尾一貫、悪く言えば同じような表現が繰り返し出てくる。ニュアンスを理解しながら、身近な施設を頭に置きながら読んでいった。確かに、均一的なハコモノには魅力を感じない。その地域の特長を活かす、価値を再確認することが必要で、これがやはり街づくり(地域おこし)には欠かせないものだということを再認識できた。もとからあるものを大事にした街づくりは海外が一歩リードしていると思うので、参考になる部分を真似するのは有効だと思った。
その地域に住む人が魅力を感じない場所はよくない、という内容が繰り返し出てきたが、常連が集まる店のように、地元の人間の居心地が良い場所には、逆によそから入りづらくなることもあるが、その部分についての考察はよくわからなかった。コロナ禍で人が集まる場所についての考え方や価値観が変わった部分があると思うが、魅力ある場所には人が自然と集まることは変わらないはずだが、それは必ずしも観光施設である必要はないと思った。

〈以下要約(守岡分)〉

次の記事に続く

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