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地域で楽しく過ごすためのゼミ 3月

2021年3月22日、地域で楽しく過ごすためのゼミが開かれました。

今回の課題図書は『ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論』(著:指出一正 2016年 ポプラ社)です。担当は増子です。
この文章では、実際にゼミで使用した要約文章を掲載します。

〈以下要約〉

【本の選定理由】

仕事で「関係人口」を調査研究及び事業化に向け、取り組んでいたためので、活かせると思ったため。

【本の主題】

現在、若者たちが東京のような大都市ではなく地方に目を向けて、実際に過疎地や限界集落、高齢化、人口減少、何もない、閉鎖的なといった地域をポジティブに塗り替える動きをしている若者がいる。地方は、魅力発信するのではく弱音、つまり課題を若者に発信し、「関わりしろ」を与え「自分ごと化」にして行くことで、地方のダサい・汚い・古いをカッコいいクリエイティブな場所にしてくれる「ローカルヒーロー」が増えることで地方での幸せに繋がるはずである。

【章立て】

第1章 ローカルに価値を見出す若者たち
第2章 関係人口を増やす
1.生きるアート集団、全国で仲間を増殖中(パーリ―建築)
2.「緑」つながる新しい移住のカタチ(ペンターン女子)
3.ふるさとの味で「つくる人」と「食べる人」をつなぐ(『四国食べるつうしん』編集長 ポン真鍋)
4.地域の「顔」を毎日は発信。まちの記憶をアーカイブ(下田真部)
5.地域の宝を発見するヒッチハイク女子(たからさがし。吉永佑梨・宮ヶ原真衣)
第3章 未来をつくる手ごたえ
1.エネルギー・食・仕事を自給する暮らしの提案(いとしまシェアハウス 畠山千春)
2.「幸福な過疎地」のローカルモデルを目指す(十日市地域おこし実行委員会 多田明孔)
3.ローカルビジネスで持続可能な地域づくり(巡の環 阿部裕志)
4.DIYで暮らしまるごと自給自足に挑む(幸田直人)
5.地域資源を利用し、里山をつなぐ、まちの鍛冶屋さん(秋田和良)
第4章 自分ごととして楽しむ
1.空き家からまちの賑わいを取り戻す(nanoda代表 山田崇)
2.着ぐるみで地域おこしの可能性を実験中(桃色ウサヒ 佐藤恒平)
3.地域の素材・技術を“結って”デザイン(シネマプロモーション 三浦大紀)
4.ソーシャル芋煮会でふるさとの食文化を守る(伝承野菜農家 佐藤春樹)
第5章 地域の未来をみんなでつくる

【各章の要約】

第1章 ローカルに価値を見出す若者たち

・現在、世界初の環境ファッション雑誌「ソトコト」の編集長の著者
・リーマンショック
・東日本大震災が起こったことにより若者の目は、東北に向けられた。

第2章

1.パーリ―建築(新潟県十日町市他)
パーリー=パーティーを続けながら使われなくなった建物を改修する3人の20代男子の建築集団。依頼された場所に住み込み、地域の子供からお年寄りまで巻き込んでワイワイ楽しみながら、空間づくりをエンターテインメントやイベントにしてしまうのが特徴である。
十日町につくったシェアハウス古民家「ギルドハウス十日町」を拠点に、活動している。

2.ペンターン女子(宮城県気仙沼市)
東日本大震災のきっかけでボランティアをするため気仙沼市に訪れ、縁もゆかりもなかった漁師の言葉に強い衝撃を受けた。地元の若者を中心としたまちづくり団体「からくわ丸」の活動しながら、大学卒業を機に移住をした。当時のメンバーは5人で仕事をしながら地域づくりに関わっている。地方に人がいない、特に若者がいないと地域が衰退すると言われているが、何人いれば安心するのか。5人ではだめなのか。この女子が住んでいる唐桑半島はどの地域よりも「人がいる」と言え、数の問題ではなく、どんな人がいるが重要である。
※ペンターンの意味
「ペン」:半島 「ターン」:移住

3.「四国食べるつうしん」編集長 ポン真鍋
・リーマン・ブラザーズに入社して、社員としてリーマンショックを体験したことで、それまで勤めていた会社を辞め、「地域おこしを自分の生業にする」「地元のために汗をかく」ことを決め、香川県小豆島にUターンをした。その土地の農業・漁業・畜産業といった生産者にフォーカスし、作り手の想いと背景を情報誌で伝え、その人たちが作る食材を一緒に届ける仕組みが食べる通信である。実家をリノベーションし、取材した食材などを販売、料理を味わうことができる場所と地域の人と地域外の人が交流できる場になっている。

4.下田写真部
・観光地や素敵な景色の写真ではなく、商店のおばちゃんや魚の天日干しにする風景など下田市の暮らしのリアルを切り取ってSNSで発信している。行政職員も加わっており、官民一体で活動している。メンバーの年齢が30代~40代で、地域の若者と50代以上の人との架け橋的な存在になっている。

5.たからさがし
・九州や四国を中心に女性二人でヒッチハイク旅をして、地元の人に何気ない風景や人、暮らしでも、外から見ると魅力的な「たから」にみえ、そういったモノを「さがし」して発信している。

第3章 未来を作る手ごたえ

・自分で猟師になり、狩りをし、解体をした画像など配信して、普段はパックでなっていて見えないところの「食」を伝えている女性や限界集落に入り、地域の支えになっている男性など、事例に出てくる人たちは、実際に体験をして、発信することで技術などを未来の地域の後継者に伝え、持続可能な地域社会を実現しようとしている。

第4章自分ごととして楽しむ

地域のために何が必要なのか真剣に考え、第3者ではなく当事者という考えを持って地域づくりをしている。1人では限界があるが、楽しんで地方創生を取り組むことで、同じ価値観を持つ仲間が増えていく。地域づくりを通して、気の合う仲間と仕事ができるという事は、「ご縁」と「運命の出会い」でのチームを結成していると言え、楽しさに繋がると言える。

第5章 地域の未来でつくる

ただ人口が沢山いる時代は終わり、どんな人が地域にいるかが重要であり、特に行政は、移住者を何年までに何人増やすという目標値を外して考える必要がある。これから人口減少は進んでいく中で、地域に住んでいる定住人口でもなく旅行などで訪れる交流人口でもなく、どちらにも当てはまらない「関係人口」が必要である。仕事が多様化でパソコンとネット環境があれば仕事ができ、移住はハードルが高く、定期的に地方にきてローカルライフを楽しみ、地元を複数持つライフスタイルができる。関係人口は勝手には増えない、誰がきたら、何が起きるのかをしっかり考える必要がある。自分たちのことを仲間と考えてくれる人を見つけるには、まずその街に住み地元を愛する人たち、老若男女関係なく、次に関わりを持ってくれる地域外の人「関係人口」に目を向ける。全体ではなく、個としての存在をしっかり歓迎し、顔と名前を覚える時代が地方創生の次のステップアップだと思う。

「人は人に興味を持つ」

【感想と批判】

・事例の事業が大体は今現在も残っているので、優秀な事例を確認できたことは勉強になった。関係人口事業をするうえで、アプローチの仕方や考えが杓子定規になっていること、まずは、自分が地域に入り関わりを持たないとこういう事業は続いていかず、一過性のモノになってしまう事を感じれた。
・章ごとになっているが、事例が似たようなモノなので区切りが分かりずらく、読みにくいと思った。関係人口の説明等も一番最後にあり、関係人口を知らない人が読むとただの事例集とソトコトの話になってしまうのではないかと感じた。

〈以上要約〉

ゼミ主催あとがき

今回のゼミは、コロナによる延期を重ね、3か月ぶりの開催となってしまいました。昨今、人が顔を突き合わせて話をする機会というのは、随分と減ってしまいましたが、久しぶりにやってみるとやはり面白いものです。ただ、オンラインで会議をやる方が便利な場合もあるということも、我々は知っています。つまり今後コロナが収まったとしても、今までのように対面で話す事だけが重視されるとは限りません。必要に応じてオンとオフを切り替えて使っていくことは容易に予想されます。対面での話し合いはよかったなあ、なんていう単なる懐古主義に陥らぬよう気を付けたいと思う次第です。

さて、話がそれましたが、今回の本はいってしまえば事例集でした。しかも、ソトコトの編集長が選ぶとなれば、優れた事例が集まっていると言えるでしょう。とはいっても、それは裏を返せば偏っているとも言えます。偏りというのは、その中にいてもわからないもので、外にでて他の物と比較して初めてわかるものです。事例集を参考にするにあたっては、偏りがあるものと思って読むのがまずもって大事でしょう。

また、偏りを確かめるための比較方法も重要でしょう。偏りを測るには、複数の事例を一つのモノサシの上で測る必要があります。
今回のような事業を測るのであれば、複式簿記の形式で書かれた会計資料を見るのが一番手っ取り早いでしょう。公開されていない場合が大半でしょうが、NPOや財団等であれば公開しているので、見てみると面白いかもしれません。

無論モノサシが定量的である必要はありません。というか中々定量的に見比べられるほど情報が公開されている方が稀です。世の中には定性的なモノサシもたくさんあります。例えばビジネスモデルを一定のフォーマットの中でダイアグラム化して、見比べてみるのも一つの手です。
何年か前にビジネスモデル2.0図鑑というのが、メチャクチャ流行っていたので、その形式に落とし込んでみるのも面白いかもしれません。中々、誰が出資者で誰がお客さんなのかという情報も出てこなかったりしますが、ある程度ビジネスモデルを想像しながら、事例を見てみると何となく想像出来たりします。

ものすごく大ざっぱに考えてみると、読書含め勉強というのは、モノサシで測る対象の事を知るか、モノサシそのものを知るかのどちらかに大別できるのかもしれません。世の中には色々なモノサシがあるので、自分に使いやすいものを探してみると良いでしょう。

※ビジネスモデル2.0図鑑の著者の方が、今度は会計知識の本も書かれたそうなので、そちらもチェックしてみると面白いかもしれません。

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