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063『ぼっち・ざ・ろっく!』、そして『ガールズバンドクライ』!④ 楽曲論その2 青春コンプレックス/雑踏、僕らの街

 今日は主題歌の歌詞、OPにかかる部分だけで分析。

 まずは「青春コンプレックス」。

暗く狭いのが好きだった
深く被るフードの中
無情の世界を恨んだ眼は
どうしようもない愛を欲していた

雨に濡れるのが好きだった
曇った顔が似合うから
悲しみにおびえてるふりをして
空が割れるのを待っていたんだ

かき鳴らせ 光のファズで
雷鳴を轟かせたいな
打ち鳴らせ 痛みの先へ
どうしよう! 大暴走獰猛な鼓動を

かき鳴らせ 交わるカルテット
革命を成し遂げてみたいな
打ち鳴らせ 嘆きのフォルテ
どうしよう? 超奔放凶暴な本性を

 一段落目で鬱屈、二段落目で悲哀。そして三段落目で反転、四段落で攻勢というまるで物語になってる。実際一段落目は「深く被るフードの中」、二段落目は「雨に濡れるのが好きだった」とはっきりした具体像がある。だから三段落目の「かき鳴らせ 光のファズで/雷鳴を轟かせたいな」や、四段落目の「かき鳴らせ 交わるカルテット/革命を成し遂げてみたいな」も、具体的なものを記してると理解できる。
 もともとぼっちちゃんは自分のダメさ加減を(自虐の)歌として表現する才能があり、劇中で後藤ひとりの作詞とされた楽曲、徹底してぼっちちゃんから見た世界の表現だった。
 しかしこの歌詞で面白いのは一段落目は素直な気持ちの一方、二段落目は屈折してると思えること。「雨に濡れるのが好きだった」を素直に解釈すれば、涙を、それと知られずに済むことと思うので。その涙、劇中のぼっちちゃんはギャグとアナーキーな映像表現でわかりづらいですが、悲しさより口惜しさ、諦めの気持ちからと想像するのです。
 しかし見つけてくれた虹夏ちゃん、詞についてアドバイスをしてくれたリョウさん、そして四人目としてギターボーカルとして入ってくれた喜多ちゃんとともに結束バンドとして、痛みの先へ。嘆きのフォルテになってもやり続ける、ぼっちちゃんこと後藤ひとりの決意表明の歌と想うのです。


 次は「雑踏、僕らの街」。

やり残した鼓動がこの夜を覆って
僕らを包んで粉々になる前に
頼りなくてもいい その手を
この手は自分自身のものさ

変わらないはずはないよ
手を伸ばして

雑踏の中で声なき声で泣いてる
足跡が今 誰かの声を消した朝
いつになっても枯れることのない
腐敗した街の泥水が冷たい

何も変わらない世界で
今日はだって生きてくんだ
くだらないけど仕方ないでしょ
僕らはもう歩き始めたんだ

噓みたいな 馬鹿みたいな
どうしようもない僕らの街

それでも
この眼で確かに見えたんだ
この手で確かに触れんだ
ねえ ほら ほら ほら

また吹いた 馬鹿みたいだ
どうしようもない闇を照らせ

夢じゃない
「どうせ終わってる街だ」って
諦めたって変わんないぜ
ああ まだ まだ まだ

やり残した鼓動がこの夜を覆って
僕らを包んで粉々になる前に
頼りなくてもいい その手を
この手は自分自身のものさ

変わらないはずはないよ
手を伸ばして

「変わらないはずはないよ/手を伸ばして」の部分に頑張れソングの残り滓を感じないこともない。しかし「雑踏の中で声なき声で泣いてる」、「足跡が今 誰かの声を消した朝」、「腐敗した街の泥水」によって、僕らの生きてる「今/ここ」がどん詰まりと表現してる。それが「何も変わらない世界」ということにも言及。
 しかし作詞の人(多分仁菜ちゃん)は「くだらないけど仕方ないでしょ/僕らはもう歩き始めたんだ」と宣言、決意。嘘みたいな、馬鹿みたいな街でも、見たもの、触れたものを信じて。詞だけでもその信念、切実さは窺えるけど、楽曲になってその指向は激増した。
 「名もなき何もかも」を歌い終わって「予備校やめます」と言った仁菜ちゃんは「諦めたって変わんないぜ」と言う資格がある。「頼りなくてもいい」、まずはやり始めよう、それがこの曲の主張/主義と思うのです。そしてそれは、やっぱり一人ではできないと、OPの出だしで示してる。
 そして次の「手を伸ばして」は曲の終盤ですが、頼りなくても過去の自分を振り切り、自立/自律を意味してると思う。ならば今夜の第八話、展開はともかく結末は想像つく。

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