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2024.4.25

図書館に本を返す。できるだけ日光を浴びるため自転車を使わず歩きで向かった。脳から工場の音がする。大量のセロトニンが製造されている。よしよしと思いながら、俺は図書館を通りすぎていた。アホだ。


図書館で用を済ませ、ツイッターを眺めていたら、となり駅の映画館でゴダールの遺作が上映されると知った。タイトルは「ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争」なんだ?ドキュメンタリー?実験?上映時間20分!?しかも今日が最終日!?ゴタールのことはよく知らないけど、見るしかないと思った。上映までおよそ15分。ツール・ド・フランス最強のスプリンター、マルセルキッテルになったつもりで、五日市街道の標識を全て置き去りにして進んでいった。


ところで、この「奇妙な戦争」というのは、ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まった際、フランスとイギリスがドイツに宣戦布告して交戦状態にあったにもかかわらず、約8ヶ月もの間、実際の戦闘はほとんど行われていなかったため生まれた言葉なんだとか。世界史を勉強しなかった俺はこんな背景も知らないまま映画館の席に着いたのだが、それはもう今日の出来事…。


5分前になんとか到着。とりあえずポップコーンを注文する。たった20分の映像なのにポップコーンを食ってたら面白いかなと思った。ところが席に座ると、隣のおばさまがポップコーンを食べていた。おーい、それを面白いと思ってるの?発想が被るなんて、実験的な映画を見る前にあってはならない禁忌を犯した。

ここから薄口のネタバレ

まず最初の3分で度肝を抜かれた。客の咳が目立つほどの無音で静止画が永遠に流れ続けた。どうすれば良いのわからず気持ちはずっとそわそわしたまま。しかしその間、心臓からはなにかが始まる音がしていた。それは人生のターニングポイントを踏んだ時の音に似ていた。映画は相変わらず静寂を貫き一向に始まった感じがしない。時々ナレーションが入るけれど、瞬く間に無音に戻る。と思ったその矢先、バイオリンの鬼気迫る不穏な旋律が轟いた。おお、おお、すごい。無音から激動。こんな極端な対比は初めてー。そして音が徐々に大きくなり、盛り上がりが最高地点に達したところで、急に無音が訪れる。思わず笑ってしまった。

結局、背景や知っておくべき情報を持ち合わせておらず、本当に意味がわからないまま終わった。

だけども俺はある感情に支配されていた。フランス映画って、かっこいい。それは、50m走で他のやつに圧倒的大差をつけて走る男の子を、女の子が見る時と同じ気持ち。

フランス映画、いや、フランスだ。俺は、フランスなのかもしれなかった。フランスのことをもっと知りたい。フランスが俺以外と仲良くしてたら嫉妬してしまう。今までにない気持ちが芽生えた新たな自分に、ボンジュール。過去の自分へ、ボンボヤージュ。

銭ズラ