行進にしては数が少ないがコアラのマーチ2体を食べる

夜ご飯なに食べましたかと聞かれて「コアラのマーチ、2体」と答えたら「行進にしては数が少ないかも」と言われました。おそらく、そのコアラのマーチたちは行進中に「2匹で抜け出さない?」という話になり、駆け落ちしたと考えられるのですが、その逃避行先が僕の胃の中だなんて、彼らはなんとも不運なものです。こんなことになるなら臓器売買で僕の中身を空っぽにしていれば。薄暗い夜のトンネルを抜けるように、僕の口から肛門までを通過できたのに。今コアラのマーチの足音が少しずつ静かになっています。胃液が彼らの輪郭を溶かし、彼らは混ざりあっていきます。それは、自ら望んで破滅していくようでもありました。今夜も東京は、彼らのような2人の男女が、そんな末路を辿っていることでしょう。胃の中に広がるチョコレートには苦味はなくただ甘いだけ。溺れ朽ちていく、酔いしれたまま。やがてうんちとして排出される2匹。こんにちは、外の景色はどうですか?ほら、これがあなたたちの望んでいた地獄ですよ。またどこかで会いましょうね。水に流された僕の茶色はまだ幸せの熱を帯びていました。どうかこのまま冷めることなく、これから待ち受けるものが悪夢だと気づかず、永遠に目覚めることなく。合掌、合掌、合掌、合掌、合掌、合。それから2週間後、おはようございます飲料水。すいません、水道水でした。おや、コップの水面にコアラの顔が浮かんできましたよ。下水処理場を経て、また僕に飲み込まれるんですね。僕が、僕が、世界だったんですね。それでは、いってらっしゃい。どうせならシートベルトは付けない方が楽しいですよ。みんなと同じ景色を見ると、感動を共有することでしか日々を埋められない。哀れな共感。それはそうと、行進の音が聞こえてきました。僕もまたお腹いっぱいになるまで、コアラを受け入れなければならない。いやあ、大変だ。どうして神様は僕をこんなに広く作ってしまったんだろう。いや、カービィの方が広いな。哀れなカービィ。合掌。










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