第56話 悲劇的、あまりにも悲劇的 ~ 小説「ドラゴン・タトゥーの少年 桜の朽木に虫の這うこと(三)」
「虎太郎くん、このザワークラウト、よく漬かっているよ。なかなかの美味であるね」
「こ、光栄です、閣下」
さりげなくさくら館に乗りこんできた刀隠影司を、真田虎太郎は軽食でもてなしていた。
「なんでてめえがここにいるんだよ?」
「つれないな柾樹、家族だろう?」
「言わせておけば……」
南柾樹は当然のことながら、周囲がひやひやとするやり取りを繰り広げている。
「影司、柾樹くんの気持ちも少しは考えてあげなさい。あなたが彼に成したこと、天地神明を引き合いに出すまでもな