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わんことの思い出


犬がうちに来てから、

図工や美術の作品は耳のたれた犬になった。

家族旅行は犬と行ける家族キャンプになった。

外で地震が来た時に最初に心配になるのはお家にいる犬だった。
 


 私が小学校3年生の時だから、約11年前の冬。まんまるな瞳とくるくるでおしゃれなたれた耳、絶妙なバランスの茶色と白色がのっていて、鼻と目の間にハートの模様があるキャバリアの女の子が新しい家族になった。

ここが自分の安心できる場所だよ、と覚えてもらうために最初は1日の半分以上をゲージの中で過ごしていた。だからすこしさみしかった記憶がある。

ゲージの中のクッションに身体をちいさく丸めて、寝息をたてながら寝ている姿を見るのが好きだった。

ごはんが大好きで、ドックフードの袋の音がするだけでしっぽとおしりをこれでもかってくらい振りながら走ってキッチンに行く姿がかわいかった。

学校へ行くときは、玄関まで送りに来てくれて、ドアを閉めたらリビングの窓から見守ってくれていた。

ピンポンを鳴らすと、外からでもわかるくらいの音を立てながら走って玄関まで迎えに来てくれた。

ソファーで寝ていると足を曲げた時にできる膝と太ももとソファーの三角形のところに入ってきて、足に顔をちょこんと乗せて一緒に寝た。

すこし不安な目をして、ちょこちょこ目を合わせながらも、ものすごい勢いでリードを引っ張られながらお散歩した。
小学生のわたしが転びそうになるくらい。

私が生まれる前から使っていたソファーやテーブルはかじられてボロボロになった。
それだけではなく床に落ちていた靴下や洋服も履けないくらいに。

夜ご飯を食べるためにテーブルにおかずを並べていると、大体何かがなくなるから見張り番が必要だった。

わたしが怒られていると、怒っている方の口を舐めに行ってみたり、わたしにそっと寄り添ったりしてくれた。

よく飼い主と犬は似ると言われているけれど、本当にその通り。
顔がちょっと長いところも、癖っ毛なところも、食べ物にアレルギーがあるところも、病院代がかかりすぎるところまで似ていた。

かわいい。かしこい。かわいすぎる。会いたい。
場面がバラバラだし、長くなりすぎたけれど、思い返してみると尽きないくらい出てくる。 

もちろん、大変なこともあったけれど今は全部愛おしく感じる。ごはんジャンケンなんてしないで喜んでやりたい。


やっと当選した大好きな5人組のコンサートに家族で行く日。
楽しみで眠れなくて、早すぎるくらい早く起きた朝。普段と変わらない朝だった。

数ヶ月前から長くはないと言われていたけれど、すこし元気がないかなと思いながらなでていたときだった。


いつも撫でられているときにする気持ち良さそうな、ちょっと笑った顔で。

そばに居させてくれてありがとう。
家族になってくれてありがとう。
こんなわたしにも優しくしてくれてありがとう。

信じられなくて、信じたくなくて。
週に1回、写真の隣に飾るお花を塾の帰りに買って帰るのがわたしの中で日課になった。


元気にしてる?
私は二十歳になったよ。
毎日思い出すくらい大好きな気持ち届いているかな?
会えなくなって寂しい気持ちもあるけれど、誰よりも、なによりも「1番近く」で見ていてくれる気がするから心強いよ。
いつもありがとう。

これからもいちばん近くで見守っててね。


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