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自転車のサイズ

バットをかついだ小さな男の子が懸命に自転車を漕いでいた。友達と公園で野球でもするのだろうか。この光景を見て、スポーツに何一ついい思い出がない僕でも、この子はよっぽど野球が好きなんだな、と微笑ましく思った。ましてやかつて野球をやってました系の大人であればなおさらだ。「これこそ子供のあるべき姿だ!」とか言いながらよだれを垂らして喜ぶかもしれない。

少年がこんなにも野球好きに見えるのは、自転車のサイズが一つの要因としてあると思う。子供の自転車は車輪が小さいため、同じ距離を進むにもより多くの回数漕がなくてはならず、その結果野球に対する熱量が割り増しされて見えるのだ。仮に小さい子供とおじさんが全く同じ熱量でバットをかついで自転車を漕いでいたとしても、自転車のサイズの違いにより圧倒的に子供の方が「野球をやりたい人」に見えてしまうのである。それどころか、バットを持って必死に自転車を漕いでいるおじさんは警察に通報されてしまう恐れもあるのだ。ただ野球をしたいだけなのに。

我々はどうしても人をイメージで見てしまう。それは仕方ないことではあるが、本当のところは本人にしかわからない、という意識は持っておくべきなのだろう。僕が見た自転車の男の子だって、バットでパソコンを滅多打ちにしてレアメタルを取り出そうとしていたのかもしれないのだから。

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