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2021/4/17、El Sonidoにて朗読した詩

ナメダルマが捕まった夜

ナメダルマが捕まった夜
ぼくはミッシェルガンエレファントの古い歌を聞いていた
取調べ室は蜘蛛の巣だらけ
星屑と明け方を繋ぐ夜明けの鮮やかさ
不機嫌な顔をすることに対してものすごく頑張っている
この星の住人たちには
光が降る時も近い
その光がポジティブなものでも
あるいはネガティブなものでも
光は降らなければならないものだから
必ず、降っていなければならないものだから
われわれはそれを受け止めるしかない
われわれはその光に身を焦がすしかない

すべての色が夜になる
すべての歌が眠りにつく
すべてのマリファナが愛の行為を手助けする
すばらしい夜だ
ヒトのメンタルを作為的に攻撃するようなコールアンドレスポンスが
ディスプレイを介して行われ続ける
すばらしい夜だ
現実世界では私語は厳禁で
われわれは口元を覆い隠しながら
まるで自分が生まれてから一度も涙を流したことのない生き物であるかのようにふるまう
かけがえのない夜だ
草花が狂おしく彼女たちの乱れ髪に絡み付く
みんな路上でダンスを始めたはいいが、身体がなかなか止まらず苦しんでいる

言葉より音の方が感じ合える
音より風景の方が雄弁である
言葉なんて、言葉なんて
愛情表現とは何の接点もないじゃないか
世界には今、言葉が溢れすぎている
世界には今、孤独や鬱が溢れかえっている
だが、孤独は、鬱は、それ自体が宝物だ
そういった内面性に富んだフィルターを通さなければ見えない世界があって
孤独や鬱が見せてくれる世界は
ほんとうの美しさ、ほんとうの心地よい風に
限りなく近いものだ
言葉より孤独を選ぶべきだ
言葉より鬱を愛するべきだ
言葉より余白を見つめるべきだ
なぐさめなどいらない
真理に近づくことを恐れているわけにはいかない
言葉より孤独を選ぶべきだ
言葉より鬱を愛するべきだ
言葉より余白を見つめるべきだ

言葉より孤独を選ぶべきだ
言葉より鬱を愛するべきだ
言葉より余白を見つめるべきだ

ナメダルマが捕まった夜
街には薔薇の花が無作為に咲き乱れていた
美しく開いた薔薇の花
そこらじゅうのコンクリートから這い出した
その薔薇の花は、目に見えない花だ
ヒトはそれを、コロナと名付けた

薔薇の花の赤
それはあまりに情熱的な色
充実した希望に満ちた赤
淡麗な気力に満ち満ちた赤
ヒトはそれを、コロナウイルスと名付けた


Little Fury Things = すこし怒りっぽいもの

最善の策を有した宴はつづく。

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