見出し画像

「アイヌ文化 伝統と現在」本田優子札幌大学 教授 @立命館大学オンライン講義 | 大人の学び

質の高い授業を無料で受講することができる物として、以前の文章では放送大学を利用していると書きました。

ありがたいもので、立命館大学もオンライン講義を一部無料で開講してくれています。それが、「学びのプラットフォームMIRAI」です。


最近受けてよかった授業が、「アイヌ文化 伝統と現在 ―世界観・芸能・物語・工芸・暮らし」。講師は、本田優子 札幌大学 地域共創学群教授でした。

そして、先生の著作も読みたいと思い、図書館で借りたのが、タイトル画像の本、
本田優子 著『二つの風の谷 アイヌコタンでの日々』(1997)筑摩書房
です。

少しご紹介します。

本田優子先生について

本田先生についての公式情報は札幌大学のサイトにまとめられています。↓

本田先生は1957年金沢生まれ、大学は北海道大学に進学。大学1年の夏に本多勝一氏の文章で「自分たちのことばを捨てさせられた人たちが今自分が住んでいる北海道にいる」こと、そして萱野茂というアイヌを知ります。

アイヌ語の置かれた状況に憤りを覚え、一時は「大学をやめて二風谷(にぶたに)に行って萱野先生のお手伝いをする」と考えました。友人の助言もあり、思いとどまって、その間紆余曲折はあったそうですが、大学4年ではテーマをアイヌの近代史に決めて卒論に取り組みました。

大学卒業後、萱野氏に1年間の居候を懇願し、その年(1983年)の5月に誕生する「二風谷アイヌ語塾」の手伝いを始めます。そして同年9月の末には二風谷永住を決意していたそうです。この時先生は25歳。

1987年9月には北海道ウタリ協会主催のアイヌ語教室がスタートします。これに伴い、萱野氏の私塾だった二風谷アイヌ語塾は平取(びらとり)町立アイヌ語教室の子ども部に移行、本田先生は子ども部の専任講師を務めることになります。

このあと2005年に札幌大学文化学部助教授に就任、アイヌ文化の担い手を育成する「ウレシパ・プロジェクト」を立ち上げ、アイヌの学生に対する奨学金制度を創設。アイヌの学生もアイヌではない学生も一緒にアイヌ文化を学ぶ「ウレシパクラブ」を結成されるなど、関わりの対象を大学生に広げて活動されています。

(以上、前掲著書および日本私立大学協会の紹介記事、https://www.shidaikyo.or.jp/newspaper/rensai/daigakujin/post-141.htmlより)


本田先生は、札幌に移られるまでの10年以上を平取町で暮らし、地域のお年寄りからアイヌ文化を学びながら、子どもたちにアイヌ語とアイヌ文化を教えてこられました。この間の活動とその中で感じてこられたことを書かれたのが、『二つの風の谷 アイヌコタンでの日々』です。

オンライン講義では、アイヌの文化について、「ウレシパクラブ」のメンバーによる歌や会話、大学にある展示物などを使いながら紹介してくださいました。

     

『二つの風の谷 アイヌコタンでの日々』では、

・「アイヌ語教室に通うこと」「アイヌ語が話せること」が「善」なのではないと考えながら活動してきたこと
・マスコミ・学者・教員による勝手なストーリー(美しい伝統的な文化・差別に負けない強さ等)の押し付けに対して感じた憤り

などの描写を経て、

伝えるべき文化について、本田先生は次のように述べています。

・今起こっている事象にたいする捉え方や価値判断など、目に見えない違いであり、あまりにも日常に息づいているがために、今さかんに喧伝される『アイヌの伝統文化』とはあきらかに異質なもの」、時代の空気の中で人々が無意識のうちに取捨選択しながら受け継いできた『アイヌ的ななにか』としかいいようのないものが、たしかにこの地にはあるような気がする。

・ 二風谷の子どもたちが、文化を受け継ぐために必要なのは、私が教えるアイヌ語を頭に叩き込むことでもなければ、かつてのアイヌ社会の美しさを語れるようになることでもない。すでに述べたように、アイヌの近現代をくぐり抜けて、この地に伝え継がれたものがなにかを探り、そこに立脚することによってのみ、彼らは「受け継ぐ者」となり得るだろう。

・私は、シャモ(和人)だから、アイヌ語を教えるべきではない、とか、アイヌの文化に関わるべきではない、などということを考えているわけではない。問われるのは、本当に伝えるべきものを身に備えているかどうかということなのだ。

          *********

◆《文化の多様性の尊重・違いを楽しむ・伝統文化の保存》といったことがもてはやされることが多いが、本当に大切なのは、「時代の空気の中で人々が無意識のうちに取捨選択しながら受け継いできた物事の捉え方や価値判断」であること

◆それを受け継ごうとし、身に備えている者であれば、文化の継承に関わる資格があるのではないかということ

この2つのメッセージをこの本から私は受け取りました。

そして、↓を意識するようになりました。
自分はどのような「文化」を引き継ぎ、自分の子どもや周りの人々対してどんな「文化」を行動を通して示しているのか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?