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「終活専門不動産」ディレクター末藤康宏さんに聞く、終活のホントの話(後編) 住まいから始める終活、これだけは伝えたい!注意すべき3つのポイント

終活専門不動産のディレクター、末藤康宏さんに終活のコツを伺うシリーズ。前編では、終活を「住まい」からスタートさせるべき理由についてお話しいただきました。後編では、終活においてとくに注意してほしいポイントについて、事例を織り交ぜながら教えてくださいます。

ポイント1:今後のライフプランを、なるべく早くキーマンに伝えて

もし今から終活をはじめようと考えている方がいたら、まずは現状の住まいと暮らしの把握をしてほしいです。このまま自宅に住みたいか、自宅を売って施設に入居したいか、ご自身の希望を見つめてみてください。
そして、「入院したら」「退院後、介護が必要になったら」など、誰かの助けが必要になったときのことも考えてみてください。まわりにどんな施設があるのか、どんな介護サービスが、地域サポートが使えるのか。調べてみると、未来絵図が描けることと思います。

そして今後のライフプランが描けたら、それを必ずキーマンとなる人に伝えておいてほしいです。住宅のことばかりではなく、介護や医療などについても。
例えば事故や病気で意識不明となり、延命治療をするか否か、急ぎの判断が必要になったとします。もうご本人の希望を聞ける状態ではありません。すると子世代など最も身近な人がその判断をせざるを得ませんが、なかなかすぐに決断できるものではない。そんなときご本人が希望について書き残したものがあるかないかでは、決断する人の精神的負担がまるで違います。

終活専門不動産でお客様にそういうお話をすると、すぐにピンと来る人は多くありません。まだまだ元気な方ばかりですから。でも、後になってからでも「あのとき、あのお兄ちゃんがあんなこと言っていたな」と考えてくれればと思い、お話をしています。最初からピンと来てくれる人がいたら、そのときから一緒に考えていきます。

ポイント2:「隣が空き家」は危険サイン

「隣が空き家」は危険サイン

日本の空き家率は年々上昇しています。近隣に空き家がある方は、空き家を管理している相続人などの連絡先を、しっかり把握しているでしょうか。もし知らないと、自宅を売却するとき大変になるかもしれません。

あるとき、100坪の土地を50坪ずつ2つに分けて売りたいというお客様がいました。この場合、自分の土地と境界を隣接しているご近所さんの許可が必要になります。許可を求めた5軒のうち、1軒が空き家でした。しかし、空き家を管理している相続人に連絡しても、一向につかまりません。連絡を待ち、時間だけが過ぎていきました。
私たちはとうとう、管理者の住まいがある広島県まで出向き、家を訪ねました。しかしその家は、どうも空き家のようでした。探偵のようなまねをして役所やご近所に聞き込みを行いましたが、個人情報なのでなかなか詳しいことを教えてもらえません。
結局、土地の買主さんが弁護士に依頼し、家庭裁判所にあたってみてもらったところ、その方には保佐人(判断能力が不十分な人の権利や財産を守るためサポートする人)を受けていることが分かりました。保佐人に連絡を取ることができ、やっと許可をもらえました。
売買契約が成立したのは当初の予定より3ヶ月も遅れてのことでした。

このような苦労をするかもしれないので、近隣に空き家があったら、必ず管理者の連絡先を押さえておいてください。でないと、売買によけいな時間や費用がかかってしまう恐れがあります。

また、隣が空き家の場合、家の売買以外でも気をつけなければならないことがあります。台風などのとき、傷んだ家から木材などが飛んでくるかもしれない。放火の危険も常につきまといます。防災、防犯のためにも管理者の連絡先は必ず知っておきましょう。

ポイント3:家の中は極力触らず、暮らしそのものに目を向けて

終活の一環として家の中を片づける人もいると思います。しかし、高いところのものを無理に取るなど、大がかりな片づけは極力しないでください。

ご自宅の中での事故は、交通事故の4倍もあると言われています。高齢者が自宅内で転んでしまうと、後が大変なことになる可能性がある。高齢で骨がもろくなっている女性の方は、大腿骨を骨折する可能性もあります。そうなると手術をして完治しても、体力が落ちていて自宅に戻れず、一年くらいで亡くなっていくという例を見てきました。

私は前職で亡くなった方のご自宅を訪ねることもありましたが、9割の方のご自宅は片付いていません。生前の生活、そのままの状態になっています。片付いていなくて当然なのですから、片付けを頑張ってケガをするくらいなら、そのままにしておいたほうがいいと思います。

もし何かやっておきたいと考えるのであれば、保険や預金、自宅の権利書など、手続き関係の書類を一箇所にまとめておきましょう。そして、それをキーマンとなる人に伝えておきましょう。

また、ものを増やさないことも大事です。旅行に行ったとき、アメニティグッズを持ち帰らない。百貨店の袋を溜めない。ものを増やさないだけでも、家はある程度片付くのではないでしょうか。

ものにつまづいて転倒するなどの危険がないのなら、家の中を無理に片づけようとせず、暮らし方と住まいそのものに目を向けてみましょう。終活は、そこから始まります。



末藤康宏(すえふじ・やすひろ)

身元保証や死後事務委任といった高齢者サポートの先駆け「特定非営利活動法人りすシステム」にて、高齢者の住まい・暮らしに関する様々な悩み・困りごとの相談を10年担当。全国の不動産の売買・賃貸をはじめ日常支援から介護支援・高齢者向け住宅・施設への住み替え、後見業務、お墓の改葬・葬儀、死後事務手続きなど暮らしに関わる終活サポート全般を経験してきた。2022年、THE BRIDGE株式会社の一事業として終活専門不動産を立ち上げる。


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