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髪を切る日。っていうとなんだか素敵な感じも含まれるけど、そういうお話ではないです。

ヘアカットに行った。ふと思った。
昔はなんだか髪を切るということ自体、今と違った感じだった気がする。と。

小学生や中学生くらいまでは、近所の美容室で切ってもらっていて「そろそろ髪を切りに行く時期ですね。」っていう感じで切ってた気がする。要は、伸びすぎたから切りましょうくらいの感じ。あんまり頓着してなかった。

高校生の頃くらいになると、少しだけ髪を切る行為に意味が発生してきた気もする。可愛く、こんな風に、カッコよくなんて言い出したりして、たかだか前髪をほんの少し(本人しか気づかないのに)切りすぎたくらいで、鏡を見て、「なんだかおかしくなった。」と不貞腐れてみたりもした。

でも、あんまりこんな感じは続かなかったな。オシャレに興味がないわけではないけれど、それが興味の上位を占めるかというとそうでもない。しつこくはないだけで、センスはいい。と自分では思っている・・・。

会社員の頃、イタリア周遊みたいな10日くらいのスケジュールの社内旅行に行った。いつもは絶対苦手だけど、社会人として団体行動にも慣れないとね。イタリア好きだし、気が利いたスケジュールで、自由時間も多いから、これはこれでよしとしよう。と旅立った。部屋はもちろん1人でもらえるわけもなく、2人部屋。同室の彼女は、勤務地は違うけど、会議とかで何度も顔を合わせていた同じ部署の女性。

出発まで退屈なので、空港のカフェで、1人、暇潰ししてたら、たまたま社長が来ちゃって、見つかってしまった。「えっ、〇〇くん、荷物それだけ?」そこ?「はい、そうですけど。」「10日近くあるよね、旅行のスケジュール?」「はい。そうですけど。」で、何が言いたいんだ!
「期間も長いし、なんていうか、女性はもっと荷物が多いものだと思っていたものだから。」あーーーそういうことね。初めからそう言ってよ。
「あっ、荷物をたくさん持って歩くのは好きじゃないので、いつも、最低限のものしか持っていかないんです。別に、旅行先についてから必要なものがあったら、現地で買えばいいことですし。」と言ったら、「そう、そういう感じなんですね。」と、私がかぶりついていたバケットサンドを見ながら、言った。「食べます?」と聞いたら、「いや、ありがとう。今は結構。」と言ってコーヒーを頼みに行った。

ホテルに着いて、驚いた。(逆に彼女も驚いていたが)同室の彼女のスーツケースのでかいこと。えっ。何が入ってるの?誰か連れてきた?と興味津々。なんと彼女はドライヤーとか髪をくるくるさせるものまで持ってきていた。そして、私より2時間も早く起きて、髪を整えて、お化粧をして身支度を整えていた。旅行中、毎日。ってことは普段も毎日。

こういう髪をくるくるするセット。ほんとに持って来てた。

これが大人の女性っていうものなのか!(2歳上なだけ)と、心底驚いた。私はといえば、お風呂に入ったら、髪をテキトーに乾かして(ホテルに備え付けの、音だけすごくて風があんまり出ない)使い捨ての化粧品をパパっとつけて、買ってきたチェリーやおやつをベットの上に広げて、明日はどこいっこうかなあ?みたいな呑気なもの。
「〇〇さん、お風呂、お先にどうぞ♡」みたいに言ってくれる彼女の、なんと女の子らしい事。女子大だろうか。とか妙なことを考えながら、「このデニッシュ美味しいよ?食べる?」と言ったら。「夜は、甘いもの食べないの。」「・・・・・。」
「じゃあ、チェリーは?新鮮だよ?」「ありがとう。じゃあ少しいただくわ。」

違う、何かが違う。同じ性別なのに、何かが違う。あまりにも違う。

その会社の前職は男社会っていうか、ほとんどが男の人だったので、仕事優先で何にも気にしてなかった。全然違う業種の、ほとんどが女性っていう会社の部署に移ったことで起きた、恐ろしいくらいの出来事だった。私は今まで女性として生きてきたことがあったのだろうかと。

いい香りがするものは、好き。
ちゃんとそういうものも持っている。

ある日、好きな方の部長に言われた。私は面接の時から他の応募者と違っていた。と。応募要件の中に、英語ともう1ヶ国語が堪能なこと。とか、絵画全般にある程度の知識がある事とか、確かに書いてあった。私といえば大学も法律関係だし、前職もそうだし、絵画に関しては、子供の頃から好きだったけれど、知ってる範囲だけの偏った知識だし(筆記テストの時も、作家に関する小論文があった。全然知らない作家だったので、その作家は知らないけどこの人なら知ってる。と、図々しく違う作家の小論文を書いて出した。)求人に対しての応募率もすごかったから、これは無理だなと思っていたくらいだ。試験会場に来てる人たちは、なんか華やかでこの旅行の時の同室の彼女みたいな感じの人ばっかりだった。

部長に「どういう意味ですか?」って聞いたら、「最終面接の後、××部長が(嫌いな方)〇〇君はどうですかね。」と言ったらしい。(初めからあいつはそういう感じで私を見てたのか。気が合わないし嫌いだから別にいいけど。)そしたら社長が、「いや、ああいうタイプの人は取っておいた方がいい。」と言ってくれて、鶴の一声でめでたく採用されたと。好きな方の部長も「面接の受け答えが、他の人と全く違った視点だったから、僕も必要かなあって思って、社長の意見に賛同したんだよ。」と言ってくれた。ってことは、やっぱり他の華やかな人たちとは違った理由で入れてもらってたんだなあと、改めて思った。

アリタリア航空、色々あったけど今も存在しててよかった。

これはくだらないし、信じられないけど、本当の話。イタリア旅行に向かう飛行機の中で、関連会社の女性達が、なんと、「あの人の隣の席だったはずなのに、違うから嫌です。」となかなか座らないという、とんでもない事を繰り広げ始めた。
アリタリア航空の飛行機だったから、乗務員の女性もイタリア人で、ものすごく驚いて、そりゃあ必死で座らせようとしていた。それでも、馬鹿みたいな理由で馬鹿みたいに座らない。貸切でもないから、他にもお客さんもいるし、関連会社とはいえ同じ会社なわけだから、恥ずかしくてしょうがない。ほんとに信じられなかった。小学生じゃあるまいし。

「いいから、とりあえず座ってよ。長いフライトなんだから、飛び立ってから好きにすればいいじゃん。あなたが座らないとみんながイタリアに行けないんだよ!」と、気づいたら怒鳴っていた。日本語で怒鳴られたせいか、我に帰ったようにお座りになった。きっと何かが取り憑いていたんだね。

多分、私はこういう要員で採用されたんだと思う。
イタリアに着いた時、社長から「ご苦労様でした。」と笑いながら言われた。いいよな、社長は。ビジネスクラスに座ってて、あのくだらない騒動の渦中にいなくてすんだんだから。いたら、言ったのか?

見た目は大人の女性でも小学生以下っていうと、小学生に悪いくらいの人もいるんだなと、その時思った。
CAさんがフライト中、すごく優しかった。

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