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高校生の時、新卒の歴史の女の先生を泣かせちゃった事がある。誤解だけど。

肩が凝る。
子供の頃からだから仕方がないけれど、ランドセルを背負ってマッサージのおばちゃんのところに行ってた。
軽トラックに跳ね飛ばされて両足骨折した後、左足の足首の角度が、若干、ものすごく微妙に曲がってて、1日経つとなんだか筋肉に変な力が入るのか、痛くなってきて、毎晩お父さんがマッサージしてくれてた。
今考えると、欠かさず毎晩寝る前にやってくれてたなんて、いいやつだ。
それでも一週間に1回くらいは、マッサージのおばちゃんと呼んでいた人のところに行ってた。
そのおばちゃんは目があんまり見えないらしかった。
どのくらい見えないのかはわかんなかったけど、そういう感じだった。

お父さんの愛情には叶わないかもしれないが、おばちゃんのところに行ってやってもらうと、あら不思議、足も体も重力から解放されたかのように、軽くなった。
ぐりぐりするとか、痛いとかは全然なくて、まあ、小学生のちっぽけな体だから、撫でるくらいの感じでなんとも気持ちいい。
渋いよね。小学生でマッサージ通い。
その部屋に、血の流れ?とかツボ?みたいなのが印刷された人体のポスターが貼ってあって、なぜだか子供ながらに中国にいる気がした。
ガキのくせにどっからきたイメージなんだか知らないけれど、そう思ってた。
なんか、匂いのせいもあるかも。独特の匂いがしてたんだよね。
消毒とも違った、漢方薬みたいな感じ。
突然おばちゃんが中国語で話し始めても、ちっとも驚かない。
おばちゃん、元気かなあ。
あの頃おばちゃんとか言ってたけど、きっと35歳から40歳くらいだったんじゃないかと思う。時々、5歳くらいの子供がウロウロしてたもん。
なんか歯医者さんとか病院の先生とか、例え20代後半だとしても自分よりウンと大人に見えるのはなぜだろう。子供の頃はそれが顕著だった気がする。
お父さんとかお母さんとかより、若いそれ関係の人を見ても、おじさん、おばさんだと思っていた。学校の先生もそうか。

学校の先生といえば、高校生の頃、新卒の歴史の女の先生を泣かせたことがある。
って言うと、どんだけ荒れた学校だったんだよ。おまけにそういう種類の生徒だったの?って感じだけど、そんな学校でも、そんな種類の生徒でもない。
はっきりとはわからないが、その先生は新卒だから、23歳とか24歳って感じ?

私は一番前の席に座ってて、別に普段通りその人の授業を受けていた。
すると、後ろの席に座ってたお菓子屋の長男坊のサッカー部の男の子が、薬屋の長男坊のバスケ部の男の子とおしゃべりを初めて、それをその先生が注意した。
そしたら、その年頃の男の子が若い女の先生にするような態度で、ちょっとばかりからかったような事を言った。

すると、先生は真っ赤な顔になって、持っていた指示棒でちょうどその先生が立ってた位置から近かった私の机を叩いた。バシコンって。マジ、結構な勢いで。
私は「うわっ、何するんだ。自分の机、叩いてよ」と思いながら、なんだか埃が立ったように見えたので、冷静に机の上を「フーーーっ」って吹きながら、手で払って綺麗にしようとした。本当、なんの意味もなく、ただ、埃、嫌だなあって感じ。
そしたら、頭の上から
「あなたは、いつもそう。私のことを馬鹿にしてるでしょ!」
って金切り声が聞こえたかと思うと、泣きながら出て行ってしまった。
「おっと、なんだ、何が起きたんだ?」
私には何が何だかわからなかった。
そうしたらクラス中が「イエーィ!」みたいな空気になって大笑いし始めて、
「〇〇、さすが!あれはないわー」とか笑いながら言い出す始末。
マジで、私には何が「あれはないわー」なのか意味不明。

先生が私の机を叩いたせいで、机の上に乗せてた私のノートとか教科書とかペンケースとかに、フワッと埃が立ったように見えたから「フーーーっ」ってして払っただけで、他意はない。誤解だ。
おまけに、彼女が怒る発端となった先生と男の子たちのやり取りなんかにも、全く興味なんてないし、ほとんど聴いてなかった。

でもここで、聞き捨てならない言葉が一つある。お気づきだろうか、
「あなたは、いつもそう」ってところ。
えっ、いつもどうだって言うんだろう。
私はその女の先生のことは、歴史の先生って認識してるだけでそれ以上でも以下でもないわけで、他に何にも思ったことはなかった。
なんなんだ。それも誤解だろ。
自意識過剰って言われてもしょうがないレベルだよ。

あーーあ。
悪かったよ。変なタイミングで「フーーーっ」ってして。
「李下に冠を正さず」だっけ?だとしたら、そこはごめんよ。
誓っていうが、全く本当に悪気なんてなかった。埃、埃なの。
でも先生もさあ「あなたは、いつもそう」はないよね。私は結構いい奴だし、ヘラヘラしてないからって、人のこと馬鹿にしたりはしない子ですよ。
その証拠に、多分クラスで1・2番目くらいにちゃんと授業聞いてたじゃん。
(多分、一番めは自分で歴史付きを公言してた女子生徒)

その後、担任に「何があったんだ?」って聞かれた。
正直にことの顛末を話したら、むっちゃ笑われて
「わかるはそれ、お前、ちょっと怖いところあるもんな」って言われた。
怖いって・・・。何が?どこが?本当に普通にしてるだけなのに。

その後、その女の先生のところに言って「こういう訳です」と話したら、先生も「なんだか、ごめんなさい」と元気なさそうに言った。
頑張れ、先生。と思った。から、そう言った。
その後は仲良くなった。結構、お弁当の時間とかに一緒に食べたりすることが多くなった。色々、悩みがあるようだった。
新卒でー若い女の先生でーみたいな事。自分で思ったり、他の先生とかからもそんな感じで扱われたりして、自信が揺らいでーみたいな。
私には悩みはなかったから、聞いてるだけだった。懐かしいな。
時々「好きな男子とかいるの?」とかいうガールズトークを仕掛けてきたりしたけど、その好奇心には応えてあげられなかった。

でも、歴史って胡散臭いし本当のことなんて誰にもわかる訳ないよね。
とは口が裂けても言わなかった。気遣いのできる高校生だった。

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