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♯13 顧客は“違い”に対して、お金を支払っている


今月の一言:「顧客は“違い”に対して、お金を支払っている」


(この号は3分で読めます)

事業を行う上で、「差別化」は頻繁に出てくる用語ですね。
では、「差別化」とは何でしょう?
一言で言えば、「他と違うことをやる」ですね。


実は、「“違い” には、“違い” がある」ことをご存知でした?

例えば、「バイデン大統領と綾瀬はるかの違いを列挙せよ」と言われたら、「男女」「国籍」「身長・体重」「年齢」「職業」「収入」等々、沢山出てくるでしょう。

実はそれらの “違い” は、“程度の違い”“種類の違い” の2つに大別できます。

“程度の違い” は、同じ比較軸の中での程度の差。
「身長 170cmと180cm」や「年収 800万円と1千万円」は、程度の差ですね。

対して “種類の違い” は、比較軸自体が違います。
たとえば「国籍」や「職業」は、立ち位置自体が違うので、同じ土俵で比較ができません。


これを、消費者行動として置き換えるとどうなるでしょう?

例えば先生がお昼のお弁当用に、烏龍茶が欲しいとします。
院の隣にある自販機のアサヒ烏龍茶と、院から10分離れたコンビニのキリン烏龍茶、どちらを買いますか?

或いは、ティッシュボックスの纏め買いにスーパーへ。
よく使っているスコッティが5箱400円に対し、クリネックスが特売で300円に。
どちらを買いますか?

烏龍茶もティッシュも、大半の人にとっては “程度の違い”
その差に大きな価値の違いを見出さなければ、消費者は単純明快な “利便性” と “価格” の違いで商品を選択します。

一方、ラーメン屋はどうでしょう?
先生の大好きな、あの独特な台湾ラーメンのために、近くにある1杯500円の安いラーメン屋には目もくれず、わざわざ遠出し、並んででも、喜んで1杯900円の台湾ラーメンを食べに行くのではないでしょうか?

これが“種類の違い”
脂肪を分解する「黒烏龍茶」、肌触りのよい「鼻セレブ」も、“種類の違い”ですね。

そうです。
消費者は自分の価値観を起点にモノやサービスの違いを比較し、その対価を支払っているのです。


治療院の場合はどうでしょう?

多くの初診患者にとって、数多くある治療院の “違い” はわかりません。
わからない場合、患者は「利便性」「価格」「建物が綺麗」等、“程度の違い” で院を選択してしまいます。
もし先生の院が “程度の違い” で支持されている場合、要注意です。

”程度の違い”は比較軸が明確かつ同一なので、他と容易に比較されてしまいます。たまたま”今”は先生の院が優位でも、明日は容易に他店が優位に立ってしまう可能性の高い違いです。

対して「不妊治療専門鍼灸」「足専門の整体院」等は、“種類の違い” です。
他院とは比較軸が異なるので、比較自体が困難です。

ただし、“種類の違い” は、“程度の違い” よりハードルは格段に高くなります。

まず、市場を自らが絞ることになるので、潜在顧客の絶対数が大幅に減少します。
そして、絶対数の少ない潜在顧客に見つけてもらえるよう、情報発信等が必須です。

提供するサービスが同質化しやすく、また他院との違いを明確に伝えるのが難しい治療院業界において、”種類の違い”を打ち出すのは非常に困難だと思います。
でもこれからの時代、我々のような零細企業は “種類の違い” を前面に打ち出すことが必須と考えています。

会社経営の要諦は、「何をしないか」を決めること。

戦略上、「何をしないか」を思い切ってまず決める。
次に、残ったいくつかの「何をすべきか」を、一つひとつ「程度の違い」と「種類の違い」に種分けしてみる。
最後に「種類の違い」だけを取りまとめ、一つの分かりやすいコンセプトに昇華させたのが、御院が執るべき差別化戦略。

 PC大手DELLの経営哲学は、「我々は他社との”違い”を作っています」。
先生の院における、「種類の違い」は何ですか?

~次号の「利益は虚構。存在するのはコストだけである」を読む~



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