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今月の一言:「正しい意思決定は、対立意見から生まれる」

 (この記事は約2分半で読めます)

経営者にとって非常に重要な仕事の一つである「意思決定」。

治療院の先生は、院の経営だけでなく、患者さんの診断や治療方法についても毎日多くの意思決定をしています。

さて、ドラッカー氏の「正しい意思決定」について学ぶにあたり、先生にぜひ考えていただきたい軽い演習あります。
もし先生が以下に述べる状況に直面した場合、先生ならどのような判断をしますか?

<<演習(エクササイズ)>>
先生は今現在、5人の社員を抱える治療院を経営しているとします。
事業拡大のため、先生自身が入念に調査し、エステ事業を新規に開始することを決めたとしましょう。

先生はその計画に自信がありますが、社員5人が賛成してくれるかはわかりません。
「もし強く反対されたらどうしよう」と不安に思いながらも、事業構想とビジネスプランを社員にプレゼンしました。
すると、全員が賛成してくれて、「その構想は面白い!ぜひ一緒に実現しましょう!」と嬉しい言葉を社員からもらいました。

さて、社員から満場一致で賛同を得たこのエステ事業計画、先生ならどう進めますか?


もし私がその立場なら、まずホッとして自分の計画に自信を持ち、その決定に基づいて行動を開始するでしょう。

しかし、ドラッカーはこのような意思決定の方法に異を唱えます。

ドラッカーが観察してきた優秀な経営者は、満場一致で賛同を得た場合、「この決定の意味をもっと理解するために、異なる視点や意見をもっと持つために、さらに検討する必要がある」と判断していたようです。

「決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しないときには決定を行うべきではないということである。」

ピーター・ドラッカー 「経営者の条件」


「正しい意思決定」
を導き出すに当り、ドラッカー氏は以下に述べる3つの理由により、「意見の不一致」が必須と論じています。


1.組織の囚人にならないため

硬直した組織では、社員が経営者の意図を「忖度」して提案したり、経営者の意見に合わせたりする「無責任」な同調傾向がどうしても現れます。
例えば、前述したエステ構想について考察してみると、社員が賛同したのは、反対するより賛成する方が「得」や「無難」だと感じたからかもしれません。
つまり、損得勘定や事なかれ主義によるものです。
このような状況では、社員が思考を停止してしまう脆弱な組織が生まれます。そのため、意見の不一致が生まれる風土を作ることが必須です。

2.選択肢を持つため
決定には常に間違う可能性があります。
最初から間違っていることもあれば、状況が変わって間違いになることもあります。
例えばエステ構想について考えると、もし社員から様々な意見が出ていれば、先生が一人で考えたプランAだけでなく、プランBやプランCといった複数の選択肢が生まれたでしょう。
決定を実行に移したのち、いずれ決定した内容を調整したり、変更する必要が出てくる局面が訪れます。
その際に、意見の不一致を踏まえて十分に検討された他の選択肢がなければ、新たにゼロから代替案を考えなければなりません。

3.想像力を刺激するため
新しい発想や違った視点からのアイデアは、自分の意見に同調した話し合いの中からは生まれません。
反対意見、特に理論付けられた別の意見は、新しい視点を生み出すための想像力にとって、最も効果的な刺激剤になります。
エステ構想で言えば、社員からの意見が先生の脳を刺激し、オリジナルのプランAが見違えるレベルで奥行きのあるプランに磨かれる可能性が高くなります。
 

周囲から反対意見や鋭い質問のないことは、発案者にとっては一見嬉しい事のように思われます。
しかし、ドラッカー氏の言う通り、意見の不一致は大きな意思決定をする際は絶対に欠かせないですよね。

一方、この「意見の不一致」を生み出す環境、大半の先生にとっては悩みの種ではないでしょうか?

先生お一人で、或いは徒弟制度の若い勤務医しかいない治療院が大半の中、先生の診断や治療法に異論を唱えてくれる他人は非常に限られていると察します。
患者さんの症状に改善が見られない際、途方に暮れてしまうこともあるかもしれませんね。

では、どのようにしたら「意見の不一致」を生み出すための環境方策を創り出すことができるのか?

これを機に、ぜひ一度考えてみてください。

~前号の「近江商人は、なぜ三方良しなのか?」を読み返す~


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