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人種差別はある、でも移民2世のアブデルが教えてくれたこと

米国で起きた黒人男性暴行死をきっかけにして、世界的に改めて人種差別が話題になっています。歴史的、文化的、ときには能力的な違いで誰かを区別することで、自分たちのステータスを守る。根が深い問題だと思います。

人種差別と聞いて私が思い出すのは、もう15年ぐらい前のフランス留学間もない時に、道で出会った感じのいい年配のマダムのことです。「留学しているの。頑張っているわね」と微笑んでくださった直後、「でもあなたの大学にはマグレブ(北西アフリカ諸国)からの移民はいないでしょう。彼らは怠惰だから」と言いました。これが人種差別なんだ、とショックを受けました。

その同じフランスで、私はアルジェリア移民2世のアブデルと友達になりました。とっても優しくて、ファンキーで、キュートなおいちゃん。家に招いてくれた時、アブデルのママンが手間暇かけて作ってくれたクスクスがあまりにおいしく、クスクスは自分で作ってはいけないものだと思ったほどです。「こうして空気を含ませながら入れるとおいしいんだ」と紅茶を注いでくれるものの、大量にこぼしてしまう。それをアブデルの彼女がサッと拭いてくれました。食後には歌とダンスを披露してくれ、リモコン両手にエアギター、間奏中に「今、白いジャケットと帽子を被っている」とエア衣装チェンジ。渾身のオンステージでした。

アブデルと仲良くなったのは友達の友達だったから。その友達はインターネットをつなごうと通信会社に行った時、具合が悪くなってしまい、「大丈夫かい? ちょっと待ってろ」と店員さんから飲み物とパンを手渡してもらったそうです。その店員さんがアブデルでした。その後、私達がアブデルと仲良くなることはとっても簡単なことでした。

でも今、世界で起こっていることを思うと、それがとっても難しいことなんだよねって思ってしまいます。アブデル、世界は難しいね。

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