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あなたの何気ない一言が、1人の人生を変えてくれるかもしれない

「りさってまーくんに似てるよね!」

合唱仲間と3人で焼き鳥を頬張っていたとき、突然彼は私に言い放った。

その瞬間私は、脳内フル回転で私の知っている「まーくん」について思い出してみる。共通の知り合いにまーくん?いや、知り合いにまーくんと呼ばれる人はいない。ご当地のゆるキャラ?ううん、違う。彼が私に言っていたマー君は、あの有名な野球選手、田中将大であった。

私「まーくんって野球選手のマー君ですか?」

友人A「そうそう。田中将大!眉毛が似てる!そのいかつい感じがそっくり!ね!似てますよね?」

友人B「え......?そうかな?似てないと思うけど......」

意見を求められていた1人は明らか動揺していた。「大学生の21歳の女の子がマー君と言われたらショックを受けるのでは」と、配慮してくれた結果だろう。でもなんとなくその配慮が寂しかった。否定するならもっとはっきり否定してくれ。

決してマー君は悪くない。彼にとって、あの鋭い眼光はとても大切な武器だ。しかし私は21歳の平凡な大学生。普段バイトで、お客さんのお好み焼きをひっくり返している私に、眼光の鋭さは必要ないのである。今言われたらもっと冗談っぽく言い返せていたと思うけど、当時、免疫がない私は上手に言い返すことができなかった。

でも思い出せばそうだ。ぼーっと1点を見つめていただけなのに、友人に「何睨んでるの?」と言われたことがあった。当時の時点で10年ほどこの眉毛とともに生きてきたけど、この眉毛のせいで、会うべき人すら寄せ付けていなかったのかもしれない。

私が中学生の頃、細い眉毛が流行っていた。2004年~2007年頃。同世代の人は分かるはず。当時の写真を見てみると、ほぼ全員眉毛といった眉毛がない。

その中でも、私はズバ抜けていかつい眉を持っていた。いや、言い訳をするならば、その眉毛の形しか知らなかった。昔、母に言われた「眉山は剃ってはいけない」という謎のルールを律儀に守っていたおかげで、私の眉毛とまぶたの間はどんどん広がっていったのだった。

自分でも薄々気が付いていたが、ストレートに言われると流石に落ち込む。飲んでいる時は「似てますかね~?」なんておどけたフリをしたが、心底コノヤロウと思った。それと同時に、周りの友達は私に気を遣って伝えないようにしてくれていたのかと思うと悲しくなった。しかしこのまま落ち込んでいてもしょうがない。帰宅後私は「眉毛改造計画」を決行したのである。

眉毛改造計画決行後、大学の友達や高校の頃の先輩から「大人っぽくなった」「雰囲気が変わった」とポジティブなことばをかけられるようになった。気のせいかもしれないが、人に話しかけられる機会も増えた。

きっと自然と自信がついて、人の顔を見て話せるようになったからだと思う。性格も少しだけど前向きになったし、化粧をするのも楽しくなった。

彼に「いかつい」と言われたとき、「なんてデリカシーのない人だ」と怒りを覚えたが、のちにその気持ちは感謝に変わった。彼が言ってくれなかったら、今も自分に自信がなく、いかつい眉で生きていたかもしれない。むしろ私は彼のおかげで、客観的なアドバイスを受け入れる勇気をもらった。

人に何かを指摘されたとき、なかなか受け入れることは難しい。でも指摘されたことをすべて実行する必要はなくても、一度受け入れて見ると良いこともある。

人の何気ない一言は、良くも悪くも1人の人生を変える可能性があること。

相手の言葉を素直に受け入れる大切さを身をもって知ったのだった。

些細だけど、私にとって自分の考え方を180度変えてくれた大切な出来事である。ちなみに彼は、私の人生にこんな影響を与えているなんて知る由もない。

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